第1話 チトの配信
「はーい。というわけで…………初まっちゃたねー」
『メイメイ先輩ありがとう』
『嫌そうで草』
二人と別れてから個人配信に切り替えたチトは、少し憂鬱そうに配信を開始していた。
「嫌ってことはないんだけどね。やっぱこういうハードなゲームやるの久しぶりじゃん?…………っていうか二人とも自由すぎ!」
『たしかに』
『チトがちゃんとしてる珍しい時間』
『後輩面のチト最高』
『いつもあれでやれ』
『むしろこれの為に違うゲーム多めにやってたのかと』
『あの二人の個人配信無茶苦茶』
『あの二人といる時のお前いつもと違くて心配になる』
『三馬鹿ね』
チトはそんなオープニングトークを繰り広げながら、合同配信ではやりきれなかったゲームの説明を再開した。
「とりあえずこれからどうするのかって話なんだけど、このゲームってめっちゃ自由度高いのね。ていうかもう現実なのねここ」
『www』
『ゲームだろ』
「でさ、みんな現実での強さってなんだと思う?」
そんなチトの質問に対し、思い思いの回答をするリスナーたち。
チトはしばらくコメントを眺めてから、頷きながらこう言った。
「そうそう。数が最強なの。人海戦術。人が多い方が正義なの」
『たしかに』
『いーや金だね』
『これ俺たちも参加していいってこと?』
チトは最後のコメントを見て頷くと、マップ画面を配信画面の方にリンクさせた。
「だからみんなも早く買ってきて!今この…………オプニパス大陸?ってとこの東の方のこの辺りにいるから、ちょっとここで待ちます。えーっと今の視聴者数が七千人だから、一万人来るまで一歩も動きません」
『そんなに来るわけないだろ』
『VLS編 完』
『お疲れさまでした』
『今から買っても間に合う?』
「間に合うから全員参加で!どうせみんなニートだし暇なんでしょ?」
『は?』
『本体すら持ってない』
もちろんそれは冗談半分…………つまり半分は本気でそうだと思っているのだが、とにかくチトはリスナーへの呼びかけをそのくらいで済ませるとゲームの説明を再開した。
「それでまあ、VLSはMMOのシステムを多く受け継いでるゲームなんだけど、ありえないくらいデスペナルティーがヤバいらしいんだよね。えーっとたしか、所持している装備・アイテム全ロスにスキルレベル全ロス…………スキルレベルって何?まあとにかくなんかヤバいらしくて、運営曰く「ゲームとはいえ死を軽んじないで欲しい」らしいけど…………馬鹿でしょ!」
『絶対に死ぬな』
『むしろ何も持たずにゾンビアタックするのが最強だぞ』
『スキルレベルはアイテムで上げれるやつ』
「ゾンビアタック最強だって!よしじゃあ今から他の配信者のとこ荒らしに行こっか」
『www』
『やめとけ』
『メイメイ先輩に喧嘩売りに行こうぜ』
『死んだらクソ萎えない?』
「あー、でもデスペナがヤバい代わりっていうか、むしろそれ前提で設計されてるから、戦闘力に関するものとかはアイテムをボックスに貯めとけばすぐ元に戻せるってメイさんが言ってた」
『ほえー』
『サバイバルゲーっぽいな』
「そうそうサバイバルゲー。あとクラフト要素も強いから、大人数で集まって集落作って、他のプレイヤーの集落と争ったりするのが結構メインなんだって。でもストーリーの方も結構すごいらしくて、世界中を冒険して世界の秘密みたいなのを探すっていう方面でも人気っていうか個人的にはそっちの方が気になってる」
『おもしろそう』
『魔族がどうこうとかいうやつか』
『ここはあの二人に任せて冒険に出よう』
チトがそんな話をしながら時間を稼いでいると、チトの周りにポツポツと他のプレイヤーが集まり出てきた。
「お、これってみんなだよね?」
『居ます!』
『多分そう』
チトがそう言いながら周囲の人たちにアイコンタクトを送ると、ジャンプしたり頷いたりと様々な反応が帰ってくる。
チトはそれを確認して頷くと、本格的にVLS配信を開始したのだった。
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