キャンプ≠美少女
既に立ってたテントに入って、夜ゆっくり話して。
静かな空気というか、新鮮な空気というか、何しろ新感覚みたいなのを僕らは味わっていた。
「なんだか、林間学校みたいだね」
「そうな」
「私達が同じ小学校だったら、こんな感じになれたのかな?」
「男女同部屋には慣れないだろ」
「それもそっか」
そんなくだらない話が、何となく僕は好きだった。
それから何か不思議な体験なんかをした話をして、気づいたら寝てて。朝になってると思ってたら紫苑の姿はなかった。
「おはよ、瀬戸君」
眠い中、ちゃっかりご飯を炊いてくれていた。
「ちゃっかりしてんな」
「そだね〜。私、朝はしっかり食べたい派なんだよ」
それに、こうしてると何だか、瀬戸くんの朝ご飯を私が用意してるみたいでいいじゃん?
なんてことを、目を合わせず、ちょっと顔を赤らめながら言う。
なんで?
「実際そうなってるけどな」
「も〜〜!気づけし!」
だから何にさ。
「それよりさ、気づいたことがある」
「なんだよ」
「思ったより暇。なんなら夜二人で話してるときが一番楽しい」
僕は激しく同意した。
朝ご飯を食べて何だかやることのなくなった僕達は、キャンプにまで来てニートすることにした。ホントに何やってるんだろうね。
紫苑はネット小説読んでるし。
ちなみに、モバイルWi-Fiまでしっかり持ってきてた。僕には貸してくれないらしい。使い放題なんだから4Gでいいだろうに。
「ねぇ、異世界転生したい」
「急になんだよ」
「嘘、ラブコメしたくなってきた」
さっきまでネット小説読んでたのに気づけばアニメを見ていたらしく、完全に漫画脳が完成していた。
やることないと逆に忙しいまであるよな。なんかこう、色々溜まってるアニメみたりしたりで。
「私達もさ、学校始まったらラブコメしよ」
「どんなラブコメだよ」
「私って、ヤバイやつじゃん?」
自覚あったんだ。
「しかも、人気者で読モもたまーにやってるし。だから、こっそり付き合ってるみたいなこと、出来ると思うの」
「今まさにやってるけどな」
「チッチッチッ。甘いよ瀬戸君。こういうのはね、こっそり付き合っていながら、でも裏では実は大胆!みたいなのがいいんだよ」
「それはつまり?」
「陰の実力者ならぬ、陰の
なりたくない?」
「別になりたくない」
えぇ〜〜。
なんて声を無視して、僕は紫苑がやたらと持ってきた釣り道具を持って川で釣りをすることにした。せっかく落ち着く空気なのに、何だか紫苑といると騒々しいから。
「やぁやぁ瀬戸君。調子はどうだい?」
1時間くらい経って、テキトーに泳いでる魚を眺めてた頃、うるさいのが戻ってきた。
「まだ漫画脳?」
「私は死ぬまで漫画脳さ。私、最強だから」
見たアニメがわかりやすくて非常に助かる。
「今度はなんだよ」
「やることない。かまって」
「帰りたいのかと思ったけど、まだいるつもりではいるんだな」
「家帰ったら何だか現実っぽくて嫌。それに、夜ゆっくり瀬戸君と話したいし」
「家でも出来るだろ」
「確かに」
そう言って紫苑はテントに戻ったかと思うと、釣り道具を持ってきた。
で、横にストンと座った。
餌もつけずに。
「何してんだよ」
「別に何も。何だか、隣にいたくて、ね」
ふふん、と何故か満足げだし。
「それでさ、ゴールデンウィーク明けたあとの話なんだけど……」
「随分先だな」
「文化祭、あるじゃん?」
「そうな」
「一緒の係やろうよ」
今更改まって、何の話かと思えばだいぶくだらなかった。
そんな話をしてると気づけば暗くなり、夜話したいと言ってた紫苑は寝て、やたらと歩いた僕が筋肉痛になっただけだった。
まさに、地獄。
これなら家帰って勉強すればよかったなんて思う。
まだ2日も休み残ってるのが逆に憂鬱。
いっそのこと、学校行ってやろうかなんて思ったり。
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