空虚≠美少女

 約束していたソフトボール部の練習観戦を終えた私は、暗い校舎内を一人歩いていた。

 なんだかソフト部の子達の中に入って一緒に帰るのも悪いし、気まずいし。

「私、用事あるからちょっと〜〜……」

 とか言って抜け出した。

 完☆璧


 天文部の部室に寄っても、後輩一人おらず、やっぱり喋り相手はいない。

 だからなんとなく、職員室に侵入して鍵を取り、屋上に上がって一人、ゴロゴロした。


 たまに思う。

 ここから飛び降りたらどうなるのか。


 多分、脳みそがもんじゃ焼きみたいに飛び出して、ぐちゃぐちゃになる。

 それを見たら瀬戸君は、なんて言うんだろう。

 彼なら意外と叫ばず、一人で黙ってそう。

 寧ろ彼の妹の方が泣き叫びそう。

 親は悲しむのかな。

 友達はそれで泣くのかな。


 どうなったとしても多分、半年経てば大半の人は私の顔を思い出せない。

「白川紫苑?あー、いたなー」

 としか多分、思わない。


 それで私は、記憶によってどんどん美化されていく。

 不思議なことだと思う。



 星々を眺めていると何だか彼が恋しくなってきたから、帰ることにした。

 我ながら純情乙女で可愛い。


 携帯を見ると、その瀬戸君から電話が入っていた。

 ちょっとテンションが上がる。


 でも、かけ直しても出なかった。

 2コールで出るように躾けてあるのに、意外。




 職員室に鍵を返して、暗くなった廊下を歩く。

 足音が響いてなんだか幻想的。

 行く先が真っ暗なのが、未来って感じで私は好きだった。


 とか思っていると、人影が見えた。

 しかも、話し声がする。

 あ、瀬戸君の声だ。


「だから、紫苑迎えに学校言ってるだけだよ」

 あ、電話してるのか。


「何してんの?」

 そう聞くと、ビックリしたみたいに彼が振り返った。

 あんまり感情を見せない人間だから、私もビックリした。


「なんで紫苑までビックリしてんだよ」

「いや、なんでいるのかなって」

「なんとなく、戻ってきたんだよ」


 はっはーん。

 私のことが心配だったんだ。

 可愛い奴め!襲ってやるぞ!


「心配しなくても大丈夫だよ。ちょっと屋上行ってただけだから」

「誰にも会わなかった?」

「会ってないよ」

 そう言うと、なんだかホッとしたような顔をした。意味分かんない。

「なんかあったの?」

「なんでもないよ。紫苑に何もないなら何でもいいし」

 そういう彼は、足早に私の前を歩いた。

 珍しいこともあるんだな、なんて思う。


 それでなんとなく、後ろから抱きついた。なんだか頼もしく見えたから。

 普段は無表情で「我関せず」みたいな顔してるのに、心配してくれるのが、嬉しかったからかもしれない。


 願わくば、ずっとこのままでいたい。

 やっぱり私は、彼が好き。

 背中に顔を当てて、思いっきり匂いを嗅いだ。

 好きな匂いだった。


 しばらく私は、こうしていた。











※カクヨム壊れちゃって通知が来なくなりました。よって、皆様の応援の通知がなくて泣いております。

何か対処法知っている方がいらっしゃれば応援コメントのところで教えて下さい。お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る