第2話 ちゃんぽん
「はーい。じゃあ配信のやり方説明しまーす」
『おk』
『あんま出しゃばるなよお前ら』
『はよやれ』
チトはそんなリスナーたちの反応をしっかりと確認しながら、配信の方針について語り始める。
「とりあえず参加してくれる人たちなんだけど、私はボイチャ含めて個チャ以外全部オフにするから、その場で自由に話し合ってくれて大丈夫。これはあれね、声配信に乗せて欲しくないとか、逆に聞きたくないって人たちもいると思うからね」
『ナイス』
『いいね』
『それでいい』
「それでみんなから私への意見とか諸々は、代表の人を一人決めてその人に都度個チャしてもらうって感じでやります!」
『俺がやる』
『任せろ』
『荒れるわこれ』
チトの言葉と共に、一際盛り上がるコメント欄。チトはそんな予想通りすぎる反応に、少しばかりの苦笑を浮かべた。
「とりあえず、前作プレイ済でこのゲームのことがわかってて、皆を纏めるリーダーシップに自信ある人!」
そのチトの発言を皮切りに、チトの前でアピールをし出すプレイヤーたち。 とはいえこの状況では何の判断基準がある訳でもなく、チトは適当に『できそう』なアバターを使っている人へと声を掛けた。
「じゃあそこのデカいの!ちょっと他の人は下がってて!下がって!邪魔邪魔邪魔!」
『やれ』
『56せ』
『お前やれんのか?』
『いいガタイだ』
チトが声を掛けた人。それは筋骨隆々で顔にキズをメイキングしている男で、いかにも歴戦といった風貌の男だった。もちろんそれはただのアバターだけの話で、中身には何の関係もないのだが。
「とりあえずフレンド登録ね。えーっと…………ちゃんぽん?チャット送ってみて!」
ちゃんぽん【よろしくお願いします】
「お、よろしくお願いします。じゃあ何かあったらチャットして」
『スムーズ』
『有能そう』
ちゃんぽんというユーザーネームのその男はチトの発言に対するレスポンスも早く、チトはそれだけでもとりあえずは大丈夫だと判断すると、再びリスナーへの説明へと戻った。
「それで、私たちは三人別々で近いところに拠点を作って、協力しながらレベルとかアイテムとか集めて力をつけていくって感じ…………らしいんだけど、実は何もわかってない」
『どこに作るの?』
『水辺が強いぞ』
『無能』
「拠点の場所はまだ考えてないんだけど、水辺だと先輩たちと被るかなーとは思ってる」
『たしかに』
『リーンは絶対強ポジ狙いに行くよな』
そのコメントの通り、メイはかなり気分屋なので行動があまり読めないが、リーンに関しては絶対に有利な地形を狙いに行くだろうということがわかるほど、彼女はゲームをガチでプレイする人だった。
「そう考えるとー、なんか水辺って移動が簡単で足を遠くまで延ばしやすいっていうところが特に強いって聞いたから、逆にこの辺りで水路を使って取りに行けないような素材が取れるところ?」
『マップは?』
『地形見せろ』
そのコメントに応じて、再び配信画面にマップを出すチト。
「んー…………意外と森の方は通ってないね」
『木ってかなり使いそうだしな』
『木材はそのうち腐るほど余るから微妙』
マップを眺めながら、チトはリスナーたちとあーだこーだと議論を繰り広げる。
そんな地形はというと、山からは比較的離れた平原を緩やかな二本の川が通っているような地形で、盤石に川の近くに行くか、いっそ海のほうまで行くか、川からは少し離れた森の方に行くか、少し無理をして山の方まで行くかといった案が出ていた。
「結局どこにせよ何の魔物が出るか次第ってことなの?じゃあ今日は色々見回ってみる?」
『あり』
『移動大変だぞ』
『ちゃんぽんに聞こう』
妥協案を口にしたチトは、そのコメントを見て慌てて思い出したように口を開いた。
「そうだった!ちゃんぽん金言求む!」
ちゃんぽん【この地形なら、一部の人を森に派遣して木材を回収する部隊を作りたいところですね。ちなみに既にもう木材回収班が出来つつあります】
「有能!」
『天才』
『やるやん』
チトはちゃんぽんからのチャットを見ると、そこから一段とテンションの上がった口調でまくしたてた。
「じゃあちょっと木材回収部隊!リーダー誰リーダー誰?」
しかしチトの呼びかけに反応を示すプレイヤーはおらず、まだ有志で木材回収班を募っている状態だったようだ。なので、チトはちゃんぽんの時のように立候補するプレイヤーを呼び掛けたのだった。
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