第11話


「なるほど……やはり推測通り、≪おにごっこ≫をする相手が多いほどペナルティーが重くなるようですね。治療師のかたプレイさんの治療をお願いします」

「プレイさん大丈夫ですか⁉ 痛むところを所を教えてください!」


 治療師の人達は、アールさんに言われるとすぐに僕に駆け寄り、ペナルティーを受けた所を聞いてくれる。


「す、すいません。今回は右足です」


 覚悟をしていたとは言え、やっぱり骨折は辛い。

 治療が終わった後も僕の顔が晴れてない事に気づいた治療師の人達は気づかって声をかけてくれる。


「どうでしょうか? 折れた所はまだ痛みますか? それとも他に痛むところはありますか?」

「ありがとうございます。大丈夫です、もうどこも痛くありません」

「私達は、今回プレイさんのスキル検証で発生した怪我を治療するために来ています。どうか遠慮せず言ってください」

「はい、ありがとうございます」


 僕が立ち上がると、それに気づいたアールさんが話しかけてくる。


「プレイさん傷は治ったようですね。そろそろ、一度休憩をとりましょう」


 アールさんがそう言ってくれても、僕は少しでも早くスキルの検証を終わらせてダンジョンに向かいたい。


「いえ、まだお昼にも早いですし検証を続けたいです」


 僕がそう言うと、アールさんの眉が少し上がる。


「……プレイさん。私はこのスキルの検証はまだまだ時間をかけなければならないと思っていますが、多少の無理をして進める事で大幅に時間の短縮ができますか?」


 そう言うとアールさんは僕から視線をずらし、ちらりとクランの仲間の方を見る。

 僕もつられて視線をずらすと、≪おにごっこ≫をして身体能力の上がった僕と模擬戦をしてくれていたクランの仲間が訓練場の地面にすわりこんでいたことに気づく。


 ≪おにごっこ≫の条件として、おに(僕)は素手で相手に触れなければ相手を捕まえた事にならないとわかり、僕は身体能力の向上した状態での模擬戦をして、体と感覚のすり合わせをしていた。


 そして、先ほどは模擬線を続けている途中でペナルティーに襲われたて足を骨折した。


 みんなで検証をはじめて、わずかな時間で≪おにごっこ≫のいくつかのルールが判明した。

 まず、はじめに分かった事は、推測していた通り身体の能力の向上は相手の人数が多ければ多いほど大きくなり、それと共にペナルティーも重くなっていく。


 これも以前に治療室で話して推測した通り、身体能力が上がり無理をして動いたダメージが体にかえってくるようだった。

 そのため、ペナルティーの検証は少人数ではじめ、ある程度のペナルティーで検証は終わりとして次は、持続時間の検証をはじめた所。


 しまった……無我夢中でクランの仲間の事を考えていなかった。


「くは~! 助かった~! プレイの身体能力が少し上がるだけでここまで強くなるなんて思いもしなかった!」

「ほんと、ほんと! プレイが戦い方の勉強もしているのは知っていたけど、やっぱり戦いも勉強がひつようだね」

「そうそう、プレイの身体能力が低かったから今までは宝の持ち腐れになっていたものが一気に実のった感じだよね」

「ちょっと宝の持ち腐れって酷くない⁉」

「「あはははは!」」

「でも今度からはその力をダンジョンでいかせるならと考えれば、凄い安心できる!」

「ああ」

「うん」


 みんなが本気で僕に期待をしてくれて嬉しい……。


「休憩がおわったら少し違う検証をしてみましょうか」

「アールさんその手に持っているのはなんですか?」


 アールさんの言葉にみんなが視線を向けるとアールさんの手には袋が握られていて、その袋には何か生き物がはいっているのか勢いよく動いていた。


「ああ、これはカエルですね」

「そ、それで一体何をするつもりですか?」

「はい、これが≪おにごっこ≫対象になるかの検証とあとは……」

「「あとは?」」

「もし≪鬼ごっこ≫の途中でカエルが死んだらペナルティーがあるかの検証ですね」

「「⁉」」


 アールさんの言葉を聞き、僕もクランの仲間もある可能性を考慮に入れていなかったことに戦慄する。


 それは、もし≪おにごっこ≫をして身体能力のが向上している間にダンジョンで仲間が死んだ時。


 その場合、≪おにごっこ≫はそのまま続行されるのか、もしくは一緒に遊んでいた相手が死んだりしたらおに(僕)にペナルティーが発生するのか……だけど、今までの事を考えるとペナルティーが発生すると思う、いや必ず発生するだろうとみんなが思った。


「あ……もし、鬼ごっこの相手が魔物でそれを対象とした場合相手を殺せないよね」

「ああ、でも……魔物を対象に≪おにごっこ≫をするか?」

「あ……たしかに対象は仲間でいいよね」


 みんなが≪おにごっこ≫の対象は仲間にすれば良いと言う中、アールさんが口を開く。


「みなさん何かお忘れではないですか? もし対象になったが死んでペナルティーが発生しなかった場合……みなさんは階層ボスを対象に選びませんか?」

「「⁉」」

「た、たしかに! 足の速い階層ボスを対象に選べる場合、その時のプレイの身体能力は……」


 みんなが一斉に僕を見る。


「でかくて硬いだけが階層ボスじゃない! 動きが速いボスなんかは皆で追いつめるのに苦労する。でもプレイがいれば、最低でも捕まえれるように同じ速さになる!」


 その言葉で一気にクランの仲間のテンションが上がる。


「そうだ! なんで気づかなかったんだ! すごいぞプレイ!」

「本当にプレイは最前線で戦える!」

「だれよりもクランに貢献できるかも!」


 みんなが喜びの声を上げる中、アールさんは静かに言う。


「そうですプレイさんは場合によっては、階層主を一人で倒せるかもしれません……ですが、プレイさんのスキルはあくまで一緒にあそぶことが前提になっています。そんなスキルで相手を殺した場合何が起こるわかりません」

「「あ……」」


 今まで上がっていたテンションが一気に下がる。


「なのでプレイさん、下手をすれば命を失いかねないですが検証をしますか?」


 再びみんなの視線が僕に集まるが、それはさっきの様な喜びに興奮したものでは無く、心配しての視線だと痛いほどわかる。


 でも、僕の答えは決まっている!


「はい! 検証します!」


 そして、休憩もおわりみんなで検証をはじめる、持続時間の検証もだいたいの予測ができる様になり次に≪おにごっこ≫は僕の意志でおわらせることができるかの検証になる。


「やはりスキルはスキルなのでしょうか……プレイさんの意志で≪鬼ごっこ≫はおわらせることができますね。しかも途中でおわった場合はペナルティーも発生しないと言う事がわかりました。ではそろそろ今日の検証の本題にはいりましょう」


 そう言ってアールさんがカエルの入った袋を持ってくると、皆の視線が袋に集まりその後僕に向けられる。

 僕に集まった視線は、興奮と心配が混ざり合った何とも言えない視線であったがそれを払拭する様に僕は声を上げる。


「アールさん、治療師のみなさん、クランのみんなよろしくお願いします!」


 僕がそう言うとアールさんが落ち着いた声で話しはじめる。


「安心してください。絶対に私がプレイさんを死なせはしません」


 アールさんがそう言うと治療師の人達も声を上げる。


「私達もプレイさんを絶対死なせません!」


 クランの仲間も黙って頷いてくれる。


 そして、≪おにごっこ≫の最中に対象者が死んだ場合の検証がはじまる。

 検証はリスクが少ないと思われるものからはじまり、徐々にリスクの高いものに移行していく。


 そして、いくつかの検証をする中、僕の足は千切れとんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る