第5話 家

 練習場からの帰り、銃の練習場を通ると三人には白い目が向けられた。


 藤堂は何かを恨んだ。




 「やっぱり自分の家が一番じゃな!」


 「ただ練習場に行っただけじゃないですか」


 「それはそうじゃが安息の地と言うのは良いもんじゃな」


 「私は自分の部屋に戻ってるからご飯出来たら呼んで」


 「わかった」


 「僕は先生の手伝いしますよ」


 「本当か!ありがとうな蓮」


 「いえいえ、今日のご飯は何ですか?」


 「何がいいかの………」


 「蓮、何か食べたいものはあるか?」


 「そうですね……ハンバーグとかですかね」


 「そうとなれば今日のご飯はハンバーグじゃ!」


 「本当ですか!」


 「うむ!」




 「この皿をそっちに置いてくれんかの」


 「わかりました」


 「先生、一つ質問して良いですか」


 「何じゃ」


 「僕の刃は何かの脅威になりますか」


 「分からぬ。良い事だけを言う事は優しさでは無いからの」


 「そうですか」


 「じゃが、一つ言えることがある。それは、負けたくないと思うことは大切であると言うことじゃ。何かに臆しては勝てるもんも勝てん。そいつに降参したも同義じゃからな」


 「先生が言えることなんてこんなもんじゃよ。期待に添えんかったらすまんな」


 「いえ、答えて下さりありがとうございました」


 「そろそろ春を呼ぶ頃じゃな。蓮よ飲み物の準備をしておいてくれ」


 「分かりました」


 「言い忘れておったが蓮」


 「はい」


 「……やっぱり言うのは止しておく」


 何を言おうとしたのか俺には分からなかった。


 気になったが何故か聞く気にはならなかった。




 「やっぱり飯は一緒に食べる人が多ければ多い程美味いの」


 「そうですね!」


 「春、美味しいか?」


 春は何も喋らずコクりと頷いた。


 「それと春、何で今日は一緒に食べてくれるんじゃ?」


 「何となくかな…」


 「まあ、仲が良い事は良いことじゃな!」


 「何当たり前のこと言ってるんですか」


 「いや、皆って良いもんじゃなと思って」




 「いい加減決断を!このままだとこっちの立場も危うくなります!」


 「もう4月になったんですよ!」


 「黙れ!二人とも」


 「そうとも行きませんよ!貴方の命もいつまで正常か……」

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「3、2、1」の合図で 冬城夏音 @tojyokaon

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