ダンジョンで『スキル製作』〜村の疎まれ者、迷宮都市にて覚醒す〜

生しらす@勢い作家

第1話 出発

 俺の名前はディン、15歳。


 とある田舎村の農家に生まれた。特に特産品がなく主要都市からも離れていた俺たちの村は貧しく、冬を迎える度に飢餓に怯える日々を送っていた。そこに追い打ちをかけるように災厄が降りかかった。——流行り病だ。


 その流行病は感染力が強く多くの村人が患い、亡くなっていった。その中に俺の両親もいた。俺が12歳の時だ。


 もともと村の中でも疎まれていた俺はそこから1人暮らしだった。

 両親から受け継いだ農地で畑を耕す。小さな頃からやっていたので何とかなった。

 しかし、全てを1人でやるのは大変だった。朝起きて井戸から水を汲み、家の裏手にある大きな水瓶に入れる。そこから畑に水をやるともうお昼。腹が減り家に帰るといつもの固いパンと塩味のクズ野菜スープ。作るのも俺だ。そこからまた畑作業。


 こんな日常を繰り返し、一年。

 やっとこの生活にも慣れてきて余裕が出てきた俺は新たな食料確保のため森に入り、木の実を集め、魚を釣り、獣を狩った。

 農作業の傍らそんなことをやっていた。初めは慣れないことだらけで失敗ばかりだった。

 食べれない木の実を必死に集めたり、全く釣れない日が続いたり、獣に逆に襲われたり、これでは何のために森に入っているのか分からなかった。

 だか、徐々に改善していき俺の食糧事情は村の中でも上位に入るほどになった。


 そして今日、この世界の人々にとって特別な日を迎えた。勿論俺にとっても。


「おい、厄病神!お前何だったァ?」


 ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべて話し掛けてくるのが村長の一人息子ドレイク。こいつは丁度俺が厄病神と呼ばれるようになってから絡んでくる非常に鬱陶しい奴だ。


 厄病神——俺の両親はもともとこの村の出身ではなく、外の人。その為か村人とは何処か疎遠な感じだった。それが顕著になったのは3年前の大疫病の時である。


 緊急に行われた村長会議で俺達家族のせいで疫病が発生したと決定づけられたのだ。親しい者がおらず、もともと疎まれていた俺が不満の捌け口として選ばれたのだろう。全く道理に敵わないが閉鎖的な村に於いて村長会議で決まったことは絶対。そこから俺は厄病神と呼ばれ、直接的な攻撃は無かったが、間接的に虐められてきた。


「……」


 話すと面倒になるのが経験上分かっているので、無視して森の中へ入る。


「おいッ!無視してんじゃねェ!」


 何か後ろで吠えているがそれよりも俺は今心臓が高鳴っている。


「——ッ!!ふざけた奴が!」


 だが、流石に五月蝿い。これからの幸せな人生について考えてる時に邪魔されたく無い。面倒くさいが相手をするか……。はあ、アイツは寝る時に邪魔しにくる蝿だな。


「あー、何だよh……ドレイク」


 あぶねー。危うく蝿って言いそうになった、あぶない、あぶない。


「ドレイクじゃねーだろ。ドレイク様だろ。様をつけろ、厄病神が!」


 よかったー気付かれてないけど変なとこ絡まれた。面倒臭いなホントに。


「……それでドレイク様。本日はどのような件で?」

「ああ、それでいい。今日は機嫌が良いから許してやるが…今度言ったらどうなるかァ分かってんだろうなァ?」


 凄んでするのは良いが全然怖くないな、コイツ。身長差考えろよ、下なら凄まれたって微塵も恐怖を抱かないんだが。逆に滑稽に思えてくるわ。


 けど流石にここで吹き出したらどうなるか考える頭は残っていた俺は何とか首を縦に振る。


「ならいい。俺様は『騎士』だ。お前みたいな下賤な厄病神とは違ェんだよ。これからは軽々しく話しかけんじゃねェぞ!」


 それだけ言うとドレイクは自宅へ帰って行った。本当に何がしたかったのか理解不能だ。まあ、もう二度と会うことのない奴のことなんて考えても仕方がない。何せ俺は明日村を出て行くからな。


 その後俺は日持ちする食料を集めて、家に戻り旅支度を整えた。年に一度くる行商人に野菜を売って細々と貯めたお金は片道分しかない。

 成功しなければ浮浪者となる。けど俺は不安よりも期待の方が強かった。何故なら俺が授かったのは希望に満ちているからだ。そのギフトは



 ———『スキル製作』

 魔石を消費するとこでスキルを作成する。





















 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る