プロローグ 2
「遂にやってきましたー!ノスポリカー!」
『うおおお』
『結局やるんやな』
『知ってた』
『この三人でやるの?』
『何ゲー?』
Virtual Life Stories 3のサービス開始初日。リリースも間もなくゲームの舞台【ノスポリカ】へとやってきたメイ・リーン・チトの三人は、早速配信ツールを使って三人合同でゲームの配信を開始していた。
「いやぁーチュートリアルが長いのなんのって!私途中からなんも聞いてなかったよ。ナビゲーターの女神様は可愛かったけど!」
「メディエル様。百十二歳。甘いお菓子が好き。趣味は魔法の研究」
「なんでそんなこと知ってるんですか…………」
「話聞き飽きて質問攻めした」
「AIの方困らせないであげましょうよ」
『ドヤ顔で言うな』
『ピースすなよ』
リーンの発言に総出でツッコミを入れるリスナーたち。
チトはそんなコメント欄を軽く眺めてみたが、やはりリリース直後ということもあってか、今配信を見ている人はこのゲームについてあまり知らない…………つまりは三人を目当てに見に来てくれている人たちが多いようだった。
「ていうか二人とも本当に話聞いてなかったんですか?結構大事なこと言ってましたけど」
「うん!」
「返事だけは立派ですね…………」
「いやほら、やっぱりそういうのはチトちゃんが聞く役かなーってね?」
「役割分担」
「いや、全員聞くべきだと思いますけど」
『馬鹿二人』
『こいつらこれで本当に聞いてないからな』
チトは二人に非難の目を向けながらも、内心では安堵していた。
というのも、この流れでゲームの説明へと入ろうと思っていたからだ。メイがそれをわかった上で話を合わせてくれたのか本当に聞いていないのかはわからないが…………恐らくはそのどっちもだろう。
「じゃあリスナーの皆さんへの説明も兼ねて私が大雑把なこのゲームの説明をしますから、ちゃんと聞いといてくださいよ?」
「はい‼」
「返事だけは立派!」
「チトちゃん何歳―?好きな食べ物はー?」
「こっちは聞く気ゼロ!」
「私は甘いお菓子なんかがあると嬉しいですね」
「女神様!チュートリアル見てないリスナーたちに伝わらないですからそのモノマネ」
「すみません、つい出しゃばってしまいましたね。初めまして、私はメディエルという者で、この世界の女神として人々が繁栄するように様々な──────」
「説明が長い!女神様とチュートリアルに対する皮肉を込めないでくださいよこんなところで」
『www』
『お姉さん系なんだ女神様』
チトはボケの連鎖を断ち切るように咳払いすると、改めてVLSというゲームの大まかな説明を始めた。
「えーっと、とりあえず抑えておきたいのは普通のMMOとはちょっと力を入れているところが違うってことですかね。このゲームは従来のMMOとは違ってストーリー重視で、リアルタイムで進展していくこの世界の情勢にユーザーが好き勝手に首を突っ込めるっていうゲームだと公式は主張しているんです」
『へー』
『主張www』
『話崩壊したりせんのか?』
「今回は3ってことで既に二作出ているんですけど、話が崩壊したことはないっぽいですね。というのも一人一人のプレイヤーにできることが限られていて、あくまでこの世界の一人の人間程度の影響力しか及ぼせない設計になっているそうなんです。
それで、今作のNPC側からプレイヤーに対する扱いは、異世界からやってきた勇者的なものっぽいですね。敵が魔族とか魔物らしいんですけど、私たちはそれらからNPCを守る女神様が遣わした存在って感じです」
「えー神様がよかったー」
『神志望の女』
『欲が深え』
チトの説明に茶々を入れるメイ。チトはそんなメイに対して、もう聞き飽きたのかと少しばかり困り顔を浮かべた。
「文句言います?勇者で」
「だって神様の方がよくなーい?」
「ウチはチトと一緒ならなんでもいい」
「えっ…………急にどうしたんですか?」
「リーンずるい!私だって二人が一緒なら、倒した魔物や魔族に応じて獲得できる討伐ポイントでプレイヤー間のランキングが決まるコアな廃人プレイ向けゲームの世界でもいいもん!」
「はい?」
『なんて?』
『頭に入って来んわ』
突然のメイの暴挙に戸惑うチトとリスナーたち。
メイはそんなチトたちの反応にキョトンとした表情を返すと、再び口を開いた。
「だからー。このゲームは世界観とか細かいNPCの設定とかも凝られてて、ヴァーチャルワールドで新しい生活をっていうテーマで作られたまったりプレイにも適したゲームって運営は主張してるってこと!」
「今はさっきの言い直すとこ!新しい情報出してこないでくださいよ」
『主張?』
『なんて?』
メイの暴走にまたも戸惑うチトとリスナーたち。
そんなメイはというと、チトたちを更に困らせるようにこんなことを言ってのけた。
「というかVLSの説明とかいらなくなーい?やればわかるでしょ!」
「メイさん早くやりたいだけですよね?」
「うん‼」
「いい返事!…………まあ実際のところそれも正しいですけど」
『わかる』
『てかリーンは?』
「リーンさん?…………うわあの人一人でゲーム始めてるし!」
『www』
『自由』
チトはもう収拾がつかないことを察すると、無理やり不足している説明をねじ込むことにした。
「というわけで!私たちは三人で別々にプレイして、同盟軍という形でやっていくことになったので皆様よろしくお願いします。ゲームのことは各自の配信で説明していくってことで、解散!」
「わー!ぱちぱち!」
『ぐちゃぐちゃ』
『チトさんお疲れ様です』
『うちの馬鹿がすまん』
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