第10話


「そろそろ時間かな?」


 僕が目覚まし時計に目をむけると目覚まし時計が勢いよくなりはじめる。


 ジリリリリ。


 僕はすぐに目覚ましを止めると、朝食の準備をはじめる。


「よし、服も着替えたし顔も歯も洗った。じゃあ、訓練所にいってスキルの検証だ!」


 そう言って僕は自分の部屋をでてクランの訓練所に向かう。

 僕が訓練所につくと朝の一番のために訓練所には誰もいない。


「アールさんが来る前に準備運動をしておこう」


 そこから僕が20分ほど柔軟体操や訓練所の中で軽くジョギングをしていると、訓練所にクランの仲間がやって来る。


「おーい。プレイスキル検証の手伝いに来たぜ!」

「みんなありがとう!」

「何、気にするな! アールさんからの指令だからこれも仕事の内だ! それにプレイが覚えたスキルはすげーって聞いから俺達も見てみたいからな」


 僕がクランの仲間と話していると、アールさんが白衣を着た治療師の人達とやって来る。


「みなさんお揃いですね。それではプレイさんが新しく覚えたスキルの検証を行います」


 アールさんがそう言うと僕を含めたクランのメンバーは、アールさんの前に整列する。


「ではプレイさん。以前に私と話した、あなたのスキルの予想をみんなに説明してください」


 そう言って手招きされ僕はアールさんの隣に行き、新しく覚えたスキルの効果を説明する。


「わざわざ集まってくれてありがとう。今から僕が覚えた新しいスキルの説明と推測をお話します」


 僕がそう言うとクランのみんなは黙って頷いてくれる。


「まず僕が新しく覚えたスキルの名前は……≪おにごっこ≫です」


 僕がスキルの名前を言うとクランのみんながざわつきはじめ、そのうちの一人が質問をしてくる。


「それは子供がよくやる遊びのおにごっこか?」

「はい、子供の頃にやった≪おにごっこ≫です。でも、このスキルは対象に選んだ人達とおにの力を均等にするんです」

「そ、それってつまり、≪おにごっこ≫の相手が多ければ多いほどプレイは強くなれるってことか⁉」 

「いえ、強くなると言うのは語弊があります。力が均等になると言いましたが、対象の相手を捕まえられるくらい足が速くなると推測しています」

「それでも対象者全員を捕まえられるくらいに足がはやくなるなんてすごいな……」

「ああ、速さは力だ。馬鹿げたスピードのプレイが物を投げるだけでも高威力の攻撃になる……」


 みんなは僕のスキルを馬鹿にせず、すぐにスキルの有用性にきづいてくれた。

 そして、みんながスキルの有用性に興奮する中、アールさんはペナルティーの事について話しはじめる。


「みなさん、聞いてください。一見良い事ばかりのプレイさんのスキルですが弱点もあります。今日みなさんに集まってもらったのはこの弱点についての検証となります」


 アールさんの言葉にみんなが首を傾げる。


「「弱点?」」


 みんなの疑問に答える様にアールさんは続ける。


「先日、プレイさんはこのスキルを獲得した日に二回スキルを発動させました。ですが2回目の発動時にはやくなった足に気づかず、全力で走り出した結果。壁にめりこみました」


 アールさんの話しに集まってくれたクランの仲間の一人が声を上げる。


「それなら、俺も見てた! あのすげー速さだったのはスキルを使ったからだったか⁉ と言う事は、弱点ははやくなったプレイがスピードになれるためにって……でもそれは検証とは違うような……」


 そこでアールさんは1つ咳払いをして真剣な顔つきになると、話を続ける。


「スキルの弱点。もちろんプレイさんにはスピードに慣れてもらう必要がありますが、それではありません。その弱点については彼女から伝えてもらいます」


 アールさんがそう言うと、アールさんの後ろに控えていた白衣を着ていた治療師の人の一人がマスクを外す。

 その人は僕が先日治療室に運ばれた時にポーションを使ってくれた女性だった。


「先日、プレイさんがスキルを発動して壁にめり込んだ後、治療室に運ばれて来ました。プレイさんの容体は、治療室に運ばれて来た時点で訓練所にいた人から回復魔法を受けすでに完治していました……ですが、しばらくするとプレイさんは突然に骨折し靭帯がきれ、内臓にもダメージがはいり、危うく死にそうになりました。私の判断で特級のポーションを使い一命をとりとめましたがプレイさんは死ぬ寸前でした」


 その言葉を聞き、誰かがゴクリと息を飲む音が聞こえる。


 治療師の彼女はそこまで言うと再びマスクをつけてアールさんの後ろに下がる。


「そのことから、私とプレイさんはこのスキル≪おにごっこ≫には、もしプレイさんが対象者全員を捕まえる事ができなければペナルティーが発生すると推測しました。そして、今日の検証はそのペナルティーを検証します」

「待ってください! それだとプレイは何回も死にかける事になるんじゃないですか⁉」


 クランの仲間が思わず叫んだ言葉にみんながざわつく。


「はい、もしかしたらそうなるかもしれません」

「そんなスキルの検証のために死にかける様な怪我を何回もするなんて⁉」


 その言葉にみんながうんうんと頷いて僕の心配をしてくれる。

 みんなありがとう……。


 でも、僕は一歩前にでて皆に説明する。


「でも僕は、このペナルティーは対象者が多かったから酷いケガになったと推測しているんだ。でも、もし対象者が少なくても酷いケガになったとしても、僕はこのスキルを検証してペナルティーを受けない様にしてみんなとダンジョンに行きたいと思うんだ。だから、みんな検証に協力して欲しい」

「でもプレイ……」

「どうしても! どうしても、みんなとダンジョンに行きたいんだ……お願いします!」


 そう言って僕は頭を下げる。

 それから、しばらく沈黙が続く。


「プレイがそう言うなら……俺は協力する!」

「私も!」

「うちも!」


 最初の一言を皮切りにみんなが協力すると言ってくれると、アールさんが僕の隣に立ち話しはじめる。


「私もプレイさんに協力します。そのために治療室のみなさんにも協力を求め来てもらったんですから」


 パチパチパチパチ


 アールさんがそう言うと治療室の人達が拍手をはじめ、先ほど治療室の出来事を説明してくれた人が一歩前に出る。


「私達は万が一の事を考えこんな検証を反対していました。ですがプレイさんの口から確固たる意志を聞けたので私達も絶対にプレイさんを死なせはしません。それにアールさんから特級ポーションをいくつも預かっています」

「「おお!」」


 特級ポーションはそれ1つで小さな家が建つような値段なのにいくつも用意しているなんて……。


「私はそれくらいの価値がプレイさんのスキルのあると思い用意したまでです。皆さんの意志もきけましたしそろそろ検証をはじめませんか? プレイさん」


 そう言ってアールさんは僕値をチラリと見る。

 僕はみんなが見える位置に移動する。


「よろしくお願いします!」


 僕がそう言って深々と頭を下げるとそこから僕のスキルの検証がはじまった。

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