それを言うのはせめて人前では止めよ?

 小学六年生の頃、夏頃だったか、佳穂(かほ)から電話がかかってきた。


「ねー奢ってあげるから、パフェ食べに行かない?」

私はきっぱりと言った。

「行かない」


「奢って上げるって言ってんじゃん! 性格悪いね!」

と佳穂が言ったので、

「性格悪いってことで良いから行かない」

と言うんだけど、


「だから、パフェ食べに行かない!?」

と怒り口調になってきたので、仕方なく行くことにした。




「さあ、行こ!」

待ち合わせ場所に15分遅刻してきて、謝罪もせず、佳穂は嬉しそうに言った。

自転車でしばらく走っていると、ショッピングモール付スーパーに着いた。

「ここに入っている店のパフェが美味しいんだー!!!」

佳穂はニヤニヤとしながらそう言った。




 いざ、佳穂おすすめのパフェがあると言う飲食店に入った。

「奢ってあげるから、おすすめのメニュー注文しとくねー!」


案内された席に座り、メニュー表をみながら佳穂は呼び鈴を鳴らして店員を呼ぶ。

「ご注文はお決まりですか?」

と店員が言うと。

「この特大パフェと、リンゴジュースね」

と、佳穂は告げた。


 まず、リンゴジュースを店員が持ってきた。

「あ、そのリンゴジュース、こっちね」

と佳穂は私の方を指して言った。


「あなたは何も食べないの?」

と私が訊くと、

「今日は奢りたい気分なのー」

と佳穂は言う。


 私はいただきます、と言いリンゴジュースを飲んだ。

すると佳穂は嬉しそうに、

「おしっこ飲んでるみたーい!」

と大声で言う。


 他の客の目線がこちらに集中したみたいだ。

視線を感じる。

「はいはい」

私は軽く佳穂の言葉を流した。


 今度はパフェが来た。

それを見た私はつい、こう言ってしまった。


「こんなの食べたら、痩せるね」


 すると佳穂は、ギョッとした表情になったかと思うと、作り笑顔でこう言った。

「私が食べてあげるよ」

「は?」


「いやいやいや、今日はパフェ、奢ってくれるんじゃなかったの?」

と私が言うと、

「だーかーらー、私が食べてあげるよ!」

と言い、パフェを奪った。


 佳穂はカロリーがとにかく高そうなパフェを、とにかく必死になって食べている。




 私はその光景を見ながら、自分のことをこう思った。

「性格、悪いなあ……」

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