第5話
孫策は俺の王城である、石城山を攻めて来た。
今回は防衛戦だ。流石にあの数に、打って出ることはない。
「持って一ヵ月か。流石に兵力差があるな」
俺は、楼閣から戦況を見ていた。
だが幸いな事に孫策軍は、矢が少なかった。そして、俺達は、投石兵がメインだ。
土地を利用した、戦術。小石はいくらでも手に入る。
防衛戦だし、勢いだけの若造に遅れを取る事もない。
『行けっかな~。許昭次第なんだけどな~』
内心冷汗が止まっていない。胃が痛い。
まあ、そん時はそん時か。
後は、袁胤だな~。孫策は、三国志演義と違い、袁胤より俺を優先して来た。同盟は組んでいないけど、互いの利益だよな~。
希望的観測だけど、袁術には背後を突いて欲しいものだ。
城は攻められたが、十日間守り通した。
◇
連絡が来た。
「許昭殿が、牛渚の要塞を落としたか。ふっ……予定通り過ぎて怖いな」――キラン
周囲の将軍たちは、絶句してるよ。
牛渚の要塞は、孫策軍の兵糧の集積所だ。元々張英の要塞であり、膨れ上がった孫策軍の補給基地でもある。
これは、俺の転生知識だ。
予定通り、大量の兵糧が手に入ったとのこと。
孫策軍は、慌てて撤退だ。だが牛渚まで、一ヵ月はかかる。許昭が、兵糧を持ち出すのには十分な時間だろう。それと、要塞を破壊するように依頼してある。
これで、孫策は軍を維持することはできなくなったはずだ。飢える兵士を抱える恐怖……。予定通り過ぎる。
自分の計画の正確性が、恐ろしい。
「出陣するぞ! 着いて来い!」
「「「おお!!」」」
孫策軍の
用兵も見事だ。だが、数が少ない。
徳王軍は、包囲して削って行く。
そうすると、太史慈が特攻して来た。
「いいだろう! 大将同士の一騎打ち、受けて立つぞ!」
「「「徳王様~!? 待って~!!」」」
――ガキン、ガキン、ガキン……
数合打ち合う。手が痺れる。流石後世に名を残す武将だ。
「だが、まだまだだ!」
俺は、馬ごと太史慈を叩き切った。
「徳王様が、太史慈を討ち取ったぞ~!」
「「「「「うおおお~~~! 徳王様~!!」」」」」
部下が、喧伝してくれる。
しかしなんだろう、俺の強さは……。転生特典?
正史三国志の大将同士の一騎打ちなど、そんなになかった気がする。
それに、俺が矛を振るうと、数人が吹き飛ぶ。まるで漫画の世界だ。
三国志演義への転生だから、こんなもんかな?
その後、孫策の殿軍を殲滅した。
「徳王様! 追撃の許可を!」
「ダメだ。罠を張って待ち構えている可能性がある。それに、補給のない軍なのだ。直に瓦解する」
皆納得してないな。
手柄を挙げるチャンスだけど、ここでの敗戦は将来に影響する。兵も将も減らしたくない。
追撃の許可は出さなかった。
◇
その後孫策軍は、村々で略奪行為を始めた。
まあ、そうなるよね。
そして時間が経つにつれて、民衆の支持を失って行く。それに比例して、俺に忠誠を誓う部族が増えて行く。
孫策が、曲阿城に着いた頃には、軍は瓦解していたとのことだ。劉繇の元居城で、孫策の仮の本拠地だ。
だが孫策には、まだまだ優秀な部下が多数いる。
油断は禁物だ。
そして、江東江南の全ての部族が俺に恭順の意を示して来た。
古の覇者と同じだな。
外敵を防ぐ代わりに、貢物を送るのだとか。
「ふっ。覇者の真似事か。王であり覇者……。俺に相応しい称号だな」――キラン
中二病全開で来たけど、すげぇ成果じゃない?
やってみるもんだな。
「陛下、戦勝おめでとうございます」
「虞翻。各地の説得ご苦労だった。望む物を言え、何でも与えてやる」
「……徳王様の傍で、学ばせて頂きたい。それ以上の褒美などありえませぬ」
俺の傍……? 元々山賊だったんだけど?
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