美少女≠部活 2
夏休み1日目、いきなり僕達は学校に駆り出されていた。
なんで夏休みなんかに学校こなきゃいけないんだよ。
「天文部って、部室どこにあんの?」
「僕に聞くなよ」
二人でそれっぽい教室を回っていると、部室を見つけた。
文芸部、天文部、書道部が全部同じところにあって、まるでカオス!と思ったけど、どこも人が少なくて全然余裕があった。
「あなた、新入部員?」
超絶気難しそうな先輩がいた。
メガネをしているのにさらに、目を細める。
「メガネの度、変えたほうがいんじゃないですか?」
紫苑がいらないことを言う。
素で言ってるみたいなので、単に天然なだけ。
「失礼ね。合ってるわよ」
「合ってませんよ。私達見て、目を細めるんですから」
キョトンとしたような顔で紫苑が言う。
ある意味怖すぎる。
「ところで、自己紹介してもらえるかしら」
「2-2の瀬戸です」
「同じく2-2の白川紫苑です!」
何かを思い出すような顔をする先輩。
「あなた、ミスコンの」
「出てませんよ」
紫苑がミスコンで有名なのが面白い。
紫苑、出てないのに。
僕が笑っていると、紫苑が睨んできた。
「3年生の間でも噂は聞くわ。とても可愛いって」
「ありがとうございます!そっか〜、私先輩達にもモテてるんですね〜」
「そうね」
「ところで、部員って私達だけですか?」
「一年生が二人いるわ、もうすぐ来ると思うけど」
じっと待つことの出来ない紫苑はフラフラと書道部を見に行ったり、文芸部の小説を勝手に読んだりして待つ。
15分ぐらい待って、ようやく、一年生が来た。
「え、白川先輩がいる!」
男子だった。
「まじかよ!?なんでここに!?」
「やっ!君たちが一年生?」
今日初めて部活に参加した人間の態度じゃなかった。
改めて、紫苑のメンタルの強さを感じる。だからどこで買えるんだよ、そのメンタルの防弾チョッキは。
そして一年生は興奮状態。
僕だって気持ちはわかる。学校内で一番可愛いって言われてる人が自分の部活に急に現れたらビックリする。
「で、先輩。今日はなんで僕達集められたんですか?」
僕が聞くと、思い出したように皆(僕以外の残りの3人)を集めた。
「定期の観察会の予定を作りたくて読んだの。新入部員が入ったって聞いたし、二人の予定も聞いておかないとね」
「あ、私達別に用事ないのでいつでもいいですよ。部活もここしか入ってないですし」
ね、瀬戸君。と僕に繋ぐ。
僕が喋らずとも全てが進んでいく世界が実現されてしまっていた。
「ていうか、その、男の方の先輩は誰なんですか?」
一年生が恐る恐る聞いてくる。
確かに、傍から見ればただの紫苑の付き添い。
付き添いにもなってないか。紫苑に拉致られた人。
「白川と同じクラスの瀬戸。よろしく」
「よろしくおねがいします!」
元気な一年生だった。なんで運動部入らなかったんだよ。
「それで、白川さんはいつでも暇だって言うけど瀬戸君は大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですよ」
「なら、7月は6日後の今週の土曜日でいいかしら」
「あ、待ってください!その日、やっぱり私用事あるので金曜日にしてもらえませんか!」
用事なんてないだろ。
強いて言うなら映画があるぐらい……。
それかぁ……。
僕も今週の土曜に用事が出来そうだった。
「それならわかったわ。今週の金曜日にしましょ」
「午前2時踏み切りに望遠鏡を持って集合ですか?」
「いえ、普通に17時にここよ」
「何時までですか?」
「そうね、21時ぐらいまでなら行けるはずよ」
紫苑が4時間も星を見てられるとは思わなかった。
多分、何か遊び道具か食べ物を持っていかなくちゃいけない。
僕も忙しいじゃないか。
なのに紫苑は僕がそんなことを考えていると露も知らず呑気に楽しみにしている。
「白川先輩!連絡先交換してもらっていいですか!」
「僕もお願いします!」
「わ〜かったから待ちなさい諸君。私の連絡先持ってるって自慢してもいいけど、勝手に人に教えちゃだめだからね?」
「はい!わかってます!」
もう傘下を手に入れたらしかった。
それなのに、僕には連絡先を聞いてこないのが癪だった。
「それで、今日はこれで終わりですか?」
紫苑が文芸部の小説を読みながら聞く。
「いいえ、観察会のときに何を探すかとか、何が見えるかを話し合ってから終わりよ」
「それ、事後報告じゃだめですか?」
「あなたみたい星とかないの?」
紫苑が一瞬考える。
「星全般を見たいので特にないです」
大雑把な性格が出ていた。
「白川、せっかくだし参加しない?」
「瀬戸君が参加するならするよ?」
ということで、紫苑も参加だけはした。
意見は何も出さないけど。
おっと、出せないの間違いだった。
「白川先輩って、なんでこの部活入ったんですか?」
一年生の一人が聞いてきた。
「さっき言った通り、星みたいからだよ」
ウソつけ。
出来るだけ人数が少なくて、ロマンチックな部活を探してただけだろ。
「僕達と星見てくれますか!?」
「同じ部活だからそりゃ見るでしょ。ところで瀬戸君は星座とかわかる?」
やった!とか言ってる一年生を放置し、僕に話しかけてきた。
いくら興味なくとも同じ部活なんだから相手してやれよ。
「北斗七星とか?」
「You are shock!!」
「それは北斗神拳だろ」
「私も出来るかな」
そう言って「アタタタタタタ!オワタ!!」とか言ってる。「オワタ!」っていうあたりから無駄な知識をたくさん持ってるのがよくわかる。
「無理」
「先輩は何か見たいのとかあります?」
紫苑がそう聞くと、先輩が何か表みたいなのを持ってきた。
「これが夏に見れる星座」
「お〜、カオスですね」
「私はそうね、夏の大三角形は絶対見たいわ。ド定番だけど」
「いいですね。それ、私も見たいです」
紫苑がやや上を向いてぼーっとし始めた。
これは一人の世界に入った証拠。
あ、ほら、デレデレしてる。
「いいですね!私も見たいです!!」
さっきより力強く答えた。
また何かこれは企んでる。
「天体観測楽しみだね!」
「そうな」
「思ったより早く終わったし、カラオケ行かない?」
「いいよ、行こうか」
これはあれ。
水族館に行ったあとはフィレオフィッシュ食べたくなる感覚と同じ。
天体観測するとなると、天体観測を歌いたくなる。
結局、紫苑が一人で曲を入れまくって僕は1曲も歌わず、2時間が過ぎた。
聞いておくだけでも楽しい。
それに、紫苑がうますぎて歌う気も失せた。
「96点ぐらいまでなら頑張ればいけるよ!」
だそう。
張り切れば張り切るほど音外してるけど。
この哀れな美少女に、哀れ以外の欠点あるのかな、なんて絶望した。
人間は、不平等だ、
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