第3話末の妹が恐ろしい...

「絶対妹を更生させて見せる!」

前回お姉ちゃんの卑劣な術「推しからのお願い」を行われた私はもう赤スパをしないことを了承してしまう。

しかし了承したからと言って軽々しく止められるほど、私にとってのスパチャは軽くなかった...


「黒?何でまた赤スパしたの?」

こんにちは傘谷黒です。私は今絶賛お姉ちゃんにお叱りを受けています。

「べっ別に私のお金なんだから何に使ったっていいじゃん、それにお金はお姉ちゃんの収入源になってるんだからそんなに怒るほどのことでもないじゃん」

「借金して手に入れたお金は私のお金とは言わないよ」

「うっ!」

痛い所を突かれた。

「黒、私決めたから、これからどんな手段を使ってでもあなたの赤スパを辞めさせる」

「えっ」

「今日のところは軽いお説教で済ますけど、そのうち本格的に辞めさせるから今のうちに覚悟しておいてね、後もう深夜の1時だから早めに寝てね夜更かしは体に毒だよ」

そう言い残すとお姉ちゃんは部屋から出ていってしまった...

「やばいああなるとお姉ちゃん手ぇ付けられなくなっちゃうんだよなぁ...」

1度決めたらどこまでも突っ走る女...傘谷白とはそういう女なのだ。そしてそんなお姉ちゃんだからかっこいい!っとそんなこと言ってる暇ないや今日はもうおやすみしよ。

私はベットに横たわり特製はくあ抱き枕(水着バージョン)を抱きしめながらこれまた特製はくあアイマスクを装着し眠りに着いた


翌日


起きた時間は午前10時だった。よし良好!私は階段を降りる、その道すがらお姉ちゃんの部屋を少し覗く決して下心はない

「やっぱいないかー、そりゃ今日はお姉ちゃん1時間目から授業だからね早めに行ったのか」

配信もいつもより早く終わらせていたし

とりまパンツだけ拝借してそのまま部屋を後にする

私が1階に降りてリビングに来るとさとこが朝食を用意してくれていた、私の好きなオムライスだ。しかもほのかにチーズの香りもする。つくづく私の好きなカスタムに仕上げてくれている、きっとお姉ちゃんのはお姉ちゃんので作ってあったんであろうことが容易に想像出来る。

前にお姉ちゃんが私のことを生まれながらの才色兼備と例えていた。だとしたらさしずめさとこは生まれながらの良妻賢母と言ったところだ私たち双子姉妹のだらしない部分を見事に補完してくれている。

「うんうん、やっぱりサイコぉー」

さっさと身支度を終えて外に出る、徒歩で行くとしたら20分、車なんて当然ないし...チャリに乗っていくか

「行くよクロイチェイサー20000」

私は愛車に呼びかけ全力で漕ぎ始める、グングンスピードを出しながらただただ平坦な一直線を駆け抜ける。

風が心地よい...まるで物語の主人公になった気分だ

でも違う...きっと私たちの日常に物語があるとすればそれはきっとお姉ちゃんだ。

私が生まれながらの才色兼備、さとこが生まれながらの良妻賢母ならきっとお姉ちゃんは生まれながらの謹厳実直、いつも自分の信じることに真っ直ぐ努力し結果を出す。配信だって分かりやすくその部類だ。ああいう場を一切知らなかったお姉ちゃんがその空気に合わせるようにしっかり成長して行った。その結果があの今人気うなぎのぼりの雪風はくあなのだ。

「やっぱお姉ちゃんはすごいな〜それに比べて私は...」

私は人生で何も成し遂げたことがない、なまじ勉強も運動も出来たぶん、自分の出来ないことから逃げる癖がついてしまった...例えば歌とか

だからなのだろう、私は高校の頃お姉ちゃんが本気で好きだった。お姉ちゃんとデートしたかったしキスもしたかったしエッチなこともしたかったし何より結婚までしたかった...

でも私は逃げた、明らかにお姉ちゃんが私を意識してないことなんてわかってた、だから挑戦出来なかった。失敗するのが怖かった...

その結果毎日悶々として...そんな気持ちの中ではくあに出会えたのは救いだった、それ以前もぼんやり配信を眺めることはあってその時偶然出会った私の推し、まるでお姉ちゃんみたいで(実際本物のお姉ちゃんだったんだけど)健気にトークを頑張る姿が好きでどんどん板について行くのが好きでいつしかお姉ちゃんへの気持ちははくあへの愛へ移り変わって行った。まあそれでもお姉ちゃんへの恋心が消えたわけではなかった。

そんなある日、ふとお姉ちゃんのパンツが欲しくなった私はお姉ちゃんの部屋に忍び込んだ、そこで私は初めて知った。お姉ちゃんが推しだったことにそして全てに合点が行った。その結果私の恋心は...はくあへの愛と完全に混ざりもっと凄いなにかへと昇華した...

そしてその結果勢い余ってその配信で人生初めてのスパチャ、しかも赤スパをしてしまった...するとお姉ちゃんはすっごく喜んでくれたではありませんか!今までの努力が報われた気がした。

「そうやってお姉ちゃんに流されるだけの人生...かあー」

グダグダ考えてる間に大学に着いた...私はそのまま広場に向かう親友と待ち合わせをしているからだ

「はぁなんでこんなことに...」

「諦めて僕とランデブーでも...」

「それはなし」

バカップルの夫婦漫才...

「あーあ私も大学やめよっかなーそしてそのまま居酒屋の看板娘として働き続けようかなー」

大学を中退し就職を考える金髪...

「おっ星20000当たった!」

インフレの極地みたいなゲームしてるなんちゃって目隠れ...

「なしな君に頼んでおいたお使い...大丈夫でしょうか...」

弟?の心配事をするメガネ...

私は広場はあんまり好きじゃない、色んな人の声が感情が溢れてて気が散ってしまう。自分が見つめる相手なんて1人でいいそれ以外はノイズだと思ってる。

それから私は辺りをキョロキョロ見渡し親友を発見する。

「おっいたいたー巴ー」

「あっくろー」

私の親友柊巴(ひいらぎともえ)、彼女は大学で若干孤立気味だった私の手を取って友達になってくれた。

ちなみに私だって友達を作ろうと努力したのだが何処かのサークルに入ろうとする度

「こんなサークルあなたにはふさわしくありません、こんな未熟なところで申し訳ございません」

とか泣きながら言われて見学どころじゃなかった。どういうことだよ

一瞬いじめじゃないかとも考えたが全サークルで私を弾くなんていじめ逆に手間だろうから違うなと結論づけた。

つまるところ巴はそんな絶望的な状況から私を救ってくれた英雄だ。

「くろー思ったより早かったねーもう少し遅れて来るものかと」

「失敬なちゃんと時間通りです。」

「ちなみに言って置くと5分くらい遅れてるよ」

「嘘だー」

一応時計で確認してみたらマジだった...でもなんかこれもいいかなーと思えてくる。お姉ちゃんもこの前5分遅刻したらしいし、姉妹っぽくていいかも

「またお姉ちゃんのこと考えてるでしょー」

「えへへーわかるぅー?」

巴は私が黒羽としてお姉ちゃんに赤スパを投げてることを知ってる唯一の人物だ、いや今はだったか、お姉ちゃんにバレたし

「それで黒、実際どうするの?バレてスパチャ禁止にされたんでしょ」

「うん...どんな手を使っても辞めさせるって、言い出すとお姉ちゃん、止まらないから」

「そうかー」

巴は少し考え込む...かなり悩んでくれているようだ。

嬉しい

「まだ覚醒の時じゃないし(ボソッ)」

「取り敢えず今はまだ様子見でいいと思うよ実際相手側が何からしらの手段を取り始めたらこっちも対策しよう、慌てるにはまだ早いよ」

「わかった...ありがとう巴」

「全然困った時はお互い様だよ!」

その後は2人で授業を受けてそれぞれ帰路に着く...時刻は既に4時を回っていた。

「はぁクロイチェイサー20000の空気が抜けたとは...行きの時はぐんぐんすすんでたのに」

そうパンクした...悲しい...相棒が...

「あれ?黒姉さん?奇遇だねこんなところで!」

とぼとぼと歩いていると後ろから妹に声をかけられる。

「あれさとこも今帰り?」

「うん、今日部活なくてさ...」

「あー部活かー昔私もやってたなー、さとこは今何をやってるの?」

「あー漫研って所に入ってる、漫画書くところ」

漫研かー、私の頃はなかった気がするさとこは私達のいた高校に通っている。漫研なんてのができたのか...時代は変わるな〜

そんな感じのくだらない雑談をしながら家に帰った...

夕食、今日は珍しく3人で食卓を囲っているのだが

「「「いただきまーす」」」

ニコニコしながら食べているのはさとこだけ、私とお姉ちゃんばバチバチに睨み合いながらご飯を食べている。

〈「どんな手を使ってでもあなたにスパチャを辞めさせる」〉

あんなことがあったらこうなるよね...一体お姉ちゃんはどんな手を使って来るのか...

「なんかを警戒してる顔してるね」

「そりゃそうだよ堂々とあんな宣言されたらね」

「確かにそれもそうか」

私たちはさとこに聞かれないくらい小声で話す、まあさとこは聞いたところでなんの事か分からなさそうだけど

「まあ、しばらくは何もしないことにするよ」

「へーあの言葉はこけ脅しかなんかだったの?」

「?」

え?なんで?みたいに首を傾げる、急にボケたのだろうか

「今スパチャしない宣言してもいいんだよ?」

「しないよ、なんで何もされてないのにしないと行けないの」

「?」

お姉ちゃんはなんかよくわかってない顔で首を傾げる

「?」

お姉ちゃんに合わせて首を傾げる

するとお姉ちゃんがべろを出して顔を横に振って煽りだした

私も負けじと対抗する

「ちょっと両姉さん!なにやってんの!」

2人仲良く怒られた...確かに私たちは小声で会話していたからなんであーなったのかよく分からないのも当然だ

とりあえずそのまま睨み合いに戻りご飯を食べる

そんなこんなで食事も終わり寝る時間になる今日ははくあの配信はなかった...何故だ...

私は失意と絶望の中部屋の扉を開ける...そこには

「えっなにこれ...」

そこには女の子が2人でいちゃついているタペストリーがこれでもかとびっしり詰まっていた...その瞬間私は気づく

あっここ私の部屋じゃない、ヤバいずっとはくあのこと考えてて前見てなかった...お姉ちゃんはこんな部屋じゃなかったし消去法的にさとこの部屋???

本来ならこの場ですぐ逃げるべきなのだろう...しかし私は進むんでしまう。私のバカ!

はくあ抱き枕と...黒髪のはくあ抱き枕?が2人仲良くベットの上に置いてある、そして私はあることに気づく

「この黒いはくあ抱き枕...翼も生えてる」

ここまで来れば察しのいい私は気付く

「もしかして...これって黒羽で私?」

「せいかーい」

「えっさとこ?」

「まさか鍵をかけ忘れるとは姉の失敗から何も学ばなかったな私も」

「ふへぇ、さとここれは一体どういう...」

「私さ...百合ヲタなんだ...漫研で描いてる漫画はそういうやつなの」

「ふへ?」

私がどういうことかよく分かっていないのを察するとさとこは噛み砕いて分かりやすく教えてくれた

「百合っていうのは女の子同士がイチャイチャするジャンル...」

「ふへぇ...なるほど...」

そういうジャンルがあるのか知らなかった、そして私達って百合にはいるんだ

てかそれよりも

「なんで私が黒羽で...お姉ちゃんがはくあってことを知ってるの?」

「そりゃ監視カメラつけてるんだから嫌でもわかるよ」

「初耳だよ!?」

「そりゃ誰にも言ってなかったし」

「なんでそんなものつけて...」

「だってどうするのさ...」

「え?」

「私の知らないところでお姉ちゃんふたりがイチャつき出したらどうするのさ!絵に昇華できないじゃん!」

「私たちのプライバシーは?」

「んなもん度外視に決まってるよ!」

なんて妹なんだ、自分の欲望のために姉のプライベートを侵害してたなんて、え?パンツ盗んだ?そんなこと私が知るか!

「まあバレたからにはお姉ちゃんにはこれからたっぷり協力してもらおうかな」

「え?」

「例えば私の絵の練習に付き合ってもらったり白姉さんといっぱいイチャついて貰ったりして欲しいな」

「嫌だよ!そんな他人の命令で...」

「へぇーそんなこと言っていいのかな?」

「ふへぇ?」

「これ」

見せられたタブレットの中には今朝私がお姉ちゃんのパンツを盗んだところが写っていた。

「これ、白姉さんに見せたらどうなるかなー?今以上に幻滅されるかもよ?」

「ふへぇ!?」

とんでもなく卑怯な手を使ってきやがった...

「で?どうするの?協力するの?しないの?」

「します...協力させてください」

「やったー!これで交渉成立ね」

こうして私は妹と悪魔みたいな契約を結んでしまった。

そんな私が言えることはひとつ

末の妹が恐ろしい...

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