第2章5話 黒と青の2人の居場所
「え?」
私じゃ頼りないの?なんで?分からない?なんで突き放されなきゃ行けないの?
「もう無理、青と一緒のチームには入れない」
待って待って待って待って!お願い!行かないで!もっと頑張るから!赤里の右腕になるためにもっと努力するから!
「お願い...見捨てないで!何でもするから!頑張るから!」
「ううん...私は見捨ててないよ、ただついていけなくなっただけ、あなたの隣は私じゃ釣り合わない、お姫様に恋した農民くらい不相応な2人なの」
なにそれ...私が弱いからじゃないの?私が強いから?なんで?
「なんで...?」
「もう私じゃ追いつけない...私は完全にお荷物なの」
「そんなことないよ...赤里が誰よりも頑張っての、私わかってるよ、もっと頑張ろうよ!2人なら行けるよ!」
「分かってるわけないだろ」
「え?」
「お前が!私の苦労を!分かるわけ無いだろ!」
赤里は私の首元を掴んで叫ぶ、その目には目頭いっぱいに貯められた涙が溢れ、私に憎悪の目を向けていた。
「知ってる!?青が活躍してる度に私が言われてる言葉、赤青バスターズのパッとしてない方だよ!?私の方が先に初めて、寝る間も惜しんで練習してるのに...なんで...貴方だけなの...私はあなたの引き立て役じゃない!なのに...なのに...勝てないの...『才能』に勝てないの...」
一言言う度に声が弱々しくなっていく赤里、そして最後に私にとってトラウマにもなる最悪の一言を言い放った。
「貴方となんか...組まなきゃよかった...そもそも...出会わなきゃ...良かった...」
その言葉を聞いた時、私の中の何かが途切れた...
「あっ今のは違...」
「そっかそうだよね...私たち出会わなきゃこんなことにもならなのにね...」
「待って!お願い!今のは!」
「さよなら赤里」
赤里の言葉なんてあの時はもう聞きたくなかった。私はその身一つで走り出した。土砂降りの雨の中、大声で...泣きながら...
視界がやがて真っ白に染まり思わず目を瞑ってしまう。
そしてもう一度目を開けるとそこは...リビングのソファーの上だった。
「はぁ...夢か...」
それも嫌な嫌な昔の悪夢、幼なじみでゲーム好き同士の私たちは当然と言わんばかりに大学時代からプロゲーマーチームとして色々活動していた。でも...強く輝いたのは私だけだった。きっと私には『才能』がある、でもそれがすごく辛い。今でもどうすればあれを回避出来たのかが分からない、私が力をセーブしていていれば良かったのだろうか、いやそうなれば今より話題にも上がらず底辺プロチームのひとつとしか認識されなかっただろうしそんなんじゃ食っていけてなかった。
「やっぱり出会わなきゃ良かったんだね...私たち」
チームを組まなければ赤里は私にコンプレックスを抱くことも無かったし、私も裏切られる事は無かった。
「仲良くなったってどうせ私は見捨てられる、そんなんだったらいっその事仲良くならない方がいい...」
正直黒にキツく当たるのは心にクるものがある、あの子は純粋でめちゃくちゃいい子だ。本来、こんなところにくるべき人では無い...
「ごめんなさい...ごめんなさい...」
ここで呟いたって誰にも聞こえない、無意味な許しを私は乞う...きっとしばらくすれば彼女も私を置いていなくなってしまうだろう。また...ひとりぼっちだ...
〜***〜
「そんな過去が...」
「そっ、だから別にあなたが特別嫌われてるんじゃないのよね」
話を聞くと、どうやら青は3年前まで赤青バスターズって言うコンビを組んでFPS界隈で色々活動していたらしい
ならあのプロ並みの腕前にも納得が行く...いや話を聞く限りその腕前は『才能』によるところが大きいらしい。
この前テレビで見た『ギフテッド』ってやつなんだろう多分だけど。普通の人にはない恐ろしい才能の持ち主、神からの贈り物、青にはそれがあった、しかしそれ故に悲劇は起きた。
相方の赤里一方的に別れ話をされ、そのショックで青はその場から逃げ出し、途方に暮れていたところを巴に拾われたらしい。
「彼女は恐れてるの、また仲良くなって捨てられることを、また一人ぼっちなるのを」
「そうなるぐらいなら自分から嫌われる...ってこと?」
「そーいうことになるね」
思ったより、青の問題は根深いようだ。少なくとも私がどうこう言って説得できるものでは無い気はする...でも
「ねぇ...巴聞きたいことがあるんだけど」
「え?」
わたしは彼女を押し出す勢いで迫る、巴は顔を紅潮させて顔を背ける。
「え///ちょっと、黒、確かに私は貴方とならやぶさかでは無いけど立場ってものがあるのよ、だからそう言うのはどっちかが今の仕事降りてからで」
「青以外にウィークエンドが上手いVっている?」
「......いるわよ、スカポンタヌキ」
なんで私最後罵倒された?まあいいか、私に出来るか分からないけど、青を助ける為にも頑張りますか!
〜***〜
「それじゃ!行ってくるね!」
「さっさと行けよ」
「OK!」
黒は私の皮肉に元気に返すとそのまま勢いよく外へ出ていく、これで5日目だ
最近、黒は毎日午前6時にどこかへ向かっていき、午後8時ぐらいになるまで帰ってこない、
「コラボ配信の時にそれとなく聞こうとしてもなあなあではぐらかされるし一体何なんだ?...」
いや何をしているとかでは無い、シンプルに私に愛想が尽きたのだろう、まあ当たり前のことだ。嫌われる為にやっていたのだから
「とはいえ少し寂しいな」
今までの同居人には次の日には消えていた。一週間以上残っていたのなんて黒ぐらいだ。またそんなあいつにもとうとう見放された訳だが
「今までよりきついな...なんか...」
やっぱり一緒にいればいるほど別れる時は悲しくなってくる。でもしょうがない、いつまでもこうしていたらもっと悲しくなってくる。結局みんな離れて行ってしまう運命なんだ...だったら早い方がいい...
「これまでもそうしてきたんだから...今更...悔やむなよ、私」
とりあえず気を紛らわすために編集をしよう、地味に溜まって居たはずだ...
私は椅子に座りパソコンに目を向けてキーボードを叩き、編集を始める。
「寂しいな...」
柄にもないことを...ぽつりと呟いてしまった...
〜***〜
もうダメだ...いや諦めるな!まだ!まだ!
「うぉぉぉぉおおおおお!」
「行け!頑張るんよ!」
「これでぇぇえええええ!」
私は最後の1人を倒す
「よっしゃあああああああああぁぁぁ!」
「おめっとさん!これで試験は終了!ホント黒はよくやったんよ!」
「大変だった...いくらタイマンのみとはいえ100人抜きとは...」
試験が終わった...今思い出してもかなり辛い特訓だった...
私はこの5日間私は巴から紹介された人の元で猛特訓をしていた。その人が私の目の前にいる身長と太ももがでかい少女
講義が始まる前から事務所へ赴き特訓特訓猛特訓の嵐、そして最後に大多羅 ぼっち名物100人抜きチャレンジに参加させられそれを何とかこなしきった。
「いやあ最初にお前さんが来た時はな、事務所に押されまくりのご贔屓Vがわざわざ冷やかしかと思ったんよ」
「うわかなり辛辣、まあでもそう思うのは仕方ない気はしますねココ最近毎日てらすとコラボしてるのにわざわざ自分に教えを乞いに言ってるんですもん」
「でも違ったんよ、お前さんは私の特訓に弱音を吐きまくったけど、それでも諦めることはしなかった、お前さんは本気だと思ったんよそこで」
「橙さん...」
「今のお前さんはほんとに強い、とはいえあまてにはまだまだ届かんよ、1回で勝てるとは思ったらダメなんよ、絶対に諦めなければ勝てるチャンスできるんよ、もう一度言うぞ諦めらないことが大事やんね」
「はい!」
そうだ、諦めなければ勝てるてか勝つしかない
「私の...そして青の...居場所を...作るんだ!」
〜***〜
午後8時、動画の編集をあらかた終えた私はベットに横たわる、そろそろ黒が帰ってくる時間だ。あいつが帰ってきたら飯を食って配信をして......って私がまるであいつ基準で過ごしてるたみたいじゃねぇか!そんなわけが無い...いずれは別れるんだ...あいつに振り回されてたまるか...
ドンドンドン!
扉が叩く音がする...黒が帰ってきた!って喜んじゃダメだ!あいつに言ってやるんだ!かかって来い黒!
「ただいまー」
「お帰り!黒!私と勝負しろ!!!!」
「え?」
黒は素っ頓狂な声を出して困惑する、それはそうだ、私だって今こんなこと決めた私にちょっと驚いてるぐらいなのにあいつが驚かないはずが無い。
「これからウィークエンドでタイマン勝負だ!お前が負けたらここを出ていってもらう!これはお前にとっても悪いことでは無いはずだ!」
かなり強め語気で言い放つ、これはあいつにとって好条件の筈だ、私にぼろ負けするだけでいい、FPS初心者の黒が私に勝てるわけが無い、負けてしまったので出ていきます、巴への体のいいいい訳にもなるはず。
「さあ!さっさと了承しろ!そして始めるぞ!私達の最初で最後の戦いを!」
「え、やだけど」
「うんうんだよなそれじゃ行くか...って?」
今こいつやだって言った?
「やだって...なんで!?お前も私の相手にするのはもう嫌だろ?最近はずっとここ出てすぐどっかに行ってるじゃないか!」
「それはちょっと色々やってたんだよ」
「色々ってなんだよ!?」
「それは...言えないけど」
「やっぱ言えないんじゃん!」
「でも!私は退去なんてしないよ!」
「ぐぅ...このよくわからん奴め...いいから戦え!そして出ていけ!」
「断る...そんなに出ていって欲しんだったら...」
「欲しんだったらなんだよ」
「私と勝負だ!ウィークエンドで!」
「今その話をしてたんだろうが!」
勝負を蹴って勝負を仕掛けるという意味のわからないことを行った黒に私も思わずツッコミを入れてしまう。ただ私からしたらこれを断る理由もない、いいぜやってやろうじゃないか
〜***〜
3...2...1...スタート!
開戦の合図とともに私は猛スピードで岩陰に隠れ、ショットガンを構える
「へぇー使用キャラはウサカメットか、どうせカメモードで耐えながら一撃を狙うんでしょ?」
「それはどうでしょう?」
青の問いかけはほぼ正解だったのだが私はそれを悟られないようにポーカーフェイスを心がける、私の使うウサカメットは足の早いウサギモードと体力が増えるカメモードに切り替えることが出来る、最初の行動はブラフ、私の作戦はウサギで近づいてヘッショをきめる、失敗したらカメになって耐えながら次の機会を伺う作戦だ、成功率はどれぐらいかは分からないけど成功させられれば行ける!
そう考えているとちょうど目の前に青が向かって来る。
今がチャンスだ!
「こい!」
「もう終わってる」
ピチューン!
私は威勢よく声を上げる、しかし次の瞬間には私はヘッショキルされていた。え?何事?何が起こった?
いつの間にか青は私の後ろにいたし、今何が起こったんだ?
「今何が起こったのかわかってない顔してるね」
「そりゃぁ あそうでしょ突然ヘッショキルされたと思ったらゲーム内でも現実でも後ろにいるんだから、ほんとにどうやったんですか」
「あなた基本前にいる私しか見てなかったでしょ」
「そりゃあ目の前にいればね」
「はいもうダメ」
「え!?」
「私の使ってるキャラ確認した?」
「え?」
そういえばしていなかった気がする、私はなんのキャラを使ってるのか青のキャラを見る
「あ!こいつって!?」
「そっ私が使ってるのはヤギセブンス、石を使ってデコイを作れるやっ」
「私が倒したのはデコイだったってことか...」
「この調子ほんとにあと30回以内で私に勝てるのかな?」
「勝つさ...少なくとも自信はある」
「あっそ、少なくとも私はあなたに勝たせる気はないよ」
私は戦う前に一つだけハンデを設けてもらった。30回中1回でも勝てば勝ちになるというルールである。そう超卑怯な手段だ、だがそんなこと青相手に言ってられないどんな卑怯な手段でもやるしかない
〜2回目〜
「先手必勝いちばん強し!」
私はウサカメットの超スピードで回り込み一撃で仕留めようとする。橙さんにこれはウサカメットの基本戦術の1つだから覚えとけと教えてもらったものだ。
「遅い!」
ピチューン!
青の後ろについた瞬間急に振り返った青にヘッショを決められる
「回り込みヘッショはショットガンウサカメットの基本戦術なんだから分からんはずないでしょ」
「ですよねー」
やっぱりかなりの強敵だ、だが
「私も諦めたくないんでねあと28回中に青を倒させてもらうさ」
「やってみなダイジェストで仕留めてやる」
〜3回目〜
私はウサギ状態でタイマン場の灯台に登ろうとする
「攻めがダメなら逃げだ、とりあえず塔に」
「考えバレバレ、あと逃げるなら亀にしとけ」
「え?」
何故か先回りされた私は青に一撃で処される
〜6回目〜
私は武器をアサルトライフルに変更、亀で耐えながらアサルトでチクチクしていこうという方針にしたのだが...
「あああああああああああ忘れてた!この人1番そういうの効かない人じゃん!」
「私の代名詞のウルフステップを忘れるとか何かある意味負けた気分だよ」
「んじゃ私の勝ちに!」
「なりません!」
普通に近づかれてから1回ヘッショ、前までならここで一撃KO、しかし今回は違う、今回は亀状態なので一撃は耐える、そしてここから反撃に出ようとしたが、すぐ回り込まれもう一撃叩き込まれる。ただ一撃アウトを避けられただけだった...
〜12回目〜
あれから6回の戦いを繰り返し、私は青のショットガン戦術の対処法を完全に理解した、青はショットガンを撃つ時必ず地面に着いてから撃っている、空中で打つことは絶対にない、例えそれがどんなに有利な状況であっても
「何でかわかんないけど利用しない手はない!」
必ず相手との一定の高さを保ちながら動く、そうすれば必然的に青は空中に動かざる負えなくなる。
もちろん空中で青はウルフステップなんて出来ないしショットガンも使えないはずこれなら勝てる!さあ対戦開始...
「え?」
これで勝てるそう思っていたのだが青が持っていた武器は、まさかの ア サ ル ト ラ イ フ ル
なんで!?さっきまでショットガン使ってたじゃん!なんでなの!?おかしいよ...イカれてるよ!
ちらっと隣の青を見たらこちらをドヤ顔で見てくる。してやったりみたいな顔をしてくる、最悪だ、この人。
結局突然の戦術変化に対応しきれずに私は蜂の巣にされてしまった。
〜24回目〜
やばいやばいやばいそろそろ後が無くなってきた...なのに一撃すら入れられてない...ほんとに勝てるのかこれ...もう諦めた方が...いや!めげちゃいけないやるんだ!
私はショットガンを構えて待機する。
「ねぇひとつ聞きたいんだけど」
「何?」
青は似合わないウルフカットの髪を弄りながら私に質問をしてくる
「もう24回目だよ?なんで諦めないの?ちょっとでもチャンスがあるならわかるけど現に一撃もあったってないんだよ?なんでそんな目をして諦めないでいられるの?」
「諦めそうになってるよ、何回も何回も、全然勝てないどころが一撃も当てられないし、避けられそうな素振りすらない、もう正直全部投げだしたいよ、でもそれをして1番後悔するのは私だから、諦めたくない」
「あっそ」
青は興味無いような返答をしてくる。自分から聞いといて何だその態度はと言いたいところだが今は真剣勝負、そういうゴタゴタはなしにしよう。次こそ勝ってやる!
「私は負けない...諦める訳には行かない!」
尚、戦闘開始から1分も満たないうちにボコボコにされた。泣きそう
〜30回目〜
「とうとう最後か...まさかここまで1回も勝てないなんてね、まっ最後に賭けますか」
「なんで諦めてないの...」
何故だ...何故諦めない...もう29回だぞ?もう29回連続でボコボコにし続けているんだぞ?いくら30回まではチャンスはあるとはいえ普通もう勝てないんだって諦めるだろ、なのになんでこの人は勝てる気でいるんだ...
諦めてよ...出会ってまだ2週間も経ってないようなお前が私なんかと暮らすために必死になれるんだよ...
「もういい...散々ボコボコにしても諦めやしない...そんなわからず屋も...これで終わりなんだから...」
私はショットガンを持ち黒に突きつける。
「最後の戦いだ‼️負けたらきっちり覚悟を決めて出てって貰う!」
私は...黒に向かってそう言い放った
「ああ!これで勝って全部チャラにしてやるよ」
「はん!やってみろ」
私は黒の荒唐無稽な話を鼻で笑い、吐き捨てる
「さあ...その顔を真っ青にしてやるよ」
〜***〜
3...2...1...スタート!
開戦の号令がなり私は速攻でで亀モードに切り替え、その場に立ち止まる。ただ青はそんな私とは対照的にこちらへと走ってくる。おそらくあれを打ったところで当たらないだったらもう...
「青...私は本当はこの手を使いたくなかった。でもこれぐらいしか勝つ手段もないから...使います、師匠」
「何?急に...」
「えい!」
私は下にとあるものを投げつける、そしてその1秒後
私は...空へと飛び上がる
「んな!?ハイジャンプグレネード!?」
ハイジャンプグレネード...通常のグレネードのように爆発でダメージを与える訳ではなく爆発した時その近く居たものを上向きに吹き飛ばしそいつらに落下耐性をつけるという特殊なグレネード、普通に使う分には遠距離移動をメインとしているため、タイマンで使うことはまず無い、せいぜい一瞬でも逃げたい時ぐらいだろう。だからこそ今回のルールでもサブアイテムとして携帯を許可されていたが両方今まで使っていなかった。じゃあなんで今になってそんな物を私が使ったのか、それには師匠の橙さんが関係する。今からやる必殺技は橙さん直伝の大技なのだ、てか使えば確実に青に橙さんのところで修行してたことがバレる、それじゃあ青を倒すためにいっぱい練習したことがバレてしまう、それじゃダメなのだ、あくまで青を倒せる存在が近くにいるってことを示さないと、青の隣に並べる存在がいるって思ってもらわないと、意味が無い
「でも...負けるよりは...」
「さっきから何をぽつぽつと高く飛んだところで!結局降りたら1発アウトなんだよ!」
「残念!そうはいかない!」
私が今回選んだ武器は、スナイパーライフル、超遠距離がぶっぱなす武器だ、私は空中でスナイパーを構える。
「んな!?それって!」
「そう!空中からならウルフステップで避けられなからね、さあ!食らってくたばれ‼️上空からの超射撃!橙々継承!天空狙撃弾!」
「それは大多羅ぼっちの!?ええい!関係ない!撃つぎりぎりの瞬間ならもうショットガンの射程だ!そうなったら一撃で仕留めてやる!」
「「これで終わりだ!」」
2人の声が重なる、途端、バーン!と激しい銃声が鳴り響き...
ピチューン!
2人の画面には一撃で倒れ伏せるヤギセブンスの姿が写っていた...そう、あの捨て身の一撃で黒は青を下したのだ。
「そんな...私が...負けた...」
「なんとか...勝ったー!!!!」
私の叫びが部屋を木霊する...でも...練習してしまったことがバレてしまった...対等に並んでくれる存在を求めてる青にとって私はその対象ではなくなってしまった...結局これも失敗したのか...
「ねぇ...」
青が机に膝を突きながら私の方を向き、話しかけてくる
「何?」
「さっきの技って大多羅ぼっちの...」
「うん...そうここら辺ずっと橙さんの元で特訓してたの...」
「じゃあ最近午前6時から出て午後8時まで居なかったのは...」
「そう、講義の時間以外は全部特訓してたから...青のこと...巴から教えて貰って...いてもたってもいられなくて...」
「なんでそこまで......」
「一緒だから」
「え?」
「私も、大好きな姉から突き放された、だから分かる、信じてた人に裏切られる気持ちが、だから私なら、青の居場所になれると思った。あわよくば青を救って私も救われたいと思った」
こんなこと言ったってダメだな、私は結局対等になれる存在じゃない...彼女の居場所になれなかった。
「はっ!本当に嫌われてたら良かったのに練習なんて馬鹿馬鹿しい......それに勝手に私に自己投影して......ホント気持ち......」
青もその話を聞いてからきつめな態度が戻ってくる、やっぱり...
「いや、そういうのはもう辞める...」
「え?」
次の瞬間、青から大粒の涙がこぼれ始める。
「良かったあああ!嫌われたわけじゃ無かったんだ...またひとりぼっちにならなくて良いんだ!」
青は安堵しつつ私に抱きついてくる。
「え!?ちょっ!?え!?」
私は急に抱きつかれて混乱する...あれ...ここって私がより拒絶される場面じゃ?
「いいの?私は多分隣で並び立てないよ?」
「いいよ、私は並び立って欲しいんじゃなくてただ一緒に居て欲しかっただけなんだから......私の為にこんなに必死になってくれるんだったら......もうそれで十分なの、多分そこが私の居場所」
「そんなもんなのか......」
「そんなもんだよ......」
「そんなもんなのね......」
身体中に安堵の感情が染み渡る...私の体が休まっていくのを感じる。お疲れ様...私...
〜***〜
「ってな感じに治まったよ」
{へぇ〜あの青を...倒したと}
「三十回もやってやっと1回だけどね」
{まあそれでも凄い事だよ}
「まあそれで結局成功してる訳だし、なんの問題もないか......いやあったわ問題」
{問題?}
「うん......そろそろ離れてくれない?青!」
「えーやだー!」
青は今私の身体にずっと抱きついて来てる。巴と少し電話すると言った瞬間私に抱きついて来た。
「もー今6月だよ?流石に暑い...」
「やだ......今マーキングしてるんだもん」
「マーキング?」
「そう、他の女と会話してる時でも黒が何時でも私の存在を意識できるように...」
「えぇ......そんな重たいことしなくても......」
「なにいってるのさ、そもそも黒が私と一緒に居たいって言ったんでしょ、私はそのお手伝いをしてるだけだよ〜」
青はそう言いながら私の胸とお腹の間に顔をうずくめる......
{あははははwww、すっかり懐かれてるねw}
「んも〜笑い事じゃないよ〜」
青の荒い吐息が服の間をすり抜けてくる、流石にちょっと気持ち悪い
「んじゃ〜切るよ〜」
{はいはーい}
ガチャ、ツーツー
「ふぅ、さて青さん...通話も終わったし...そろそろ離れてくれない?」
「ヤダ」
「は?」
「私はもう少しこの未知の世界を探索したい」
「するな!離れろ!」
「や〜だ〜!」
「は〜な〜れ〜ろ〜!」
私はさらにうずくまろうとする青を必死に引き離そうするものの全く引き離せない......
「うぉおおお!ここが私の居場所ー!」
「居場所ってそー言う意味じゃなーい!」
こんなやり取りすらなんとなく楽しく思えてくる、多分青を救って、私の心も救われたんだ、ここが新しい私の居場所なんだと、青の吐息を浴びながら考えるのだった......
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