戦略的配置≠美少女
2学期が始まって少したった頃。体育祭の競技決めをしないといけないとか。
「え〜、体育祭の競技に誰が何にに出るかを決めま〜す!」
今日も美少女な私が教卓に立ち、皆の視線を集める。
彼も私の方ちゃんと見てくれてるかな?
あ、外見てる。
瀬戸君もこっち見てよーー!!と心の中で叫ぶ。有象無象共の視線が痛い。ここまでくればその目が皮肉にしか見えなくなってきた。こんなこと思ってると思われたらまた彼に「僕に見てもらいたいのに僕以外に見られてるの、哀れで可愛いな」とか思われそうで余計にフラストレーションが溜まる。
「え〜、まず、足の速い人は出来る限りリレー出てもらいますので、足が速いよって方は手をあげてくださ〜い」
誰も手を挙げない。ウザ。さっさとしろし。
「誰も挙げなかったら私が勝手に決めてくからね」
そう言うとパラパラと手が挙がり始める。はじめからそうしろっつーの。
「ところで、白川は何出んの?」
一人の男子生徒が聞いてきた。あ、私は皆の名前覚えてないから横にいる南に書かせてる。
「私はまだ決めてないな〜」
「白川って足速くなかったっけ?」
「私遅いよ」
「50m何秒?」
何秒だっけ。
「8秒2だったと思う」
そう言うと、なら男女混合リレーはないか……。なんて皆言い出す。いやいや、瀬戸君が出ないなら出るわけ無いじゃん。知らないやつからのバトンなんて、何託されてんのかわかんないよ。私、クラスのためとかしたことないし。ただ自分が楽しみたいだけだし。
そんなこんなでどんどん競技が決まってく。私が率先してるのはよくわかんないけど。でもこれが、一番まとまりが出来て効率がいい。早く終わりたいし。
「白川、結局何に出るの?」
彼が私に聞いてくる。堂々と学校でも話せるようになって、私は心底喜んでる。
しゃい☆
「私はまだ決めてないよ。瀬戸君はもう決めた?」
「僕もまだ。多分余り物にするかな」
それを聞いた私は「そっかそっか〜」と撤退する。そして、美少女というこの世の最高権力で出場表を見た。
「ねね、男女で組む系で残ってるやつって、ある?」
有象無象に聞く。こういうときに便利なんだよね。
「あ、白川さん!残ってますよ!よければ俺と組みませんか?」
「ほほ〜、私を選ぶとはお目が高いね。どれどれ、どの競技が残ってるのさ」
「二人三脚です!」
絶対出る。
「私達じゃ体格差大きいからだめだね〜。君、177cmぐらいあるでしょ。私は160cmぐらいだから無理かな〜。167cmぐらいの残ってる男の子いないかな〜?」
チラッと彼を見る。ぼーっと外を見てる彼。
駄目だ、私の視線じゃ気づかない。
うだうだ言ってる有象無象を置いて彼の元へ行く。
「二人三脚の枠はまだ開いてるらしいから、入れといていい?」
「えぇ!?」
困ったような顔をする彼。でも私は知ってる。ていうか最近わかった。こんなときでも意外と彼は喜んでる。困ったような顔をしてるのは照れ隠しなだけ。
可愛いな〜。
可愛いは正義!
Yes!I am justice!
「出るよね?」
ちょっと圧力をかける。出ないなんて言ったらぶっ飛ばす。私に誘われて断る権利があると思ってる、その甘ったれた幻想もぶち壊す。
「わかったよ、出るよ」
ほら!嫌そうだけどちょっと笑ってる!私が自分でニコニコしながら書くのもなんか違うから私以外の人にやってもらお。あ、そうだ。
「ひなちゃん、私と瀬戸君の名前、二人三脚のところに書いておいてくれない?」
「えぇ!?」
と南も困った顔をする。そりゃそうだよね〜、私の二人三脚の相手を南が勝手に決めたとかなったら男子ブチ切れそうだし。
「どしたし?」
彼と同様
「わかりましたよ!書きますよ!」
南って彼と同じタイプだよね。なんだかんだ、だいたいのこと聞いてくれる。
で、案の定色んな人にギャーギャー言われて、それでもなんとか私のために書いてくれる。
「お疲れ様!」
とびっきりの笑顔で南を迎える。とんでもなく疲れてそうな顔してる。ちょっと笑えてきた。
「白川さんって、ホントに性格悪いですよね」
呆れたように南が言ってくる。
「そうだね!寧ろ人間らしいって言ってほしいぐらいだよ」
そう言うと南は溜め息をついた。
「え、天文部も部活動対抗リレーあるってマジですか?」
「マジよ」
久しぶりに部活に顔を出した私達幽霊組。ちなみに天体観測は私達のせいで8月はなしになったらしい。
そんな毎月やることでもなくね?
「で、誰が走るんですか?」
「私とあと3人よ」
残り組の私達が目を合わせる。彼が最初に目をそらした。でも私は彼とバトンを繋ぎたい。どうしても。
「瀬戸君は出ないとね〜、2年生だし」
「そう言う白川だって出ろよ」
「わかってるし」
あとは一年坊に託した。どっちでもいいし。
「で、先輩はアンカーとして私達はどこ走る?」
「僕は中途半端で目立たないところがいい」
彼らしい。目立てばいいのに。自分に自信ないだけで、イケメンとは言わないけど、まぁまぁカッコいいよ。まぁまぁ、ね。
「なら瀬戸君2番手ね。私3番手。1番手は君たちに託した!」
順位とかどうでも良くて、問題は彼からバトンが渡されるかどうかだから。ていうか、誰が天文部に勝ちを求めてんのさ。私達は遊びでやればいいんだよ。バカ野郎コノ野郎♫
「入場のとき皆でゆっくり、堂々と歩いていって、カッコよく振り向きたいな」
「で、決め台詞は?」
流石、彼。私の聞いてほしいことをわかってる。
「洒落臭い」
「厨二病こじらせすぎだろ」
確かに。
私ってそんな厨二病かな?
美少女の私がそんなわけ無いか。
「で、望遠鏡もって走るんですか?」
「そんなわけ無いでしょ」
「歌いながら走るとか?」
「まだそのほうが現実的ね」
見えてるものを見ようとして♪
皆は私の見えてないところ見てくださいね〜。
スカートの中じゃないよ?
たまにそっちの見えてないところ見ようとしてくるボケがいる。ボケと言っても須藤ではないけど。
「とりあえず、私達が走るのはわかりました。それじゃ、今日のミーティング終わりですね。お疲れ様でした〜」
お腹が空いたからさっさと帰りたかった。溜まってたアニメ見ないといけないし。
「あ、白川先輩お疲れ様でした!」
「おつカレ〜390円」
適当な返事をしてさっさと帰る。彼がついてきてるのも確認して。
「体育祭、楽しみだね!」
「そうな」
私は二人三脚の練習が早くしたくてたまらなかった。というより、彼とくっつきたい。
私がこれだけ頑張って誘惑してるのに、彼は一向に私の身体に興味を持ってくれない。
わ〜たしのパウワーが〜、かんっぜんに負けているぅ〜。
身体的魅力がほしい。
「今度公園で、二人三脚の練習しよっか」
「いいよ。僕、そういうの苦手だし」
「私も人のこと考えないからからっきしだよ。二人で頑張ろうよ!」
そう言うと、薄く笑って頷いてくれる彼。
練習と言う名のデートに誘えたことより、この顔が見られて嬉しい。
毎日、いやずっと、この顔を見ていたい。
いつまでも、私に優しく笑いかけてくれる存在でいてほしい。
そんな願いを込めて、今日も私は彼の横を歩く。
体育祭、楽しみだな。
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