本編〜徒然なるままに〜
節分の豆ぬ
節分に食べる炒り大豆。
これは私の好物の一つ。
香ばしくて、年に一回だけ食べられる至高の一品。
鬼を追い払う為に撒かれる豆でもある。
だけど、市販のものは豆を巻いた後、拾って食べられるように小袋に分けて入っているなあ。
中学三年生の頃の私も、
「学校が終わったら、速攻で家に帰って食べるんだ!」
そんなふうに浮かれながら、校門から出ようとしたその時。
二つ年下の弟、当時中学一年生だった駆(かける)が私の同級生に当たる男子生徒達三人に囲まれて、何か言われている。
駆は間違っていることは間違っていると言える性格なのに、ただただ俯いて立っているだけ。
と言うことは、駆が何かしでかしたのかな?
それを認めているから、反論できないんだな。
そう思いながら、私は炒った大豆を早く食べる為に、家路に着いた。
「へへへ、へへへへへ」
私は家に帰り、とっくに学校の制服から私服に着替えて、テレビを観て笑いながら、炒った大豆を食べていた。
あ、至高の一品の一つを落としてしまった!でも3秒ルールで拾えば大丈夫。
と思い、テーブルの上に転がった炒った大豆を拾おうとしたくらいのタイミングで、その出来事は起きた。
「学校で変なことすんな!!!」
駆が家に着くなり、私に向かって怒鳴った。
そして、駆は自室に入って行った。その場にいた母は慌てて、駆の部屋に入って行った。
しばらくして、母が駆の部屋から出てきて、私の元へ来た。
「純ちゃん、駆君って滅多に怒らないでしょ?だから何事かと思って駆君に話を聞いてみたの」
私は特に気にとめず、「へー」と生返事をした。
「駆君ね、学校で純ちゃんの同級生達にね……」
母が神妙な面持ちで話しているのに気づいて、私は母の方を向いた。
『お前の姉ちゃん、変だよなー!!!』
「って、言われて反論できなかったらしいの」
母がそう言うこと言うものだから、私は、
「なんで反論、出来なかったんでしゅか?」
と、噛みながら質問した。噛んだのはわざとではない。
「その通りだからだよ……」
私は思わず、「えっ?」と驚いて声を上げてしまった。
なぜなら、心当たりが全くなかったからだ。
「えっ?じゃ無いでしょ。この前も変な自作の曲を歌っていて、純ちゃんの同級生の男子達、変な奴だなって思ったらしいの」
母はそう伝えてくるが、私は最近は、自作のミノムシの歌を歌っていただけ。
なのになんで―――?
「ミノムシ コロコロ、だよ?」
「何を言っているのか分からないんだけど?」
母は何かを諦めたかのように、話を終えた。
駆はその日はずっと怒っていたし、何がなんだか分からなかった。
ーーー鬼は私だったのかもしれないーーー
数年前にそう思った私は、自分への戒めの為に、テレビゲームのアカウント名をこう名付けた。
『せつぶんのまめぬ』
ちなみに、
「ぬって何?」
とゲーム仲間から言われた。
ーーーそれは私にも分からない。
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