disguise6

 こんなお金持ちな人の!? 娘に!?

「あたしなんかが無理だよ!」

「大丈夫! できるよ! というか君じゃないと駄目なんだ!」

「何で!?」

 すると、アルセウスさんが今度は一枚の写真をテーブルに置いた。

「……とてもソフィアに似てるッス」

 アビーが写真を見てボソッと言った。

 綺麗なドレスを着て微笑む女の子。

 そう。

 よく見たら、何となくあたしに似ていた。

「今夜、実は立食会があってね。娘さんと一緒に参加する予定だったんだ。この脅迫状を送ってきたやつは、まるでそのことを知っていたかのようだ。このまま行っても行かなくても、娘さんの身に危険が及ぶ可能性が高い」

「わかった……わかったよ。あたしが行って、そいつを引っ捕らえればいいんだろ……」

「ありがとう、ソフィアさん」

 アルセウスさんは少しホッとしたような表情になった。

「……いいよね? 先輩」

 さっきから全く言葉を発していない先輩に、一応聞いておく。

「……え? ああ……仕事だから仕方ないだろう」

 何だ、その反応。

 話、ちゃんと聞いていたのかな?

「その立食会とやらは今夜なの? 急すぎない?」

「本当にごめん。数時間で頑張ってマナーを覚えて」

 マジか。

「ミリアルは?」

「僕も行くよ。本当は行かないつもりだったけど……面倒くさいから……でも君たちに悪いし、アルセウスさんからも相談を受けたからね」

 ミリアルはパーティーというものが大嫌いなことで有名だ。

 お酒も飲まないし、食にも関心がないし、とにかく人の多い所にはうんざりするのだとか。

 交流の場でビジネスチャンスにも繋がるから、会社のために行けよ。――と、秘書のキャシーさんが愚痴っていた。

「ソフィアが彼の娘になるのなら、お前はその侍女になれ、アビー。二人でアルセウスさんを守れ」

「……わかった」

「はい!」

 あたしの腑抜けた返事とは対照的に、アビーは敬礼してしゃんと背筋を伸ばしてた。

「ミリアルの方はどうすんの」

「イオンがいるから問題ないだろ」

 イオンも行くの?

「……先輩は?」

「俺は……自由に動きたいから」

「……はぁ」

 どういうことだ。

 何か今日の先輩変だな。

「さぁ! お喋りはそこまでよ!」

 そのとき、バーン!と、客間の扉が大きく開いた。

「ソフィアさん、お着替えの時間よ。行きましょう!」

 キャシーさんとイオンが張り切った様子で入ってきた。

 嫌な予感。

「アビー、あんたも手伝うのよ」

「う、ウィッス」

 あたしはキャシーさんとイオンにガシッと両脇を捕まれる。

「ちょっ……あたしに何をする気だぁ~!?」

 そして、ずるずると引きずられて、どこかへ拉致されたのだった……

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