2章6話白として.....姉として......

「これが私の......悲しみなんだよ!」


前回、ちょっとした行き違いで白姉さんと喧嘩になってしまった黒姉さんは家出してしまう、そしてその翌日とある人物が私たちの元へ尋ねてきた



〜***〜



ピンポーン!

「はーい今出まーす!」


脳が揺れそうなくらいうるさいチャイムが私の耳に響いてくる。なんだろう......さとこの宅配便かなんかだろうか、正直今はそれどころじゃないのだ、私の双子の妹が居なくなった......19年間辛いことも楽しいことも分かちあって一緒に成長してきた妹が今何処にいるのかも分からない、それどころでは無いのだ。


「はい......なんでしょう......」


私が弱々しく扉を開くとそこに居たのは衝撃の人物だった......


「あなたは......」

「こんにちはお姉さん、貴方の妹、傘谷黒の友達の柊巴と申します」


何処か胡散臭いようなでも何処か真っ直ぐのようななんとも掴みどころのない声をした狐目の女性はこちらを見ながらそう答えた


「あ、とりあえず中へどうぞ......」

「はいありがとうございます」


その雰囲気に圧倒されて私は何も言えずただ中へ招き入れることしか出来なかった。



〜***〜



私は柊さんを招き入れ向かい合って座る


「それでなんの御用で......」

「単刀直入に話します、黒のことで話に来ました」

「黒!?黒について何か知ってるですか!?教えてください!今何処に!」

「とりあえず落ち着いて下さい、順を追って説明します」

「はい......」

「今黒は私が運営しているアパートの一室で生活しています」

「じゃあ黒は路頭に迷ってたりは......」

「そういうことはないです」

「良かったぁ〜」


ひとまず黒が無事だという報告を聞けて安心した......

私は呼吸を落ち着かせて再び柊さんの方を向きゆっくりと口を開く、安心したからこそ余計強く思う、黒と話したい、あの誤解を解きたい、また一緒に暮らしたい


「それで黒は今何処に居るんですか?」

「それは教えられません」

「え?」

「今の黒の精神状態的に貴方と会うことは悪手になり得る危険性があります。」

「そんなことは......」

「ありえないと?黒をあそこまで傷付けた張本人が良くもまぁ呑気にそんなことが言えますね」

「あれは誤解で......!」

「誤解でもなんでも!傷付けたことには変わりありません!1度誤解を招き傷付けた貴方が再び話せばまた黒を傷付ける可能性がある、それだけは私は避けたいのです。」

「でも!」

「第一......あなた本当に黒のこと大切に思ってるんですか?」

「そんなの当たり前じゃないですk」

「だったら!元々誤解させるような発言なんてする訳ない

い、本当は心のどこかでどうでもいいって気持ちがあったんじゃないですか?」

「そんな訳無いでしょ!」

「いいえ!私は彼女の親友として色々聞いてきました!彼女の貴方への愛を!想いを!貴方はそれに報いようとしましたか?答えようとしましたか?」

「それは......」

「そうやって自分の返答はあやふやにする癖にいっちょ前に独占欲だけは強い、黒はもう20歳のれっきとした大人です、いつまでもあなたに守られている存在じゃない、はっきり言って今の黒はあなたに依存しすぎていた......あなたという存在が黒を苦しめていたんです!」

「......そんな言い方......」

「そんな言い方も何もそれが事実ですので、なので私は黒の居場所も連絡先も何も教えるつもりはありません二度と会わせる気もありません、いい機会ですのでこのまま貴方も妹離れをしてみては?」

「......」

「無言は了承とみなします」


そう言うと柊さんは静かに立ち上がり家から出ていく、私はその光景に反論する訳でもなくただ立ち尽くすしか無かった。



〜***〜



「白姉さ〜ん?白姉さ〜ん?」


黒姉さんが出ていってここ数日白姉さんおかしい、なんかもぬけの殻みたいになってて、家にいる時は配信をする訳でもなく自室で引きこもり、会話がとにかく全然できない食事を置いてもあんま喉を通ってないみたいだし、要さんに聞いた限り大学にも行っていないらしい


「やっぱ黒姉さんが出ていった後に来た人が原因?」


リビングにこっそり取り付けていた隠しカメラに写っていた謎の女音声の方も聞きたかったのだがリビングに取り付けていた盗聴器は白姉さんにバレてぶっ壊されてていたのでしばらく取り付けるのを自粛していた。まさかその矢先にこんなことが起こるなんて......さすがの私もアイツが誰かなんて探る方法はないぞ......そんなことを考えていると


「白!」


聞き覚えのある声がする、要さんだ......きっとあまりにも心配過ぎて駆けつけて来てくれたのだろう。


「さとこちゃん、白の様子は?」

「今のところ別に命に別状とかはないけどやっぱりかなり気を落としてるかも」

「やっぱり......黒ちゃんが居なくなったことが原因で......」

「いや......問題はそこじゃない気がする、黒姉さんが居なくなっただけなら白姉さんはこんな状態にならないしむしろ躍起になって探すはず、黒姉さんの安否も分からないんだし、逆にこうなったってことは黒姉さんが何処かで安全だと伝えて尚且つ心をバキバキに折った犯人がいる、誰かはわかんないけど......」

「いや心当たりはある......でも確証が......さとこちゃん......監視カメラとかない?......って言ってもあるわけないよね」

「あるよ」

「あるの!?」


そんなこんなで私は要さんに監視カメラに映ってた謎の女性を見せる、すると......


「やっぱりこいつか......」

「要さん誰か知ってるの!?」

「うん、よ〜くね」



〜***〜



私は犯人を知っている。柊巴、昔から家が近いと理由で関わることになった幼馴染、もといただの腐れ縁だ、私はあいつのことが嫌いだしあいつも私の事が嫌いだろう、本来なら顔も見たくないが、今はそんなことを言っている場合ではない。


「やあ、こうやって約束までして会うのはいつぶりだっけ?」

「さあ?少なくとも高校以来なんじゃない?大学に来てからは講義は被った日にいつも玄関でかち合う以上の記憶はないけど、わざわざ呼び出すなんて余程の緊急事態らしいわね気になっちゃうわ」

「わざとらしく......」


あいつだってなぜ呼ばれたか分かりきっている筈だ......互いに睨み合い沈黙が場を支配する......


「そろそろ何故呼び出したか教えてくれないかしら?」

「そうだね、単刀直入に聞くよ、白に何を吹き込んだ?」

「そんなの簡単よ?白が邪魔だから、彼女が探してるなんて黒が聞いたらまた彼女の元に帰ってきちゃうじゃない」

「そんなことの為に......だいたいそれの何が悪い!」

「悪いに決まってるでしょ!彼女は黒を傷付けたのよ!」

「それは勘違いで!」

「勘違いでも!傷付けた事実は変わらない!今後傷付けないなんて保証はない!そんな場所に黒を置いておけない」

「まるで自分が黒の保護者かなんかのような言い方だな上から目線で対等じゃない、大企業の社長様性分が染み付きすすぎてるんじゃないか?」

「はっ知ったような口を!貴方だって白を使って似たようなことをしてるじゃない」

「あくまで似たような事だ、本質が違う......」

「あらなんでそんなこと言い切れるの?」

「お前は黒ちゃんを理想のVにしようとするあまりに黒ちゃんを支配しようとしてる、自分の理想から外れないようにと裏で手回ししまくってるのが証拠だ」

「ッチ!それを言うなら貴方だって......」

「私は違う......私は白が私以外の人と......それこそ黒ちゃんと結婚しようとしてても受けて止めて祝福する......」

「......は?」

「白がホストクラブにハマってしまったとしても!本当に......本当に......それが白にとって大切ならば!それが白の幸せならば!私は喜んで白にお金を渡す!」

「何を言って......!?」

「たとえ白が白いパンツ以外を履いたとしても!白が突然私への当たりがキツくなったりしても!借金の連帯保証人にさせられようとも!私はそれを肯定して!喜んで隣に立つ!」

「キモ......」

「私は可愛いから白が好きなんじゃない、優しいから好きなんじゃない......醜くても、嫌われていても、白は私の大好きな白のままなんだ!」

「......」

「わかった?これが覚悟だ、これが愛するということだ!」

「ええ、貴方が犯罪者予備軍だってことは理解したわ、

ただ面白い、貴方その白に対する想い事白を砕きたくなったわ」

「は?」

「いい情報を教えて上げる、白と黒が唯一話せる最後のチャンスがある。」

「最後のチャンス?」

「そう、それはね?......」



〜***〜



ただひたすら突っ走る


《「まずはボロボロに砕け散った白の心を何とかする事ね、出来るかどうかは分からないけどね」》


最後にあいつの言ったセリフが脳内を反芻する、ふざけるな元々そのつもりは、私はどんな白も好きだ、でも望まない結末で苦しんでいる白なんて見たくない、助けたい、それもまた親友の務めだ、白として、姉として、輝いてる白をもう一度取り戻す、チャンスはあるんだ白なら取り戻せる白なら......行ける!

私は覚悟を決めて白の家へ突っ走る、彼女を立ち直らせるために......



〜***〜



私は姉失格だ......長い間黒の気持ちに気付かないで、気付いたのに後回しにして、すれ違いとはいえ黒に酷い言葉をかけてしまった......きっとそんな私に姉の資格なんてない......

だったら......私になんの価値がある?"黒の双子の姉"として今まで生き続けてきた、そんな私から"黒の双子の姉"が無くなった先に私に何が残る?さとこの姉?双子の......もう1人の私と言っていいほどの存在すら傷つけてしまった私にさとこの姉を名乗る資格なんてない、両親に合わせる顔だってない。もう死んだ方がマシなのかな......何もする気が起きない、ずっと一緒に暮らしてきた、私の一挙手一投足全てに黒の面影を感じる、同じ顔で一生一緒にいた黒を喪って......私に何が出来る、探し出して話し合えばまた元通りなんて考えは傲慢だった......


「もう黒にも一生会えないな......」

「そんなことない!」

「え?」


ドアが強く開く音と共に聞き覚えのある声がする


「要?なんでここに?」

「そんなの黒ちゃんを救いにだよ!」

「無理だよ......今の私じゃ......」

「無理じゃない」

「きっと黒と会えたところで、また黒を傷つける、今度こそ黒を最後の最後まで追い詰めてしまうかも知れない、私には姉の資格なんてない......黒だって心の底から会いたくないって思ってる......」

「そんな訳......そんな訳ないでしょ!!」

「え?」

「1回誤解を招いてすれ違いを起こしたぐらいで姉失格なんてそんな訳ないでしょ!たとえ親友でも!家族でも!姉妹でも!双子でも!!結局はそれぞれ違う人間なんだよ......

相手の気持ちがそんな簡単にわかるわけが無いんだよ、だからこそは人はぶつかり会って傷つけあってお互いを理解し合うの!なのに1回ぐらいで姉失格な訳無いでしょ......」

「要......でも私は......黒のこと何も知らなかったから......」

「そんなことないよ、確かに白の知らない黒ちゃんの一面があるかも知れない、でもそれこそこれから知っていけばいいんだよ、まだ1年もあったことの無いあいつより、1」

「......良いのかな......そんな優しい言葉に甘えても......良いのかな?もう一度黒に会っても良いのかな?」

「良いよ......もう一度黒に会おう!そして謝ればきっと......元に戻れるし、その資格だって白にはあるよ、だからほら!涙をふいて!」


そう言いながら要は私の目元にハンカチをあてて涙をふいていく、要がこんなに励ましてくれたんだ、落ち込んで塞ぎ込んで泣いてなんていられない


「ありがとう要、もう涙は拭かなくてもいいよ」

「ごめんもうちょっとだけ......」

「え?」


人生で涙をふいてもらうのを延長されたのは初めてだった



〜***〜



「要、私もう一度頑張るよ頑張って黒にあってみる」

「うん!頑張ろう!」

「あ、でもどうやって会おう.......」


しまった会いたいって気持ちばかりが先行しまくってて場所が分からないの忘れてた巴さんが教えてくれるわけないし......


「ふっふっふっもしその方法を知ってると言ったらどうする?」

「え!?マジ?」

「うん、正直確率も低いし障壁も多いんだけどね」

「でもこれしかないんでしょ?だったらやるしか無い!」

「お!さすが生まれながらの謹厳実直!思い込んだら一直線だね!良いだろう、その方法を教えてあげよう!」


そうして要はひとつのチラシをこちらに見せてくるその中身は......


「大手企業アンブレナとウィークエンドが大々的にコラボして開催、事前に申請したトリオでバトルロワイヤル!アンブレナの所属V+一定の基準をクリアしている外部のVもエントリー可能の大型大会、その名もアンブレナカップ!これならきっと!黒ちゃんも参加する!そうすれば!会える!」



もしかしたらゲーム上だけでも会えるかもしれない......

自分がアンブレナの指定する一定基準に達しているかは分からないしそもそも黒が参加するかも分からない、トリオメンバーだって集まらないかもしれない、それでもやるしかない、このチャンスをものに出来なければ黒に会えない



〜***〜



同日のとある配信


「オラオラオラオラオラオラァ!」


勇ましいくも美しい声を響かせながら彼女は辺りの敵を砕いていく。


【やれ!そこだ!】

【打ち殺せ!蹴散らせ!】

【戦うお姿が美しい】

【今回の配信はいもフラしないのかな?】

【真面目に新記録目指せるぞこれ】

【可愛すぎて泣く】

【スナイパーひとつでトリオ2グループ壊滅すげぇ!】

【てか近距離でスナイパー使うなw】


コメント欄の異様な盛り上がりは彼女の強さを示している


「さて、これでチェックメイトだ!」


残った最後の一人がその場から逃げようとする、すると彼女はひとつのグレネードを取り出す、ハイジャンプグレネード、実はハイジャンプグレネードの飛ぶ位置はある程度自分で調整可能だ、彼女は敵の方向でぶっ飛んでいく


「さあ、真っ赤に染めてやるよ!」


彼女は敵の至近距離まで近づいてスナイパーを撃ち、ヘッドショット、あっという間に勝利をもぎ取り、配信画面に文字が表示される勝利宣言ビクトリーラッシュ、ウィークエンドのバトルロワイヤルモードで優勝した時に表示される、最強の証、しかし彼女にとっては見飽きた文字


「楽勝♪楽勝♪この調子ならアンブレナカップでも楽勝だな!」

【その前にメンバー】

【他の人とコラボした姿見たことない】

【大会は絶対トリオメンバーだよ】

「ああ!じゃっかましい!この紅戦鬼くれないせんきを舐めるなよ!私が絶対!優勝したるわい!」


紅戦鬼は......高らかに叫ぶ

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