第9話 人ってめんどくさい

死にたいまいにちを経る度に、思うことがある。


人ってどうしてこんなにめんどくさいのだろう。


他人と関われば関わるほど、その人の良い面よりも嫌な面が目に付いてしまう。ささいな言動が鼻に付いてしまう。大体僕らを死にたいに誘うものは、必ず人が関わっている。酷い敵意を向けてくる人、言われのない言い掛かりをつけてくる人、陰湿な嫌がらせをしてくる人、暴力的な振る舞いで追い込んでくる人……結局は全部人のせい。人が人を傷つけ合って、傷から染み出た血小板で瘡蓋の様な社会が出来上がっている。


これって一体何なのだろう。


もちろん、人と人が関わり合うことの尊さも僕らは知っている。しかしそれ以上に、他人と関わることに言いようのない面倒臭さを感じてしまっている。お陰で一定のラインを踏み越さない浅い付き合い方が染み付いてしまった。それが一番、楽だから。


神様はどうして、人を、動物をこのような作りにしてしまったのだろう。社会的動物が社会を拒んでいる。けれども本能のせいで、離れすぎると寂しさにしおれてしまう。常に社会と適度な距離感を保っていないと崩れしまうような不安定な動物に、なぜこの星を支配させたのだろう。もっと良い作り方があったんじゃないか。


あ、わかった。神様はきっと楽しんでいるんだ。この不安定であらゆる行動規範に乱数を孕んだ我々を眺めるのが、きっと楽しくてしょうがないんだ。


スピリチュアルとバランスを取るようにリアリズムを含めるなら、これも生存戦略や競争社会の成れの果てなのかもしれない。優秀な血を次代に繋げていく仕組みにするためには、弱き者は淘汰されていく必要がある。だから感情を持たせて、一定以上ストレスを抱えるとHPが0になって、そいつらからやつれていく様なルールになっているんだ。


でもね神様、


こと現代社会において、自らの意思で死を選んでしまった人々が、“優秀な血”で無かった様にはどうも思えないよ。

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