ダメな奴だと言われていても

 小学生の頃から好きな人がいた。


 その人の評判は、頭はあまり良くない、運動神経も悪い、顔もあまり良くない、そんな感じだった。

でも、私はその人が本当に優しい人だって知って、好きになり始めた。




 中学2年生の時、同じクラスになって、すごく嬉しかった。

すぐ話しかけにいったのを覚えている。

「同じクラスだね、よろしくね!」

意気揚々と話しかけたのに。


「なんだあいつ、糸石に話しかけてもらって」

と言う男子の声がした。

「あの、糸石さん、そう言うのはちょっと……」

と言われて話しかけられなくなった。




 あの人に話しかけられるように、好かれるように、あらゆる努力をしよう。

可愛いって言ってもらいたい。

そう思っていたのに、一向に話しかけられない。


 そうだ、勇気を出して告白しよう!

付き合っているとなれば、変なこと言ってくる男子もいなくなるだろう。




「糸石さんと僕じゃ、釣り合わない」

振られた。


「え? それってどう言うこと? 私のどこがダメ?」

なぜかと問うと、

「糸石さんって可愛いでしょ?」

「それってどう言うこと? 私のこと可愛いって思うんなら、付き合って……」


「ダメなんだよ、僕なんかじゃ」

「なんで?」

涙が溢れそうになるのを堪える。


「糸石さんは可愛いから例えば、〇〇君とか、すごく頭が良いしかっこいいよね、糸石さんのこと好きだって言ってた。人気者の〇〇君にも好かれてるよね」

なんの話?

「〇〇君と〇〇君は本当にモテるのに、いっつも糸石さんのこと見てるし」

一体、なんの話をしてるの?


「〇〇先輩も……」

私の目の前は一瞬、暗転した。




「糸石のやつがふらついてる!」

学業優秀で美形って評判の良い、誰だっけ、あの人?

「糸石さんのこと、任せるね。僕は用事があるから……」

「ああ、任せろ。おい、糸石大丈夫か?」

行かないで、お願い。




 逆ギレだって分かってる。

でも、美形、今でいうイケメンが嫌いになった瞬間だった。

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