disguise20

 その後のことについては、正直特に話すことはない。

 と言えば、嘘になるのかな。

 いつも通りの日々が戻ってきてしまった。

 ルイもいなくなった。

 アビーもいなくなった。

 あたしはまた一人だ。

 先輩はあの後すぐに高熱を出し、ミリアルの所で寝込んでしまった。

 おかげであたしとは、ろくに口もきいていない。

 イオンはイオンで、ずっと何かにイライラしている。

 あたしに対してではなさそうだ。

 おばあちゃん――六代目に何か言われるかもしれないと、怯えていたあたしだったけど、特に電話もかかってこないので大丈夫そうだ。

 先輩がいないせいで、あたしが家のことをしなければいけなくなり、山へ行くこともできず家事に追われる日々を送っていたときのことだった。

 あたしに会いたいという人がいるので来て欲しいと、ミリアルから連絡が入った。

 ミリアルともあれ以来ちゃんと話していない。

 時間があれば話そう――。

 なんて思いながらやつの所へ行くと。

 ある少女があたしを待っていた。

「あなたが、ソフィア?」

 彼女はあたしを見るなりそう言った。

 黒髪の、黄色いドレスを着た女の子だった。

 お上品だけど、その子は何だか。

「お父様の言う通り! わたくしたち、そっくりなのね!」

 あたしに、似ていた。

「……もしかして、カナベル?」

 アルセウスさんの娘、カナベル・カスケード。

 あたしが変装していた人物だ。

「ええ! わたくしが、カナベルですわ。あなたにとても会いたかったのよ。ソフィア!」

 彼女は、嬉しそうにあたしの手を取った。

「わたくし、あなたとお友だちになりたいの。駄目かしら?」

 友だち。

 その言葉は、今のあたしにとって少し怖かった。

「――駄目じゃないよ」

 怖くても、やっぱり嬉しかった。

「あたしはソフィア。ソフィア・リプトン。よろしく、カナベル!」

 今度は嘘をつくのをやめよう。

 正直になろう。

 隠し事は、もうやめだ。

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