君死にたまふことなかれ

「絶対今日は学校行かないからな」


 僕は今、死地に立たされている。

 言うまでもなく、紫苑のせい。


「え〜、彼氏が不登校やだ」

「誰のせいだと思ってるんだよ!」


 そう言うと「あははは!」なんてサイコパス気味かつ愉快に笑っていた。

 腹が立つ。


「私の彼氏ってバレたの、そんなに嫌だった?」

 哀しそうに言う割に、目元が笑ってる。

 全然哀れじゃない。

「そんなんじゃないよ!尋問されるのが嫌なんだよ!」

「されないされない!わかった、賭けようよ」

「何をだよ」

「私が行って尋問されれば瀬戸君の勝ち。私が行って尋問されなければ私の勝ちね?」

「負けたら何するんだよ」

 うーん、と悩んで鞄を持ち上げた、

「帰ってきてから考える!行ってくるね!」

 なんて元気そうに出ていった。


 どうせ尋問されるとして、何をやらせるか考えながら僕は取り敢えず、一人の空間を楽しむことにした。親はどこかに出かけたし、妹は学校だし。


 広い空間に一人だと、意外と世界は静かだ。

 特に紫苑がいなければ尚更。

 思えば3学期が始まって早々、色々と忙しすぎた。

 9割紫苑のせいだとして、ふと思い返す。

 3学期に留まらず、そういえば沢山のことがあった。


 散歩してるときに紫苑に出会って、それから付き合って。

 旅行に行ったり、夏にはプールに行ったり。

 だいたいどこでも紫苑はどんちゃん騒ぎしているけど、なんだかんだそれが楽しい。


 ずっとこれからも、そうでありたい。

 騒がしくても裏表のある、人間らしい紫苑と一緒にいたい。


 あ。


 賭けにかってもらったとき何するか、思いついた。

 紫苑も同じ思いならきっと、これはいい結果になる。


 そうして僕は、一人家の中でニヤニヤと笑う気色の悪い奴になった。




「あの、瀬戸君、ご容赦お願いします」

 ズタボロになるまで尋問された紫苑が帰ってきたときに放った一言目はこれだった。

「どれくらい尋問されたの?」

「女子には、このこと知らなかった人にキャーキャー言い寄られて、男子には鬼気迫る勢いで尋問された」

 弱った紫苑が新鮮で僕はちょっと笑った。

「笑うなし!」

 怒ってハンカチで叩く紫苑。

 ふっ、無駄だよ。

「僕、ちゃんと何してもらうか考えたよ」

 そう言うと紫苑はビクッと待ち構えた。

 と思うと、突然開き直った。

「瀬戸君、私のことメチャクチャにしたいんだよね。うんうん、私は甘んじて受け入れるよ……」

 目をそらして、「ホロリ」なんて泣いてるような顔してる。

 そんなので終わると思ったら大間違いだ。

「それで済むと思ってる?」

「え、瀬戸君、S入ってる?」

「僕は今日、紫苑が苦しむ様をとことん見たくなったんだよ」

「あ、そっち系の人だったんだね。ムチとかの物理的攻撃は出来ればやめてほしいんだけど」

「そんなことしないよ!」

 そう言うと、ゲラゲラ紫苑が笑う。

 なんだかこっちが負けた気になってきた。


「じゃあ紫苑、一人で遊園地に行ってもらおうか」

「え?」

 僕は考えた。

 紫苑に対する最高の仕返し(嫌がらせとも言う)は何か。

 そして新境地に行き着いた。

 紫苑は意外と、一人で生きていけない!

 というか、一人だと何していいかわからない人だ。

「ムリムリムリムリ無理!」

「駄目だよ罰ゲームだ」

「私、一人でそういうとこ行くと死んじゃうタイプの生き物なんですけど」

「知ってるよ?」

 今度は僕が気取って「ふふっ」と笑う。

 あぁあぁ、悔しそうな紫苑の顔は傑作だ。

 なんて哀れで可愛いんだ。

 ムチなんかよりよっぽど魅力的だ。


「これって現実?」

「現実だよ?」

 現実主義者の紫苑様とあろう者が現実を否定し始めた。

「瀬戸君との方が楽しいんだけど」

「ビデオ通話ぐらいしてあげるよ」

 そう言うとフラフラと部屋に向かっていった。

「どうしたの?」

「瀬戸君のえっち!」

 意味がわからなかった。

 多分、拗ねただけ。


「お兄ちゃん外まで紫苑さんの声聞こえてたんだけど何かした?」

 そして僕は帰ってきた妹に尋問された。

 結局家でも尋問される僕、哀れだ。












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 あとがき


 お久しぶりです。真白まみずです。

 案件に手こずっており、更新がまたもや遅れました。ちなみに3回くらいボツをくらって死にそうでした。


 ところでなのですが、この度あとがきとしてスペースを頂いた本題は、文章の設計を変えたことについてです。

 以前よりも画面全体が白くなったと思います。

 スペースを開けてるかの違いなんですけどね。

 どちらの方が読みやすかったか良ければ応援と一緒に送ってください。

 全てに返信したいと思っています。

 また、カクヨムコンに向けて新作も用意しています。

 いずれまたあとがきにて宣伝させて頂くと思います。

 以上です。

 お知らせが多くて申し訳ありませんでした。

 これからもよろしくお願いします。

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