disguise7

「わー。見違えたね、ソフィアちゃん。とてもよく似合っているよ」

 数分後、あたしはお嬢様へと変貌を遂げた。

 普段全く着ることのない、ドレス。

 そもそもスカートを履かない。

 そして、ヒールのあるとても窮屈な靴。

 立っているだけで疲れる。

「どうしたの? ソフィアちゃん。せっかくおめかししているんだから、もっと笑わなきゃ。笑顔笑顔!」

「うるせー! 笑えるか! あたしは苦しいんだよ!」

 地団駄でも踏みたいけど、この靴じゃあ無理だ。

「で、でも本当に似合っているッスよ!」

 アビーにもそう言われて、悪い気はしなかった。

 ふふん。あたしだってやれば結構できる子だね。

「ねぇ、先輩! どう? あたし、可愛い……って、いない!」

 せっかく見てもらおうと思ったのに、いつの間にかいなくなっていた。

「リン様ならあの秘書の人と何やら打ち合わせ中よ。――ホラ、ふざけてないでさっさとマナーのお勉強するわよ!」

「へーい……」

 こんな動きにくい格好でマナーレッスン……

 はぁ。疲れるなぁ……

 体だけじゃなくて、気も重い。

「しゃんとしなさい! しゃんと!」

 背中をバシン! と叩かれ、叫ぶあたし。

「頑張れ……ソフィア……」

 アビーが哀れむかのような目で見てくる。

 ああ!

 お嬢様なんて、あたしには無理だー!

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