第2章2話 黒い方、Vになるってよ
あれから1ヶ月...私はまあいい感じにスパチャしつつパパ活も辞めてのんびり推し活を堪能していた。
ただ...私は忘れていた...借金があることを...
〜***〜
「ねーねーくーろちゃん♡」
「ん、何?」
私が大学の課題を終わらせようとしていると、後ろから巴が抱きついて来る、柊巴は私の大学での数少ない親友だ。
私が大学でひとり孤立していたところに手を差し伸べてくれたのも巴だし、はくあにハマり始めた時にスパチャを勧めてきてくれたのも巴だった...
とにかく今の私は巴なしでは生まれていなかっただろう、そう思えるほどに彼女の存在は私の中で大きいのだ。
「ねーねーひとつ聞きたいことがあるんだけど〜?」
「何〜?私今課題で忙しいんだけど」
「借金どうした」
「ブーーッッッッッッ」
私は思わず飲んでいたコーヒー吹き出してしまう...やばいやばいやばい、2つの意味でやばい、とりあえず急いで机拭かないと、あと借金の方も...そう...私は借金をしているのだ...巴に50万ほど...ちなみにちょくちょく5000円ぐらいは返済できているのだが...まあ対した金額にはなっていないな...挙句の果てに唯一借金を返せるアテであったパパ活も辞めてしまった為今の私にはほんとに返す手段がない...もはやアルバイトをするしかなんとかする方法は無い!とりあえずこの方針で...今回は言い逃れて...(クズ)
「ああ!ああああ!ああ!そそそそれはね!これから!アルバイト始めようかなって思っててさ!それで!それでなんとか!なんとかしようかなって!思ってるんすよ!」
「え〜でもぉ〜利息もつくんだよ?それ返すのに何年もかからないかなぁ?私そんなに待てないなぁ〜何とか待っても1年だよぉ〜」
「ちなみに...返せなかった場合は?...」
「やってもらうかな〜"下"を使うお仕事...」
そういうと巴は私の太ももと太ももの間に手を差し込んで来る...
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待って!まだ覚悟が...」
私は半涙目になって辞めるように懇願する...
「もぉ〜w冗談だよ冗談wほんとにそんなことする訳ないじゃんw今までだってパパ活でそういうことする人斡旋したことないでしょ?」
「うん、あくまでお食事とかデートとかだった...」
「でしょ?まあこれは"今まで"の話なんだけどぉ」
そういうと巴は次に私の服の下に手を入れて私の肌を触り始める...
「わー待って待って待って!」
「もぉ〜w冗談冗談w」
巴はそういうとパッと手を離す
「冗談?」
「うん、冗談」
「冗談?」
「そう!冗談!」
「良かったあぁああああ」
「もぉ〜wさっきから冗談だって何回も言ってるじゃんw」
「だよね!だよね!良かったあああ」
「あっでもちゃんとお金返してよ?」
「うんそれはぼちぼち...」
「じゃないとほんとにやる羽目になるよ?」
「え?」
「ほんとだよ?」
「ほんとに?」
「そうそう、知らないおじさんに身体を...」
「え冗談でしょ?」
「(無言)」
「ねえ」
「心苦しいけど...」
「マジ?」
「マジ」
「うわああああああやだあぁぁぁぁ!」
「ってなっちゃうから」
「へ?」
「こんなのを用意しました。」
私が机に突っ伏して泣き始めると巴は机にひとつの企画書みたいなものを取り出してきた
「なにそれ」
「VTuber事務所アンブレナ所属新人VTuber 黒羽こくはの企画書」
「くろはねこくは?いやそれより...アンブレナ?」
「そう...アンブレナ...」
「アンブレナって契約VTuber数32人の超大御所の?」
「そう〜私しゃちょ〜」
「へぇ〜〜」
へぇ〜巴ってしゃちょう...社長!?
「え!?社長?社長なの?あの大型会社の?」
「そう、名義は一応うちのお兄ちゃんなんだけど...新しいVTuberの選考とかそういう大事な権限はだいたい私が持ってるから実質社長みたいなもの〜」
「え...!?」
開いた口が...開いた口が塞がらない...
いや待って...落ち着け冗談じゃないか?そうだ!冗談だ!借金のこと紛らわせるための冗談だ
「あ?あかね様?」
「あかね様!?」
「そうそう今さ友達に実質社長ってことバラしたらさ...めっちゃ驚いてwいまいち信じてなさそうだから...ちょっとお話してあげてよ」
「え、待って...巴、もしかして電話の相手って」
「うん、うちの稼ぎ頭、登録者205万の百地あかね様(ももちあかね様)、今通話繋いでるから出てみてよ」
「え...あ...」
「いいから!」
「わああ、あ...こんにちは...」
{こんにちわぁ...百地あかねでござんすぅ}
あかね様だ...喋りかた、声質、何もかも本物だ!
「ええええええっとぉ巴がアンブレナの実質社長っていうのは本当何ですか?」
{ええ...ほんとですよぉ...まあぁ...どこ見て社長とするかにもよりますがぁ...少なくとも巴さんのお兄様、智貴さんは...VTuberのマネジメントに関する権限のほとんどを、巴さんにお与えになっとりますぅ}
「マジなんだ...あかね様がそう仰るなら...信じるしかない...ありがとうございました...そして少しの間の通話...楽しかったです...」
{こちらこそぉ〜新しいお友達ができるのは嬉しいですからねぇ〜}
「え?それは?」
{あ!そろそろ日課の探偵追っかけの時間や!それじゃ切りますなぁ〜待っとってSさん!今日こそ結婚やぁ〜!}
「え?あ?はい...はい?」
ツーツー
切られてしまった。なんか最後変に不穏だったが、まあこれ以上追求すればそれこそ私の中のあかね様が崩れさる気がするので、聞かなかった事にしよう...
「どうだった...?」
「あえっと...マジなんすね?」
「マジなんすよ...」
「そうなんだ...」
「じゃあやっと...私の話を聞いてくれる土台ができたわけだね?」
「まぁ...はい」
「それじゃあ発表しましょう!題して!傘谷黒!新VTuber黒羽くろは化計画〜!!いぇぇえええい!」
「いえーい」
「ちょっと反応が薄いな?ははーん?黒ちゃん?さてはあんまピンと来てないな?」
「うん...あんまり...」
「じゃあわかるようにざっくり説明しよう!耳の穴かっぽじってよく聞いてよ!」
「はーい」
「2週間後、あなたはVTuberになってもらうわ、しかも期待の大型新人としてね、勿論大々的に宣伝もするし、デビュー初っ端からオリジナルソング携えて貰うわ、なんせテーマはVsinger、VTuber兼歌手としてバンバン活躍してもらう予定よ」
「へーーー」
私がVTuberになって歌手デビューもする...歌手デビューもする!?
「は!?え!?え!?無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!」
「大丈夫だって、自覚してないかもしれないけど!黒の歌のうまさはもはやプロクラス!もうこのままデビューしたって問題ないレベルなんだよ?」
「だからってぇー」
「嫌なんて言わないよねぇ?」
「え」
「嫌なんて言ったらどうなるか分かるね?」
もんのすごい笑顔で圧をかけてくる...めっちゃ怖い...
「わかった!わかったから!やるから!」
「うんうん!それでよし!じゃ...4日ぐらいで歌詞作れる?」
「え?それは」
「え?」
「作れます作れます!作らしてください!」
「それでよし!それじゃよろしく〜」
それだけ言うと、巴は疾風のごとく去っていってしまった...
「これからなんだか大変なことになりそう...」
私はそうつぶやくしか無かった...
〜***〜
「あ〜〜〜歌詞どうしよっかなー」
あの後私は作詞のことでめちゃくちゃ悩んでいた。
だって書くことねぇもん!ないんだもん!
最初は青春について書こうかなって思ったけどキャラじゃねぇし私生まれながらの才色兼備で通ってたからお嬢様キャラだと思われて誰もよってこなかったし、私自身もお姉ちゃんへの恋心しか無かったから書こうにも書けねぇ
そして発想力の乏しい私ではそれ以外に思いつかねぇし、ヤバいヤバいヤバいもしここで上手くいかなかったら私はえっちなサービスをするしか無くなる!それは嫌だ!
「ねぇ黒?」
後ろから声がする、私がふと後ろを振り向くと...
「あっお姉ちゃん、どうしたの?」
「良かった〜帰ってきてて」
「うん、さっき帰ってきてた」
「それでさ!早速で悪いんだけど!録音させて?」
「へ?」
〜***〜
「しろしろしろ♪まっしろしろ♪さぁ〜♪どうし〜よ〜♪この気持ちは♪止まんないの♪止められないよ♪ららら♪
こんな感じかな...」
ピッ
「録音終了!ありがとう!」
「あの...お姉ちゃん?流されるままに歌ってみたけどこれなに?」
「あーあのね、あれなの!あれであれだからそーなの!それじゃ!」
「え?」
どっか言っちゃった...でもありがとうお姉ちゃん!お陰で何を書けば良いのか...はっきりわかった!けどまあ
「はー突然お姉ちゃんどうしたんだろ?まあいいか、とにかくあの曲を私用に書き直さなきゃなんだし、頑張りますか...」
〜***〜
「ダメだ上手くいかねぇぇぇぇ!」
ダメだ!白の部分を黒に変えて歌詞を考えて見てるけど、元々想定してるのじゃ全然合わねぇ!
「そりゃそうだあれはお姉ちゃ...はくあのテーマソング何だから、私が歌うとなったらまた別なんだよぉー」
あ〜もう夜逃げかな...夜逃げしようかな...でもなんか巴なら突き止めて来そうなんだよななんかそういう凄味があるんだよなどうしよ
「あらあら黒姉さん...どうしたんすかw」
「何だよ...煽りに来たのかよ...」
「いやいや全く」
「もーだったらどっか言っててー私今忙しいのこれからの人生がかかってるの」
「そんなこと言わないでよぉ〜私だって退院したばかりなんだからさー甘えさせてよ〜」
「からかうことは甘えるとは言いません」
「え〜」
私の妹、つまりさとこは最近まで入院していた。なんか遊園地でカップルのストーカーしてたらどっかのアトラクションで大ケガしたらしい、間抜けな話だ。
「そもそも、さとこがストーカーしなければこんなことになって無かったんじゃないの?」
「なんか話混ざってない?私は別に遊園地ではストーカーしてないよ」
「遊園地ではってことはそこ以外でストーカーしてんじゃねえか」
「だってさ〜」
「だってもヘチマもありません」
「へーい、そういえば黒姉さん白姉さんのところにお菓子とか持っていかないの?」
「え?なんで?」
「だって彼女来てたよ?」
「は?」
「黒姉さんいなかった時に来てたんだけど...」
え?え?え?
「まあ彼女は冗談だとしても...」
嘘だ...嘘だ...嘘だ...彼女なんて彼女なんて認めない!お姉ちゃんの彼女になっていいのは私だけなのに...
「黒姉さん?」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「黒ねえさーん!」
「ハ!な...何だっけ?」
「白姉さんのお友達にお茶とかあげてって話」
「ああ、友達だよねトモダチそうトモダチ...って私はおかんか別に持っていかなくたっていいでしょ」
「え〜修羅場見たーい」
「ぶん殴るぞ」
「わー!DV反対!」
さとこは楽しそうに階段を駆け上がる、あいつ高校生だよな?小学生じゃ無いよね?
「はぁ〜彼女...いや友達か〜」
私は顔を覆って嗚咽を漏らす
「はぁ〜なんだろうこのモニョモニョしてズキズキした気持ちは...」
これが嫉妬だろうか...別に友達がいるって話は何回も何回も聞いていたのに...なんで今更...
「あ、作詞...」
辛い時に限って...辛いことを思い出してしまうのは何故だろうか...
「こんな時に書いてもいい歌詞は書けないっての」
とりあえずノートにペンを走らせる...すると...
「何だこれ...すらすら書ける...それになんだろう...心が晴れて行く...」
嫉妬心が歌詞に送り込まれていく...不安な気持ちが辛い気持ちが怒りが憎しみが妬みが文字になって行く...
そっか...私のここからの想い...それが私らしさ...
「ふぅ...歌詞も書き終わった...これで...心スッキリだ。」
〜***〜
「ほうほう...憎しみや妬みが伝わって来るいい歌詞だね〜」
「ほんとにこれでいいの?自分で言うのもなんだけど...正直人に聞かせるような歌詞じゃないのに!」
「全然全然こんなのまだマイルドな方だってロックなんてもっと酷い歌詞がいっぱいだよ?こんなんジャブよジャブ」
「それならいいんだけど...」
「じゃっ私はこれから作曲に取り掛かるから...完成したら即練習、即レコーディングだよ!喋りに関してはなんかもう経験から頑張って」
「んなめちゃくちゃな.....」
「ふふ、こういうのはだいたいめちゃくちゃよ」
「へいへい...じゃあ私課題出しに行ってくるから」
「あら行ってらっしゃい...」
私は手を振りながら走っていく黒の姿を眺める....
「ぁぁぁぁーほんっと可愛いいい!」
ちょっと無理矢理だけど逃げ出せないように囲ったかいがあったわぁ...
「これからたっぷり楽しみましょうね♡黒♡いや...こくはちゃん♡」
〜***〜
あれから早いとこ2週間...曲も完成し、レコーディングも終わった。後は私がデビューするだけ
{怖い?}
「そりゃね」
通話越しに巴の声がする。実際私はガチガチに緊張している。始まるまで後1分もない...怖くないわけがないのだ。
{逃げても良いのよ?}
「まさか...逃げるわけないよ...ここまで来たら」
やってやる、ここまで来たらやるしかない!
{それじゃあ3、2、1!}
「こんにちわ〜!!!!!!(音割れ)」
配信が始まるやいなやめちゃくちゃ大声で挨拶し初っ端から音割れを発生させてしまった...
「ああああああああすいません」
私は急いで謝る、ヤバい序盤からやっちまったか....そう思ったが...
[ドンマイ]
[初手音割れは伝説の予感]
[全然大丈夫なので気にしないでください]
[ドジっ子あり]
案外...コメントは暖かった、そうだ...私は今までいた界隈の何を恐れていたのだ、普段からこれくらいこの界隈は暖かった。むしろこれからだ...これから頑張って行けばいい
〜***〜
「そう、社長から直々にスカウトされたwあの時はね、まじビビったね」
[『きら☆りん』デビュー配信から早速ファンになりました!これお布施です!(¥2000)]
「うわ!スパチャ!ダメだよこんなダメ配信にお金つぎ込んじゃ、嬉しいけどさ...」
[ツンデレ?]
[優しい]
[心温まりますわ]
「ンも〜そんな茶化して...」
ほんと、私なんかが2000円も貰っていいのだろうか...
あ、お姉ちゃんもこんなこと思ったのかな...
なにかお姉ちゃんに1歩近づけた気がした....
〜***〜
「それじゃあここまで!また見てね〜」
今日はなんだかんだ楽しかったな、お姉ちゃんもこうやって楽しんでるのかな...今回は成功したけど、また失敗しないようにしなきゃな...お姉ちゃんも同じこと考えたのかな...
私は配信を終わらせて感傷に浸っていると
プルルル!プルルル!
電話が鳴り響く
ガチャ
{黒黒!面白いことが起こったわよ!はくあチャンネルを見てみて}
「え?」
私は急いではくあチャンネルを見る、すると...
「ふへぇ!?真っ白な喜び?私の作ったテーマソングにそっくり...ていうかまんま!一体これはどういうこと...」
私たちの中にまた、とても面倒なことが起こるのを私は密かに...予感した...
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