第2章4話 新たな新居と青い狼
「これが私の...悲しみなんだよ!」
前回、白の本音を聞いた私は怒りのままに家を飛び出した。もうあんなやつと話したくもない...この世でたった2人の双子なのに......あんな態度......あいつにとって私は......全然特別でも......なんでもないんだ......
〜***〜
プルるるップルるるッ
私はキャリーケース片手にひとりぼっちで静かな住宅地を歩く、そしてその寂しさを紛らわせるように巴に電話をかける。とは言っても元々かけるつもりだったが
ガチャッ
{じゃあ結局家出してきた訳ね}
「うん...白は...最後まで白々しかった...名前にピッタリだよ...」
{心中はお察しするわ}
「それより、私はこれからどこに住むの?それは聞いてないんだけど」
{ああそれに関して説明したいからとりあえず大学近くのコンビニに来てくれないかしら?私そこら辺に居るの}
「わかった。それじゃあ一回切るね」
{はーい}
ガチャッツーツー
電話が切れる、辺りが一気に静まったように感じる、真っ暗な夜にひとりぼっちで居る寂しさがズキズキと私の心を突き刺してくる。
「お姉ちゃんのバカ」
早く巴と合流しよう、そうすればこんな寂しさなんてきっと吹き飛ぶ
〜***〜
真っ暗な住宅街にぼんやりとした明かりが浮かび上がる。
「コンビニ着いた...」
正直今までの人生で1番、コンビニ着いて嬉しかったかも知れない。
「おっ来た来た」
「巴...」
ムギュっ
「ふぇ...」
私は思わず巴に抱きつく、ずっと心細くて人肌恋しかったのだ...
「しばらくこうしてていい?」
「うん、良いよ」
心が落ち着く、視界がぼやける、そうか...さっきいっぱい泣いたと思ったんだけどな...
〜***〜
「落ち着いた?」
「うん」
私が落ち着いたのを確認した巴は安堵の表情をしている。
「それじゃあこれから住む場所行こっか」
「え?今から」
「うん、途中で色々は説明するから」
「分かった...」
私は巴に連れられる形で歩いていく。
「結局私はどこに住むの?」
「うーん...分かりやすく言うと私の所有してるマンションだね、リビング、個人の部屋の広さ共にまんまあの楽屋ぐらいかな」
「結構広いね、少なくとも私の部屋くらいはある」
「ごめんね、ほんとは私の家に住まわせたいんだけど、あそこは会社だし、ひとりのVを特別扱いみたいなことは出来なくて」
「いやいいよお部屋が貰えるだけで十分、それより1人のVを特別扱い出来ないっていうのは...」
「そう、そのマンションは基本2人1組でご部屋あってね、貴方みたいに事情があってここで暮らしたいって人が集まってる。」
「じゃあつまり...」
「そう!配信者達のシェアハウスって訳!」
「そうなったらもちろん私の部屋にも」
「うん、同居人がいるよ」
「つかぬ事をお聞きしますが...それって...」
「やっば気になる?」
「そりゃあ」
「しょうがないなぁ、今彼女が配信してるし見せながら教えてあげよう、同居人は、この子だよ!」
そう言うと巴は私に私の同居人の配信を見せてくる、そこに写っていたのは...
{あっスパチャ来た...え?挨拶聞きたい?良いよ...こんばんガウルル!蒼狼てらすだよ!}
「え......てらす!?」
蒼狼てらす、かつてこの日本から滅びた化け日本狼と人間のハーフで社会経験の一環として配信を始めたという設定のV、キュートでロリロリした見た目と人懐っこい性格にたまに飛び出てくる厨二病発言がまた愛おしい、まるでかわいい娘のお転婆を眺めているような、なんとも言えない感覚に母性を刺激される。メインはウィークエンドというゲームの配信なのだが、ゲームのことはからっきしな私はそちらを見るのには少し抵抗があり、雑談配信しか見れていない、だがそんな私でさえ虜にできてしまっているのだからてらすは本当にすごいのだ。
「そんな...そんな大物と一緒に暮らしていいんですか?こんなV始めたばっかの初心者が?」
「どっちも大事な私の友達なのは変わりないんだから、別に有名とか有名じゃないとか、玄人とか初心者とか関係ないの!」
「そっかならいいのかな?」
「まあ...基本はいいんだけど...」
「え?」
やっぱりなんか問題が?
「うーんあの子ね...ちょっと...」
「ん?」
「こう...イメージが崩れるというか...」
「そこら辺は大丈夫だよ!別に本物のロリがやってる訳じゃないってのもさすがにわかってるし、たとえ4、50代の人がやってても幻滅しない自信あるから」
「いやそう言うことじゃないんだけど...まああれは直接見せた方が早いか...」
「?」
そんなにイメージが崩れるのか...実は男とか?それとも人間以外の何か?いやさすがにそれはないかw
まあどんな人が来ても大丈夫な気がするけどね
「着いたよ」
「おけ!」
「一応私が扉を開けるよ」
「いやいや、これから同居するんだから少しでも印象いい方がいいんだから!」
私が扉を開けようとする。
{それじゃあ今日はここまでばいばいガウるる〜!}
ちょうど配信も終わったらしい、ならもう心残りは無い!新しい生活のために私は扉を開ける、すると...
「消えろ!アバズレクソバード!」
「え?」
扉開けたを私を出迎えていたのはでっかい枕だった。
でっかい枕は私の顔に勢い良くぶつかる。
「え?」
私は唐突な出来事に呆然とするしかない...
「あー!やっぱりまた...」
「また!?」
巴の呆れ気味に頭を抱える。てかそれより
「まあいいか、黒、彼女がチャンネル登録者190万人の大人気VTuber、蒼狼てらすこと、本名、
「呼ぶな!」
中学2年生くらいの身長に背伸びしたようなウルフカットと狼柄の服装、見た目の方向性こと違えど、私こそてらすと言わんばかりのその風貌に私は感嘆さえ覚えた...
「よろしくお願いします!青ちゃん!」
「バガにしてんのか!?呼ぶなっつったよな!?」
「まあまあそう殺気を立たないで青ちゃん」
「だから呼ぶなっての!」
これは...また随分と強烈な性格をしている...
だが負けていられない、私ももうここ以外住むとこが無いのだ。
「ほら2人とも仲良く握手!」
「ちっ」
「うん!」
グ、ググググッッッッ
「手!痛い!痛い!痛い!」
「そのまま骨折でもしろ!」
青ちゃんは握った手をグリグリして痛めつけてくる。
「ごめ、ごめんなさい!ちょっめっちゃ痛いから一旦離して!」
「ふん!」
そう言うと青ちゃんは乱暴に私の手を振り払う
「ふーふーふー」
「もう!青ちゃん!こういうことやめてって!」
「知らない!とにかく私はこいつと同居する気はない!」
「はぁ〜そういうこと言うならしょうがないな...あんま気は乗らないけど...強制退去、してもらうかな...」
「うっそれは卑怯だろ!」
「卑怯でもなんでもありません!嫌なら仲良くすること!とりあえずあなた達は明日から1週間、毎日配信毎日コラボしてもらいます」
「「は!?」」
なんかサラッとすごいこと言い出したぞ!?
「え...青狼てらすとコラボ?」
「そっ例の大会も近いし、コラボ内容は雑談かウィークエンドか」
「「ウィークエンド!?」」
「ってバトロ」
「なんでわざわざそれなんだよ!」
遮られた...
「あら、あなた得意じゃない?」
「でも...こんなfpsとかやったことなさそうな奴と?無理に決まってる!」
「あーもう!それくらい何とかなるから!」
「無理だって!」
「それじゃあ私は家に帰るからおやすみ!」
「あ!逃げるな!...っち」
巴は物凄い勢いで扉を閉めて帰っていく。
取り残された青ちゃんはイラつきながら私の方をみて舌打ちを打ってくる、怖いからやめて...
「あの...えっと...」
「何」
「あ...あの...」
「だから何」
「とりあえず今日はもう寝たいんで寝室に案内してください」
もっかい枕投げられた...なんで...
〜***〜
とりあえずここに来てから2日がたった.
はっきり言って今の私はめちゃくちゃ疲れている。
何故って?それはこれからの配信を見れば分かります。
「こんばんガウるる〜蒼狼てらすだよ!」
「こくばんわ〜黒羽こくはだよ〜」
私は挨拶の後ちらっと横にいる青の方を見ると青ちゃんがギロっとこちらを睨み返す、怖い、さっきの萌え声がこの子から出てたのが全然信じられない。
「それじゃあ初っ端から、じゅーだいはっぴょー!今日から1週間くらい!このこくはちゃんとコラボすることが決定しましたー!」
その一言を皮切れにコメント欄が一気に盛り上がる
[うぉおおおお!]
[初っ端から1週間コラボは凄すぎる!]
[楽しみ!]
[『退屈から君に救われに来たんだ』こくはちゃん!コラボおめでとう!お祝いにこれを!(5000円)]
「ふへぇ!?そ、そんなに?ありがとうございます!」
「おめでとぉ〜!」
わぁ、開幕から5000円も...凄いや...
でも分かる...私も過去ははくあに初手赤スパ投げてた、まああの後赤スパは1配信1回だけに制限されたけど、とはいえ私はもう赤スパを投げることだってないだろう...あんな盛大に喧嘩したんだ。白だって...
スっ
姉のことを思い出し、少し気分沈む、すると青がいつの間に書いたのか私の方へ紙を手渡してくる。
もしかして励ましの言葉が書かれていたり
「これは私とコラボしたからてにはいったスパチャだ、ちょうしにのるなよあと分け前よこせ3割でいい」
もうやだよ、怖いよ、牽制の手紙を渡されたってどうすればいいのさ、あと分け前3割は取りすぎじゃ?
「それじゃあそろそろやろっか」
「あっうん!そうだね」
一瞬反応が遅れた、とりあえず恐る恐る隣を見てみると、青は明らかにイラついていた。怖すぎる
「因みに何始めるかわかってるしょ?」
「ウィークエンドってゲームだよね?」
「そそ、武器を何も持たない状態から武器を集めて行きながら同じく降り立った敵を倒していって最後の一人、チーム戦なら最後の1人になるまで戦うって感じのゲーム」
「要はバトロワか」
「そういうこと、ただ他のバトロワゲーとは多々違うところがあるからそこら辺はおいおいやっていこうね!」
「うん!よろしく!」
〜***〜
「敵だ!オラ!」
「あっそいつは待って!」
「浮いた!?」
突然宙を浮きはじめた敵にライフルを連射されあっけなくダウンさせられる。
「ああああ!」
「もぉ〜だからさっき止めたじゃん!」
「え!?なんで浮いたの!?」
「ほらさっき言ったじゃん、このゲーム戦う前にキャラ選択が出来て、そのキャラによって最初に使える能力が違うって、あいつはソンゴクシーって言ってジェットパックで飛べるの」
「あ〜確かにそんなの居たな〜」
「もぉ〜」
青は私に解説しながら敵へと向かっていく。
「いい?まずこう言う敵はね〜」
てらす特有ののんびりとした喋りのまま青ちゃんは自分のキャラを敵へと向かわせていく。
「てらす!?そのまま行ったら倒されちゃうよ!?」
私はその行動驚き、思わず声を掛ける、しかし
[てらすタイムきた!]
[気持ちいい無双をみせてくれ!]
[『ただの一般オリジン』うおおおおぉ!頑張れてらす!(10000円)]
私の動揺とは打って変わってコメント欄の盛り上がりは何倍にも膨れ上がっている。
これから一体...何が起こると言うんだ...
「まず銃弾が当たらないようにジグザグに動くの、ここでのポイントは曲がるテンポを均一にすることで進む方向は一直線にすること、それだけで相手はだいぶ当てずらくなる」
青はwキーを押しっぱにしながらマウスのみを超高速で動かす...すると、青の操作してるキャラはジグザグな動きではなく一直線に突っ走ってるように見える
「ええ!?なにこれ...」
「バグ」
「え?」
「なんかね、これやると直線に動いてるって判断されるんだよね、恐らくフレームレートが追いつかずに起こってる現象だと思う。だからめっちゃ性能たけえパソコンにはちゃんとジグザグに動いてるように見えるよ、これを私はウルフステップって呼んでる」
どことなく厨二病感のある名前、てらすちゃんの厨二ネーム、これを言う時ってどんな顔してんのかなって思って横見たら、めっちゃドヤ顔で言っていた、もしかして素でかっこいいって思ってるかな?だとしたら可愛いなと思う。
「でもこのパソコンのフレームレート確か240くらいだよ?それがかくつくレベルで早く動いてるって訳?」
「そうなる」
「わお」
サラッとそんなことをしながら青はサクッと相手を殺す、
ゲームの腕前はほんとに上手いらしい。昔プロだったりしたのかな...それに青もどことなくドヤ顔である、こういうとこはVと同じて可愛いな〜
スっ
前言撤回またもや私の方に紙が手渡される、怖いなぁ〜次はなんだ?失敗へのお説教かな?
「1回目はゆるそう失敗は誰にでもある、2回目は許さん噛みころしてやる」
1回分優しいかなって思ったがよく考えたら噛み殺すつもりなので全然優しくないなと思った...
〜***〜
「ってな感じでめちゃくちゃ大変ですはい」
大学の近くにあるいつものカフェで私は巴に現状報告を行っていた。
「かなりお疲れのようねぇー」
「本当に疲れてるよ、プレミしたら私の脇腹つまんでくるし!寝る時は二段ベッド使わせて貰えないし!お風呂は必ず後に入らされるし、あっでもご飯はなんにも文句なく食べてくれる、まあ美味しい?とか聞いてもなんにも答えてくれないけど」
「相当不満が詰まってるねぇ」
「いくら同居したくないとはいえあんなに突っかかることないと思うんだけど、まるでわざと嫌われたいみたいに」
「そりゃあそうだろうねぇ、嫌われたくてやってるんだからさ彼女は」
「え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます