告白≠美少女 2
初詣。神社でお祈りをする。
夢は大きく!世界平和!
今私のいるこの小さな神社にはオーバーパワーなお願いをする。
「あ、白川」
あ、クリスマスパーティー主催の男の子。なんて「名前、覚えてません」と申告するような返事は避ける。
「やっほ〜、クリスマスパーティー以来だね」
「あ〜、その件は、ごめん」
「なんで謝るのさ。気にすることじゃないよ」
「だって、楽しくなかっただろ?俺が、その、告ったりして、気まずくして」
興味ないから気まずさなんてなかったけど、罪悪感を抱いてくれてるのは悪くない気分だった。
「全然!とは言えないけど、そうだね。でも、楽しくないことなんてなかったから、大丈夫だよ!私はいつでも楽しいし!」
もう一人の私が住み着いてるみたいにスラスラ嘘が出てきて自分も怖い。嘘つきのそれ。
「なら良かったわ。屋台でもまわらね?」
暇だから付き添うことにした。
「そういえば前言ってたこと、考えてきたわ」
「何?」
「ほら、好きなら付き合うってどういうことってやつ」
「あ〜〜!」
忘れてた。
「多分、独占欲だろうな。ほら、付き合ってたら、周りのやつも、手、出しにくくなるだろ。これは俺の人です。っていう証明。多分、それが欲しいから付き合う」
この男の子にしては考えてるな、と思った。絵に書いたようなサッカー部陽キャだから、何も考えず空っぽで生きてると勝手に思っていた。
ド偏見。
私、最低。
「そっか。それが君の、答えなんだね」
「そうだな。だから白川、好きなやつがいるなら付き合ったらいいと思う。誰か他に狙ってる人がいて先を越されたらほら、まずいだろ」
仮に瀬戸君が他の女の子と付き合ってるところを想像する。
私がそのデート中と出くわす。
距離がやたら近い。
私が前までいたポジションに知らない子がいる。
有象無象と。
何も考えてない、中身の薄っぺらい人間と。
虫唾が走った。我慢ならない。
「確かにそうかもね。助言ありがと。でも、私から告白することはないと思うから。頑張るね」
そのままその男の子と、神社内をぐるぐるした。人が溢れんばかりいて、息苦しかった。
「あれ、白川?」
聞き覚えのある声。久しぶりの声。一気にテンションをマックスにして振り返る。
「瀬戸君じゃん!久しぶり!あけおめ!」
小さく手を振る瀬戸君に声をかける。
「あけましておめでとう」
彼が小さく言う。
「お、瀬戸じゃん。あけおめ〜」
それだけ言って何かを悟ってか、男の子がどこかに歩いていった。意外と気が利く。今度名前ぐらい覚えようと思った。
「久しぶり、白川」
「そうだよね!あ、お参りした?」
「したよ」
「何お願いした?」
「んー、未来安泰?」
「あ、私も似てる。世界平和」
「僕達、大雑把だね」
「そうでもないよ。裏を返せば具体的」
「白川ってさ、そういうとこあるよな」
「どういうとこ?」
「なんか、未来に対して適当って言うか。今生きるのに精一杯、みたいな」
私の予想よりも私のことを知ってて、ビックリした。
「瀬戸君だって、そうでしょ」
「そうだよ」
「私達、似てるね」
「似てないよ」
そういう瀬戸君の顔は虚無で、本気でそう、思ってるのがわかる。
「たこ焼き食べようよ」
「いいよ。買ってくる」
そう言って買いに行った瀬戸君を、私は階段に座って待った。ちょっと高いところにあるから、空が見渡せた。
晴れ晴れしていて、キレイだった。
私の心もキレイに、なりそうなぐらいに。
「白川、これ」
「あ、タコだ」
タコが飛び出てる。大きな輪からいずれ外れる私みたい。
「ねえ、これ、あ~んってしてよ」
「嫌だよ」
「あ、世界平和叶わなくなった」
「世界平和って白川の心の中の話かよ!」
「当たり前じゃん」
こんな適当な会話をしながら爪楊枝で一つ突き刺し、食べる。
「熱いね」
「そう言いながら平然と食べる人初めて見た」
「コツは口の中全体に回して麻痺させることだよ」
「それって大丈夫なの?」
「舌が火傷して味わかんなくなる以外は無傷」
そう言いながらネギを噛む。噛むごとに中の熱いのが溢れ出てきて余計に舌が痛い。
「それ重症だよ」
「これ損傷」
しょうもないのに薄く笑う瀬戸君を見て、なんとなく「好きだな」なんて思う。ふとしたタイミングで急に感じるって言うけど、それは本当だと思う。
「そろそろ行こうか」
瀬戸君が立ち上がって歩いていくのに、私もついて行った。
「ねね、私、好きな人いるらしいんだけど、知ってる?」
なんとなく、聞いてみた。話題がなかったから出しただけ。
「多分、知ってるよ」
そう言う彼は顔を赤くして目をそらした。もしかして、気づいてるのかな。
私、君のこと好きなんだよ?
抱き締めたいぐらい、大好きなんだよ?
君となら、どこだって行ける。
この冷え切った現実も、私の心も溶かせる。
告白、してほしいんだよ?
それでもこれでも、やっぱり現実。瀬戸君と私はその後、無言で帰った。
瀬戸君は私のこと、どう思ってるんだろ。
私のこと、見てくれてるのかな。
どうでもいっか。
私が彼を好き。それ以外、要らない。
嘘偽りの愛なんて要らないから。
彼が私のことを本気で好きじゃない限り、私から何かをすることはないや。
告白、待ってます。
無言の中、彼の背中にそう告げた。
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