第2話 迷宮都市ラヴィリス

 ——ギフト。


 それはこの世界の誰もが享受できる神様からの贈り物。15歳を迎えた少年少女が成人になったお祝いとして授けられると古くから謂れている。


 ドレイクの『騎士』もそうであるし、俺の『スキル製作』もそうである。


 様々な分野のギフトがあり、戦闘系では『剣士』、勿論ドレイクの『騎士』もそう。生産系では『農家』『木こり』、人々はこの恩恵に沿った職業に就いている。それだけこのギフトの恩恵は凄まじい効果がある。


 例えば、子供の頃からずっと鍛錬してきた人が昨日まで鍛錬していなかった人に負ける。持つ者と持たざる者の間には隔絶的な差があり、それはもはや無情とも言えるだろう。


 そんな事をガタガタと揺れる馬車で靡く長草を眺めながら考えていると、御者から声が掛かった。ちなみに今日は年に一度の行商人が訪れる日だったのでお金を払って乗せてもらっていた。


「おーい、あんた。あれが迷宮都市ラヴィリスだよ」


 その言葉に釣られて馬車から身を乗り出し前方を見ると、そこには遠くからでも分かる巨大な城壁と豆粒のような大行列があった。


 流石に国内有数の迷宮都市だけあって城壁の規模も人の数も違う。それに村では見かけなかった獣人、エルフ種、ドワーフ種、様々な種族の人が並んでいる。その中でも一際目を引くのは竜人種だろう。村の中でも一番大きかった俺の1.5倍はある身長に背から生える翼、筋骨隆々の体躯は流石種族最強と謂れるだけはある。


 馬車は進み城内へ。

 人の往来は更に激しさを増し、喧騒はやがて商人の売り声に変わりゆく。初めての体験に俺も気分が上がる。


 俺は行商人にお礼を告げて、足早に迷宮ギルドに向った。今日の馬車代でほぼ費ってしまい残金は安宿一泊分——銀貨一枚である。だからお金を稼がなければならないのだ。


 行商人から教えられた通りの道を進むと、見えてきた剣と盾の大看板———“迷宮ギルド”とデカデカと書いてある。


 扉を開けると右には十数台のテーブルがあり、昼間から探索者達が酒盛りをしていた。左には壁に沢山の依頼書と思われる紙が貼ってあり、思案げな表情で数人の人たちが話し合っていた。向かって正面には5つのカウンターがあり、俺は比較的空いている列に並んだ。


 辺りを見回していると、二十代くらいの受付嬢から声が掛かった。どうやら俺の番が来たようだ。


「御来店ありがとうございます。本日は迷宮登録で宜しかったでしょうか?」

「え、ええ」


 どうやら俺がキョロキョロと周りを眺めていたのがバレて、初めての人だと分かったようだ。恥ずかしい。


「迷宮登録料として銀貨一枚……かかるのですが現在は無料期間中でしたね。では、此方に名前、住所、希望職種の記入をお願いします。希望職種は、近接職、盾職、遠距離職、回復職の4つから選択してください。複数選択することも可能です。代筆も可能ですがいかがいたしましょうか?」

「いえ、大丈夫です。……それと質問なのですが、希望職種は書かなくても大丈夫ですか? まだ自分の中で決まっていなくて……」


 受付嬢に一瞬怪訝な顔をされたが直ぐに答えてくれた。


「……未選択でも構わないのですが、パーティーや多人数依頼を斡旋する際に一つの指標となりますので皆さま何かしら選択しています」


 ……パーティーか。俺のギフトは特殊だと思う。それを他人に知られるのは嫌だな。それにこれまで1人だったし、そっちの方が楽だ。


 まあここまで聞いておいて何も書かないのもアレだし、一応近接職でやっていくつもりだから書いておくか。


 俺は渡された用紙に必要事項を記入して、受付嬢に渡した。暫く待っていると下を向き作業をしていた受付嬢が顔を上げ、黒褐色のプレートを渡してきた。


「此方が迷宮証となります。もし破損や紛失をした場合は別途費用——金貨一枚掛かりますのでご注意下さい」


 受け取るとプレートが一瞬淡い光を放つ。


「これで登録は完了致しました。ステータスと呟いて、ディン様の能力値が表示されたら成功です」


 俺は教えられるままに呟いた。そして自分の能力値を確認した俺は数言受付嬢と会話を交わした後、装備を借り、依頼を受けて今日の飯の為にダンジョンに向かう。


 名前:ディン

 所属:迷宮都市ラヴィリス

 ギフト:スキル作製

 位階:1

 H P:10

 MP:10

 技能:<魔石吸収>

 魔法:なし


















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