美少女≠文化祭

 3年生にもなって、ゴールデンウィークも過ぎて。

 それでいて、夏休みがまだ見えない時期に何故か行われる文化祭。

 時期違いだと思う。



「えー、今年は去年と違って、飲食店をやろうかと思います」

 えらく賢そうに物を言う委員長が、そう、高らかに宣言した。

 それに対して賛成も反対も言わない僕を含めたクラスメイト諸君。

「何か、いい案ある人、いませんか?」


 僕は真っ先に手を上げた。

「植物園がいいと思います!多肉植物をいっぱい置きましょう!ベンケイソウ科イワレンゲ属のツメレンゲとかどうでしょう!あ、飲食店でしたね。それなら、ウニ焼きが食べたいです!イクラもすきです!特に食べずに潰すのが!」

 そうすると言わずもがなクラスを追い出され、ましてや学校追放。

 不良となった僕は、全身にダイナマイトを巻いて、街中を爆破して回る。

 そしていよいよ、指名手配犯に……


「メイド喫茶がいいと思います」

 僕がくだらない妄想をしていると、もっとくだらない案が出てきた。

 リアルに植物園のほうがマシ。

「いいね、それ!」

 興奮気味に委員長が言う。

 ダイナマイトで委員長を殺す妄想をしておいた。

「白川さんは、どう思う?」

「ナンセンス」

 肩辺りまで伸びた髪をくるくるさせながら、退屈そうに紫苑が答える。

「なら、白川さんは何がいいと思う?」

 紫苑にそれ聞くやつ勇気あるな〜、なんて考えてると、「焼き肉」とかいうゴミみたいな回答が出てきた。

 ダイナマイトで爆破する妄想をしようと思ったけど、どちらかといえば紫苑の投げてる側の妄想しか出来なかった。

 尚、被害者は僕。


「え〜、協議の結果、メイドカフェに……」

「変わったのカフェか喫茶かだけじゃん!着ないからね!私!」

 叫ぶ紫苑。

 紫苑に同調するエトセトラ。

 露骨に悲しそうな顔をする委員長。

「白川さんがそう言うなら私も……」

「そもそも、委員長がメイド姿を見たいだけじゃねぇの!?」

「冥土の土産にメイド服みたいってか!?」

 声が高まる。

 負の感情による団結力が、人の意思を強くしてる。

 つくづく、くだらない生き物。


「瀬戸君は何したいのさ」

「植物園」


 あ。

 集まる視線。

 一人ケラケラ笑い転げてる紫苑。

 紫苑に聞かれてつい、いつもの感じで、二人のときの感覚で、流れるように想像したことを答えた。


「やっぱりアイスで」

「瀬戸君は植物園焼き肉したいんだって!」


 軽く死にたかった。

 僕はダイナマイトで自爆した。

 僕の死体は、骨一つ、残るのことなかった。

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