第2話絶対に妹を更生させて見せる!

「ふへぇっあっいやそのぉ借金してました」



〜***〜



妹から発せられたその一言に私は絶句する。


「いくら?」

「あっいやっそれは」

「いくら?お姉ちゃん怒らないから教えて?」

「いやそれ絶対怒るやつ...」

「なんか言った?」

「いえ!何も!」

「それでいくら?」

「ふへぇ、えっと利息を含めて500万」

「500万!?え!?500万...」


私は思わず頭がクラクラしそうになる。


「えっと...それは返す当てはあるの?」


私がそう聞くと...


「バカにしないでよ!返す宛ぐらいあるもん!」


結構意外な一言が返ってきた、流石に私も黒のことをバカにしすぎていたらしい。そうだ黒は生まれながらの才色兼備、お嬢様じゃないのにお嬢様感のある雰囲気を醸し出す生粋の才女だったはず...この借金だって頑張って働いて数年かければちゃんと返せる計算になっている筈なんだ!!


「そっか...良かった...疑ってごめんね」

「いいよいいよ実際500万も借金があったら驚くのも無理は無いし」

「ほんと驚いたよー、ちなみに返す宛ってなんなの?」

「パパ活」

「え?」


え?今なんて?パパ活?パパ活って言わなかった?パパ活ってあのおじさんとお食事するタイプのパパ活?いや焦るな、焦るな私、さっき黒のことを見直そうと決めたじゃないか!


「パパ活ねーパパ活、子供の育児のことでしょベビシッターかー!それはいいことだね!」

「何言ってるのパパ活はおじさんとお食事とかするものだよ」


一瞬抱いた希望をすぐ打ち壊された。まじかぁえっまじかぁ、てかなんで黒はその事をドヤ顔で語れるんだ。


「パパ活って援交みたいな...あれでしょ?」

「違うよ!!体とか売らないしあくまで健全なお付き合いだもん!!お食事とかブランドもののバックとか買って貰ってるだけだし!!ちなみに貰ったらすぐ売ってる」

「テンプレか!!パパ活女子の言い訳テンプレを作るとしたら採用されるぐらいにはテンプレだぞその言い訳!!あと売るのは普通に失礼なのでやめてあげて!」

「むうううううう!」

「むううううううう!じゃない!」

「う1つ多い!」

「そんなこと関係ありません!大体ちゃんと税金周りの管理はしっかりしてるの?贈与税とかかかるんだよ?確定申告とかしてる?」

「ぞうよ?ぜい?かくてい?しんこく?よくわかんない」

「はいアウトー」

「だ...大丈夫だもん!私の友達がそこら辺やってくれてるって言ってたもん!」

「友達も協力してんのか!そいつが黒幕か!」


こいつはどれだけアウトを出せばすむのだろう


「とにかく!!これからはパパ活は禁止します!」

「えぇー!」

「そしてちゃんとバイトしてお金を返すこと、私も半額くらいは立て替えるから、」

「そして...もうこれ以上!スパチャすることを禁止します!!」


どっかの馬鹿(黒)のおかげで私はだいぶポケットマネーを蓄えている。元はと言えば借金のお金なのだ、返して当然だろう。そしてそもそもこうなってしまった最大の要因は黒羽としての大量のスパチャなのだ禁止するに決まってる

すると突然


「スパチャ?スパチャ禁止?スパチャ禁止?スパチャ禁止?嘘だ、私を騙そうとしている、あば、あばば、あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」


黒がバグり出した。黒の肉体はビクビク痙攣しだし泡を吹いて倒れた、泡を吹いて倒れた!?


「ちょっえっ黒?落ち着いて!!黒!!」


私は必死に黒を介抱する、必死の介抱のお陰か1時間くらいしたら蘇った。


「落ち着いた?」

「はぁ...はぁ...はぁ...取り乱してごめん」

「黒...?そんなにスパチャが大事?」


もしかしたらまたぶっ倒れるかもしれないそれでももう一度勇気を出して私は問いかけたり


「大事に決まってるよ!それだけは絶対にやめないから!いくら推しの頼み事でも!」


今度は否定こそしているもののちゃんとした反応をしてくれた。取り敢えず一安心、しかしなんでそれほどまでに沼にハマってしまったのだろう...まずはそれを聞かなきゃ行けないのかもしれない


「取り敢えずどうしてそこまでスパチャにこだわるのか教えてよ」

「ツッコミ入れない?」

「入れない入れない」

「ドン引きしない?」

「しないしない」


余程言いづらい事なのだろう黒は少し考えてから


「じゃあ話すね?」


少しいい淀みながらも話してくれた


「私さ、お姉ちゃんのことが性的に好きだったんだ。」

「まって」


ごめん黒、流石にそれは止めさせて、ただでさえ今の私は妹が自分に赤スパ投げてくれる常連でスパチャのために借金しててその末パパ活してることの3つ事象が押し寄せて来る中でさらに同性愛者で私に劣情を抱いてることをカミングアウトされたの一旦落ち着かせて


「驚くのも無理ないよ...わかってるでも落ち着いて聞いて欲しい...」

「分かった続けて」

「さっきは性的に好きって言ったけど今はそんな気持ち綺麗さっぱり消え去ってるの」


なんだろうなんか勝手に恋されて勝手に振られた


「その理由が...雪風はくあなの」

「ある日私がいつお姉ちゃんを襲おうか考えてた時」


あれ何気の貞操の危機だった私


「何気なく見たITUBEで私はとある配信者を見つけたの、それが雪風はくあ、正直その頃は喋りはタジタジだったし面白い話も何も無いしたまにちょっとえへへと笑うぐらいで正直全然面白くなかったけど」


心にグサグサ来る、しょうがないじゃん当時私は配信のノウハウとか何も知らなかったんだもん、いくら親友の要に手伝って貰いながらでも結構難しかったんだもん


「でもねその姿を見て本能で確信したの、あっお姉ちゃんだって、勿論その時はお姉ちゃんが雪風はくあなんて1ミリも思って無かったんだけど」


何気に本能で正体バレしてるの何気に怖いんだけど


「それでしばらく配信を見てたら不思議とお姉ちゃんへの感情が少しづつはくあへと移って行ったのしかも今度は性的な意味ではなく崇拝的な意味で」


ナイスはくあ!って私か


「そして...ついにその日が来たの私はその日貰ったお小遣い3万円を握りしめPC画面に向かったの」


あー当時はぼちぼちスパチャで稼ぎ始めれて調子に乗ってたからなー5千円だった黒のお小遣いも3万円にグレードアップさせてたんだっけ、あれ?私上げすぎでは?


「私は迷いなく赤スパを投げたわ、そしたらね」



〜***〜



〈「『黒羽』こんにちは!初めてコメントしました!いつもいつも応援しています!(¥10000)」〉

〈「あっ赤スパだ!黒羽さんありがとー!いつも応援ありがとう確かホント初期の初期から見ててくれてた人だよね!これからもどんどん応援してくれると嬉しいなーなんて」〉



〜***〜



「ほんとに嬉しかった、まさか認知されていたなんてって心の中で何かがはじけ出した、嬉しくて昇天しそうになるほどに...」


あっこれ完全に私のせいかも


「さらにある日なんとなくお姉ちゃんの部屋をのぞきこんだら、あっ別にお姉ちゃんのもの盗みに行ったわけじゃないんだからね!その頃にはもうお姉ちゃんへの気持ちはどっかに行ってんだから!......本当だよ!?」


それ以前に勝手に覗き込むな


「その時気づいたあっお姉ちゃんがはくあなんだって、その結果はくあに向いていた崇拝はお姉ちゃんのことが好きだと言う心...は勿論消えたんだけど!混ざりあって私は完全に沼に浸かったのそしてグッズも自作し出したの.....」


やばい、想像以上に私のせいだった...ほんとにどうしよう?いややることは変わらない、嫌だからこそ私は黒を更生させなければならない、沼から引きづり出さなければ沼に沈めることが出来たんだ(無自覚)、引き上げることだってできるはず、行け、やれる私なら行ける。


そう自分元気づけ私は黒の方をむく


「ねーねー黒さん」

「えっひゃっ」


私は黒を押し倒す


「私ね、自分の身を滅ぼしてまでなにかに尽くそうとする人あんまり好きじゃないな〜」

「えなんではーたんが目の前に」


そう私はいま配信モードで黒に語りかけてる私白が説得できないならはくあに任せる!そう!はくあはどっちかと言うとおっとり目のキャラなのだ!


「ちゃんと自制して最後まで私の隣に寄り添ってくれるよーな人が私は好きなんだ〜」

「ふへぇ」

「だからさ、もうあんまりスパチャしないでよ」

「ひゃっひゃい」

「わかってくれたならそれでいいよ」


私は押さつけてた手を離しスっと白へと戻っていくそして


「うっっっっ///」


恥ずかしさが溢れてきた。


私は猛ダッシュでその場から逃げ出す


「恥ずい恥ずい恥ずい!」


結局その日は気恥しさで配信できなかった...



〜***〜



次の日、昨日配信をしてなかったからか今日は早めに起きることが出来た。どうやら黒もそんな感じでトコトコをこちら側へ歩いてくるこういう姿は可愛いんだけど、それに昨日のあためふためきようから想像できないようなぐらい落ち着いた態度なので大丈夫だろう、もしかしたら昨日の出来事はきっと悪い夢だろうそう決定づけようとしたのだが朝チラッと見えた黒の部屋の内装が悪い夢という可能性をすぐさま打ち壊した。

あんなに部屋無防備なのになぜ今まで気づかなかったのだろう。

もっと早めに気づいていればなにか変わっていたのかもしれないと思うと気が気じゃない、まあしかし昨日の1件でスパチャはキッチリやめてくれたハズなのでそこに関しては一安心だ、ていうかあんなに恥ずかしい思いをしたんだからそれくらいの成果が欲しい。


「白姉さんに黒姉さん今日は早いね」

「あっさとこ!珍しいねこんな時間にもしかしてサボり!」

「んな訳、色々あって臨時休校になったの、学校に穴空いたんだって」

「へぇー」

「白姉さんたちは授業何時から?」

「んー確か11時からかな」

「ふへぇ~私は2時から」

「だったら2人ともあと2時間はのんびりできそうだねーハカドル~(ボソッ)」

「ふへなんか言った?」

「いやなんでもないよそれより朝ご飯!朝ご飯!」


私達は机を囲んで食事をとる、地味に1ヶ月ぶりの家族団欒、いや姉妹団欒である。

私達が高校の時はまだ両親も家に居たのでちゃんと食卓を囲んでご飯を食べていた。しかし大学生になってからは私達とさとこの生活習慣が上手く噛み合わなくなってしまい晩御飯もそれぞれでみたいなことになってしまった。それでも尚、さとこが私達を慕ってくれているのはほんとに嬉しいし罪悪感がグサグサ刺さってくる。高校生という多感な時期に家族と一緒にご飯を食べないと言うことはだいぶ辛いはずだ。

もし反抗期にでもなってしまっていたらと考える時が気が気じゃない。多分私も黒もメンタルが壊れてしまう。


「あっ黒ご飯粒付いてる」

「んっ」


そう言いながら私は黒のご飯粒を取る、みんなでご飯を食べていた頃はこんなやり取りをずっとやってきたなーっと少し懐かしさを覚える


「ヤッパリコレコレー(ボソッ)」

「さとこ何書いてるのぉー」


黒は口に着いたご飯粒を私に取られながらさとこに話しかける。これもつい前までは日常の光景だった。

さとこは私達2人といるのが余程楽しいのかよくヨダレを垂らしながら笑っている。

ヨダレ?まあいいか

こんな日常を過ごせるなら早起きも悪くないかな。

そんなことも考えたがまあ普通に配信があるので無理だろう。

そんなこんなで嫌々ながら大学へ向かい、さっさと席に着く昨日の失敗から私は学ぶのだ。


「おっしろろん!今日はちゃんと来たんだー」


座った席の後ろから声を掛けられる。


「今日はって昨日もちゃんと来たじゃん」

「遅刻はちゃんと来た内に入りません」

「手厳しいなーもう」

「あとそれを配信で愚痴ることもね!」

「はいはい」


いま話しかけてきたのが富谷要、私が雪風はくあだと知る唯一の人...だった。今は黒が知ってることが分かっちゃったしね

そうだ!せっかくだしこのこと相談してみるのもいいかもしれない!


「要、実はさ...」


そうして私は経緯を話し始める...


「あーそんなことに...」

「でももう今は大丈夫だと思う。うまく説得できたし」

「いやーあまり舐めない方がいいよ〜」

「どういうこと?」

「多分妹ちゃんスパチャを辞めることは出来てないね、1度ハマった沼ってそう簡単に抜け出せるもんでもないから」


どこか懐かしむようにそう語る要の後ろ姿には謎の説得力があった...もしかして昔沼にハマってたのかな...


「ま、とはいえ大丈夫だと思うよだって生まれながらの才色兼備でしょ正直私も彼女がスパチャしてる姿なんて思い付かないし」

「そっかまあ要もそう言うんだし大丈夫だよね!」



〜***〜



その日はそのまま授業を受け終わり家帰宅した、そして...


「おはこんばんにちは〜はくあだよ〜」


私は雪風はくあとして配信をしていた。


「そそ、めっちゃ可愛い子が居てね聞いたら男の子らしいのよ最近はすごわよねー」


ちょっとおばさん化してる、はくあちゃんショタコンだったのか、そういう子って男の娘っていうらしいよ

コメント欄はいつも通りの賑わっている。

しかし黒羽さん...つまり黒からスパチャは送られてきていない。

私はこころの奥でえっへんと胸を張る

良かったちゃんと沼抜け出せてた。後はちゃんと働いて返して行けるなら...


「じゃあ今日は早めに終わろうかなそれじゃあお休み〜」


私はそうして配信を切るそう切るその瞬間


「『黒羽』お休みなさい!!(¥30000)」


〈「多分妹ちゃんスパチャを辞めることは出来てないね、1度ハマった沼ってそう簡単に抜け出せるもんでもないから」〉


要の言葉が反芻する。


「黒羽さん!おやすみなさーい!」


私は急いで配信を切る。


「はあ...マジか」


やっぱりそう簡単には行かないらしい...そもそもただ尽くされる側の私には尽くす側の気持ちなんて分からないのかもしれない...結局は黒の自業自得なのかもしれない...やるだけ無駄なのかもしれない...そもそもお金は自分に入って来ているのだから気にしなくていいのかもしれない...でも!


「進む道は前途多難だ」

「いいぜ!やってやろうじゃねぇか!」


双子の妹なんだ、間違った道を正すのはお姉ちゃんの役目だ!

絶対に...絶対に妹を更生させて見せる!

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