美少女≠恋バナゲーム
「白川が恋バナするってよ」
「マジかよ。絶対聞きてぇじゃん」
「白川さんが恋バナするらしいよ!?」
「嘘!?あの、恋愛とは無関係って呼ばれてる白川さんが!?」
紫苑の部屋に、人がどんどん集まる。お風呂場に荷物を入れないと、入れないくらいに。
「あれ、思ったより集まっちゃったね。ま、いいや」
紫苑が一人、ベッドに座って、皆は地面に座るか立っている。ちなみに、紫苑のベッドに触れたら、周りのその他の人間に殺されるらしい。
「それじゃ今から、恋バナゲーム、はじめま~~す!!ルールは簡単!最初に私が決めた数だけ、私に質問出来ます!ただし私は、5問の間に一問だけ、嘘をつけます。これでどお?」
つまり、最初に20問と設定されれば、紫苑の嘘は4つ。19問なら3つ。紫苑が作るゲームは、毎回ゲーム性があって面白い。そしてやはり今回も、かなり面白いだろう。質問する側が、かなり悩まされるゲーム。
「まず、今この部屋には私と私の班員含めて、30人いないくらいかな?だから、そうだね。20問にしよっか」
「私達はそれでいいよ〜」
マイさんが答える。
「ありがと!それで、私の身内がしてもつまんないから、ここにいる私の班員以外の人全員が私に質問していいよ!私の嘘は4つまで!」
「うおおおおおおおおお!!」
と沸き立つ。僕もちょっと、面白くなってきた。紫苑がどこで嘘をつくのか、楽しみ。そしてそれ以上に、このゲームはなんと言っても嘘と嘘でない場所を見破れるかがポイント。絶対、見破ってみせる。
「それじゃ、始めるよ!準備はいい?」
「はい!」
元気のいい返事が返ってきた。
「よし!手前の君から順番にね!恋バナゲーム、スタート!!」
「好きな人はいる?」
「いるよ」
もう、ザワザワしてる。確かに、僕の周り以外の人なら、新事実も新事実か。嘘の可能性も捨てきれないけど。
「今までに告白されて、悩んだことはある?」
「ある」
「身体はどこから洗う?」
誰だよこの質問。無駄だしバカすぎるだろ。あ、ほら、言わんこっちゃない。周りのやつにシバかれてる。
「髪かな〜。身体的な部位で言うと、肩だけど」
それを聞いて、男子が息を呑む。人の彼女に欲情すんなよ!気持ちわりぃ!
「自慰行意は……」
「節度を守った質問でお願いね!」
聞いたやつ、殺す。
「白川さんは、キスをしたことがありますか?」
「あるよ」
キャァァァァァァァと、ぎゃぁぁぁぁぁぁが、響き渡る。女子は悲鳴のような歓声。男子は絶叫。
「小さい子にしても、キスはキスだからね?」
紫苑がそう言うと、がっかりした人と、喜んだ人の2つに別れた。
「白川は、彼氏が欲しいと思いますか?」
「今は思わないかな〜。あ、これで5つ目の質問だけど、この中に一つ嘘があるとは限らないからね。あくまで、合わせた中で4つだから!それじゃ、続きいこっか」
皆が周囲で、話し合う。だんだん、本気になってきた。
「その白川さんの好きな人は、同じクラスですか?」
「Yes」
「ぶっちゃけ、今班員にいますか?」
「No」
上手い。流石、紫苑。ここでNoということで、嘘だと思われにくくなる。Yesと言って、他の箇所でどうしても4つ嘘をつかない質問をされるとここがYesで確定してしまうから。普段は抜けてるけど、こういうときはちゃんとしてる。
「白川さんって、デート誘ったら来てくれんの?」
「う〜ん、空いてる日なら考えるけど、基本予定埋まってるから微妙だね」
「一人のとき、なにしてる?」
「家でゴロゴロしたり、病院に行ったりしてる」
病院に行ってるのは、僕もはじめて聞いた。確かに土日、紫苑が朝から現れる日と現れない日がある。午後には現れるけど。そういうとき、病院に行ってるのかもしれない。でも、なんで?
「白川さんのタイプは?」
「面白くて、私のことをちゃんと見てくれる人」
「カッコいいって思ったり、この人好きだって思ったら、自分から話しかけんの?」
「基本私は待ちだけど、アタックはする」
「今までで一番楽しかったデートは?」
「水族館デート」
「付き合う人の最低条件は?」
「私のことを、ちゃんと見てくれる人」
ここで同じ答えが2回出たから、両方嘘じゃない可能性が高くなった。何も知らない人からしたら、かなりのヒント。
「その好きな人のことを好きな人は、白川さん以外にいる?」
「いる。噂で聞いたことある程度だけど」
「その人はイケメンですか?」
「う〜ん」
チラッと僕の方を見る紫苑。こっちみんなよ!
「まぁまぁ、かなぁ」
え、え、え、と女子がざわつく。おいおい、バレたんじゃないだろうな。これでバレたら、100%紫苑のせいだし、このゲームは完全に負け。
「もしかして、その好きな人って、木村君、ですか?」
「No!!絶対にno!!」
完全否定される木村、可哀想。強く生きろよ、木村。それなのに、女子はまたキャーキャー騒ぐ。紫苑の全否定を、照れと捉えたのかな。紫苑の上辺じゃなくて、本質を見ないと。
「陽キャと陰キャ、どっちのほうが好き?」
「私、陽キャとか陰キャって分けたくないんだよね。それで差別して、どうなんのかなって思うから。だから、どっちが好きとかないかな」
今、質問した男子は遠回りに振られた。こいつも可哀想。木村の方が可哀想だけど。他のやつは「くっ、これが本物の美少女か……」とか言ってる。興味ないってだけなのに。
「ぶっちゃけ、このクラスで自分以外に可愛いって思う人は誰ですか?」
「委員長とか可愛いと思うよ」
聞いた女子が、委員長の肩を叩いてる。多分、容姿とかの話じゃない上に、適当に言ってるんだと思うけど。その証拠にほら、目が死んでる。
「その好きな人が死ぬってなったら、自分も死ぬ?」
「死ぬ」
本気だから、怖い。比喩表現じゃなくて、紫苑は本気で死ぬ。
「じゃあ次、最後だね。委員長かな?」
今の嘘は2つか3つ。嘘はつける。
「私と白川さんは、ライバルですか?」
真剣な顔で聞く委員長。一瞬沈黙が流れて、紫苑が、目だけ僕の方を見る。そして、親指と人差し指で顎をなぞり、挑発的に、ニヤッと笑った。
「Yes」
最後の質問の後に残ったのは、阿鼻叫喚だけ。嘘の可能性もあるから、皆、困惑してる。僕が一番困ってるけど。委員長周りの女子からの視線が痛い。あとそれと、可愛さのライバルと捉えてる人間もいるらしい。主に男子。現実逃避してるだけ。
「じゃ、これで恋バナゲーム終わり!バイバーイ!」
そう言う紫苑の声で、僕はこの人口密度の高い部屋から解放された。すぐに戻ってこいと連絡が来たけど。
「どうだった?」
「嘘、4回つくとは限らないって最初から言っとけよ」
「それがこのゲームの一番難しいところだよ。あとは自分で考えるようにされてるところが」
満足そうな紫苑。僕も楽しかったし、いいか。気になるところはあるけど、またいずれ聞くことにした。
結局、消灯ギリギリまで紫苑達の部屋にいたせいで、話疲れた。須藤と木村は夜中まで元気にゲームしてたけど、僕はすぐ眠った。これでまだ1日目なんだから、身体が持ちそうにない。修学旅行、楽しいけど、地獄だなぁ、なんて思う。携帯がずっと震えてるのを感じる。多分、紫苑からの電話だろうけど、放っておく。明日も合うんだから、別にいいだろ。僕は、意識をシャットダウンした。
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