第2章3話 白と黒はすれ違う
「う''ー!あ''ー!う''ー!う''ー!!!」
「 う る さ ー い ! ! 」
「う?」
「いつまで幼児退行してんの白姉さん!なんか急に私の部屋入ってきたと思ったらうーうーうー呻き出して!普通に姉として恥ずかしくないの?」
先程、初めてのお給料で買った本を大事に大事に読んでいたところ、急に白姉さんが乗り込んで来た。
しかもその場でうーうー喚き始めるんだから驚くところだよね。
「だって...だって...」
「義妹さん許してあげてください...」
「ええでも...ん?義妹?」
「だってさ〜」
「白姉さんその流れで回想行く?」
〜10分前〜
「黒羽...」
「確か黒ちゃんのアカウントなんでしょ」
「うん...」
「まあたまたま名前が被っただけって言うのは?」
「名前はそうかも知れない、でも...この曲はそうはいかないよ!」
真っ黒な悲しみは明らかに真っ白な喜びのアレンジだ。
それも音楽初心者の私がわかるレベルの...
「こんな曲を作れるのは私達の他に1人しかいない...黒しか...」
「でもそうしたらあの子はなんでそんなことをって話になるよ?」
「うーん、そこなんだよな〜!」
「まあそれはもう本人に聞くしかないんでしょ?」
「確かに」
結局本人聞けばわかることなのだ。前の件だってそうだ、私達は話し合えばなんだって分かり合える。だって双子なんだから。
「あ」
「え?」
唐突に要が声を上げる、一体どうしたんだろう?そんなことを考えていたら、要はなんか恐る恐る言い始める。
「ねぇ...白、抜かされてる」
「ん?曲の再生数のこと?いいよ別にあっちの方が少し早く投稿してたし、別にどっちがどっちのパクリって訳でもないだろうし、そもそもあの曲の原型は黒が考えたんだし」
「嫌そうじゃなくて...」
「え〜じゃーなに?」
「チャンネル」
「?」
「チャンネル登録者数抜かれたよ、今」
「はい?」
「だ〜か〜ら〜雪風はくあチャンネル登録者数12万、今ネットでもこの件での盛り上がりがすごいからね、たった数分で1万人増えちゃってる」
「おお!やったあ!」
「黒羽こくは、20万」
「え?」
20万?この騒動があったとはいえもう20万?私ここまで来るのマジでがんばったのに...?
「まあ相手は企業なんだからそこまで気を落とさなくてもっていない...」
〜***〜
「ってことがあったの」
「.......まあ赤ちゃんみたいになった理由は分かりましたよ、でもこの部屋に来る必要性は?」
「むしゃくしゃしたから」
「そんな理由で!?」
「だってぇぇえええ!悔しいんだもん!これが企業と個人の差かよ!アバターも大して変わんねぇし!てかなんで大して変わんないアバター用意できてんだよ!奇跡かよ!とにかくデビューしたばっかのやつに!しかも妹に!こんなあっさり負けたくないよぉー」
「言いたい事ぐちゃぐちゃしすぎだから一旦落ち着け白姉さん」
「ふーふーふー」
「落ち着いた?」
「うん」
「とりあえず本人に色々聞かないと分からないことが多すぎるよね」
「でもな〜、今日黒帰って来ないらしいのさ、友達の家泊まるって」
「あちゃ〜それはしょうがないなぁ〜」
「まあ白姉さん、とりあえず明日大学かどっかで聞きなよ、確か明日の時間割結構被ってるしょ」
「何で知ってるかは会えては聞かないけどそうする〜」
この行動を私は後悔した...もしここで電話でもかけて話していれば...何かが変わったのかも知れない...でもそんなことこの時の私は知らなかった。
〜***〜
「あああああああああああぁぁぁやっちゃったよぉ〜」
{ええ、私もガチでびっくりよ、とりあえずそっちの部屋行くわね}
「あーい」
巴がこちらの部屋に来る為一旦電話を切る。
「ほんと不幸中の幸いはここが家じゃないってことだよな〜」
ここは巴の家...という名の仕事場、基本的な機材も揃ってる部屋で他にもこういう部屋が10個ほど置いてある、辺りにはちゃぶ台とか畳とか色々あるためおそらく、楽屋も兼ねているのだろう。かなり本格的な仕上がりだ。
ガチャ
「元気?」
「元気」
何者かは扉を開ける、まあ扉の先にいるのは十中八九巴なんだけど、巴はそこから顔をちょこっと出す形で私の方をむく
「なら良かった〜」
「ってさっきまで電話してたじゃん、ここまで来るのに30秒も経ってないんだから」
「まあまあ、そんなことはどうでもいいじゃない」
「まあまあって...」
「そんなことより、あれは私も驚きだったわ」
「巴でも予想外のことあるんだね」
「そりゃあるよ?黒に出会えたこととか」
「なにそれwそんなこと言ったら私だって巴と友達なれたのはびっくりだよ」
「確かに借金で無理やり脅してVにする女だからね」
「ほんとにね、でも今ならそれで良かったって感じるかな〜」
「ほうほう、こんな配信1回で?」
「配信1回目だからだよ、今まではみんな私に近づいてくれなかった。ある程度慕われていたのは感じてたんけど、それでもみんな話しかけに来てくれなかったから...色んな人達が私の配信を見に来て、コメントくれるってことが新鮮で楽しくて、なにより嬉しくてしょうがないんだよ」
「案外天職だったのかもね」
「そうだね......でもまさかお姉ちゃんがはくあのテーマソング作ってたなんて...教えてくれればよかったのに」
「なんか予兆とかなかったの?」
「わかんない...強いて言えばテーマソングのサビの部分録音させてって言われたぐらい?」
「いや絶対それだよ!なんで気づかなかったのさ!」
「だってぇ...」
「まあもう終わった話はいいや、問題は互いに原曲と主張できる点だよ」
「?」
「曲自体は私の方が早く投稿したしサビを考えたのはあなただけど、あっちの方がもっと先に活動してたし、何よりあっちの方の原曲感が半端ない」
「確かに、聞けば聞くほど私達のアレンジ感が凄い、まあ実際サビの部分とかはかなりアレンジ効いてるしね」
「どうするの?まあ訴えられはしないだろうけど、そこそこ面倒なことはなりそうだけど」
「どうしよう...お姉ちゃん怒ってるかな〜...」
「さあ...会ってないことにはなんとも...」
「ですよねぇ〜......あ〜家に帰りたくないなあ〜今日は帰らないとは伝えてるけど」
「なんならずっとこっちにいてもいいんだよ?そうなったらちゃんと部屋割り当てるし」
「いやいいよそんな事しなくても、ちゃんと家に帰ってお姉ちゃんと話し合いますよ」
「そう...ならいいんだけど、気が変わったらいつでも言っていいんだよ?」
「自分じゃどうしようもなさそうだったら逃げるよ、そんときはよろしく」
「じゃあ、そうなったら頼ってね?」
「勿論、頼らせてもらいます!」
「ならよし!頑張ってこい!」
「うん!頑張る!」
確か明日は時間割の一部がお姉ちゃんと被ってるはずだ。探せばそこら辺にいるだろうからちゃんと今後について話し合おう。多分お姉ちゃんも怒ってはないだろうし...嫌でも怒ってて欲しいかも...なんの興味もなさそうな素振りよりはそっちの方がいいや
〜***〜
翌日、講義をあらかた終わらせた私達は、黒を探しに大学中を探し回っていた。
「そっちの方いた?」
「んにゃいない」
「困ったな〜、できるだけ早く見つけたいのに...」
「まだ旧食堂方面って探してないよね」
「確かにまだそっちは探してないかも」
「じゃとりあえず行くか...」
「うん」
私達は旧食堂の方へと走っていく、黒...こうも会えないとだんだんと会いたいという気持ちが強くなってくる。
それと同時に会いたいのに会えないもどかしさも強まって行く。
「黒...ほんとにどこなんだよぉ...」
「うふふ」
「何?そんなにやにやして」
「いやほんとに黒のことが好きなんだなーって」
「そりゃね、黒は私の大事な妹なんだもん、守ってあげないとって思うし、一緒に居て欲しいって思う。」
「羨ましいな(ボソッ)」
「ん?」
「い...いやなんでもないなんでもない!それより旧食堂のに着いたよ」
「じゃ...探しますか...」
私達は旧食堂をくまなく探し始める、しかし
「ごめんなさいねぇ...そんな子見てないわぁ...」
「すまないね...そういう奴は見ていない見たとしたらいち早く教えたいからこのバクハツタエール君を持って行って」
「バカ!明らかやばそうな奴知らん人に渡すな、すいません見つけたら普通に伝えるんで」
「は...はぁ」
元々そんなに人のいない旧食堂、そこには食堂のお姉さんと根暗っぽそうな女の子と白衣を来た研究者っぽい人が居ただけで他には誰もいなかった。一応聞いてみたがやはり3人とも知らなかったみたいだった。
〜***〜
「うわあああああああ居ないよぉぉおおおお」
「まさか影も形もなかったとは...」
「どうしよう...このまま永遠に会えなかったら...私...私...うわああああああああああああ......あ」
「え...急に静まってどうした?」
そこで私はあることに気付き落ち着く。
「ていうか今探さなくても家には帰ってくるだろうから今黒がどこにいるとかどうでもよくない?」
「あ...確かに...そうかも知れない」
盲点だった、そもそも泊まるといってたのは1日だけのはずだし、普通に帰ってくるのを待てば良いだけだった...
とはいえ早く会いたいのはそうなんだけど、ここまで隅々探してどこにもいないとなるともうどうにもならんだろう
「そう考えれば必要無かったのかもね」
「確かに、わざわざ問い詰める必要ないよね別に、曲の件についてはなんとも思ってないし」
今すぐ焦らなくて良い、そう考えると体から力が抜けていく。
「なんか安心してきたらお腹すいて来ちゃった...」
「確かに」
「とりあえずお昼食べたいな」
「ここちょうど食堂だしなんか食べる?」
「いいねぇ〜、カレーオムライスあるかな?」
「白も好きだねぇ〜そういうの」
私達は談笑しながら旧食堂の方へご飯を食べに行く。
「バカお姉ちゃん......」
「ん?」
「どうした?」
「今なんか聞こえた気が...」
「気のせいじゃない?」
「...それもそうか」
気付かなかった......そこで私は気付けなかった、コレがあの一連の事件の...始まりだった。
〜***〜
ガチャッ
寝静まった家の扉が開く。きっとこの家に私が来たことは誰も分からない...
「誰も...起きてないよね...」
私は急いで自分の部屋の方に向かって自分の荷物を荷造りする。いつもお姉ちゃんと話せるこの家が大好きでたまらなかった...でも今は...
「こんな家なんて...はくあだらけの部屋なんて...大っ嫌い...」
はくはグッズも持っていこう...なんて気にはなれない、
それでも...
「お前は...私の最初に作ったものだからな」
はくあミニぬいぐるみだけは置いてく気になれなかった...多分心のどこかでまだ心残りがあるのだろう...
「でも...でももう意味ないんだよ」
荷造りの終わった私は2階から降りて家からでようとする
「さようなら我が家...」
早くここを出よう、ずっと留まりたくなる...
「待って!」
「え?」
私は後ろを振り向く、そこにいたのはお姉ちゃんだった...
「何さ...今更...」
「今更って...今やっと会えたんじゃん」
「は?取り繕わないでよ...知ってるよ...」
「知ってるって何を...」
「とぼけんなよ!私は知ってるよ!お姉ちゃんほんとは私なんてどうでもいいんでしょ!」
「え?何を言って...」
「いつまで...いつまでそんな白々しいことを言ってんだよォ!」
こんなもの!こんなもの!こんなもの!こんなもの!
私は怒りのままにミニはくあぬいぐるみを地面に叩きつけて踏み潰し続ける。こんなもの!いらない!お姉ちゃんなんていらない!
「これが私の怒りだよ!これが私の!」
〜***〜
「今日からとりあえず旧食堂の方で食事でもしようかな?お姉ちゃんを探すのはそれからにしよ」
「え......って......した」
「ん?」
私は急いで柱に隠れる。やっぱりだお姉ちゃんと...あれが要って言うお姉ちゃんの友達かどれどれ私を探してるのかな?
「......黒がどこにいるとかどうでもよくない?」
「え?」
どうでもいい?どうでもいいってどう言うこと?
「そう考えれば必要無かったのかもね」
「確かに、わざわざ問い詰める必要ないよね別に、曲の件についてはなんとも思ってないし」
なんだよなんなんだよなんで怒ってないんだよ、お姉ちゃんは私の事なんてどうでもいいの?
「......お腹すいて来ちゃった...」
「確かに」
「とりあえずお昼食べたいな」
「ここちょうど食堂だしなんか食べる?」
「いいねぇ〜、カレーオムライスあるかな?」
「白も好きだねぇ〜そういうの」
ねぇ待ってよ...お姉ちゃんは私なんかよりそいつのお昼の方がいいとでも言うの?私はお姉ちゃんの中で昼食以下の女なの?双子の妹なんてそんなものなの...?私なんてその程度なの...?
「バカお姉ちゃん...」
プルルルルルッ!プルルルルルッ!
{どうしたの?黒?}
「巴...うわ...うわあああん!うわあああああああああん!」
{黒?黒!落ち着いて...}
〜***〜
「私の悲しみなんだよ!」
「ま......待って!」
私は駆け足でから出る、先に靴を履いててよかった...履いてなかったら裸足で家を出てた...私の足はボロボロになっていところだっただろう...でもそれだけもうあの場所に居たくなかった...あんなお姉ちゃんのいる家なんて...
〜***〜
深夜の深夜まで黒を待っていてついつい寝てしまった内に黒は来ていた、私は運良く起きて話し合おうとしたけど...
「黒...わかんないよ...悲しみなんてわかんないよ...だって私達...お互い何も話してないじゃん...分かんないじゃん...」
ボロボロになって原型も留めていないはくあのぬいぐるみを拾って私は...ただ泣き崩れた...
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