disguise2

「アビーは今まで何してたの?」

 誰もいない田んぼ道を歩きながら、あたしはアビーの話を聞くことにした。

「自分は兵士でした」

「へ、兵士?」

 それはまたとんでもないところからやってきたね。

「はい。気がつけば戦うために鍛え、戦場へ送り込まれていました。よくわからないまま、毎日誰かと戦っていました。でも」

 彼女の表情が暗くなる。

「ある日、自分のいた軍隊は敵軍によって、壊滅させられました。仲間はほとんど死にました。きっと、自分たちの中に裏切り者がいたはずです。そいつのせいでめちゃくちゃになった」

 彼女の言葉には、激しい怒りを感じられた。

「だ、だけど裏切ったって決まったわけじゃないんでしょ?」

「いいえ! 裏切り者の仕業というのは間違いないッス! 誰なのかは結局わからず仕舞いでしたが、もし誰だかわかれば自分はそいつを殺します」

 その言葉に、ゾッとしてしまった。

「誰が何と言おうが、あそこは自分の居場所でした。それを奪ったやつは許さない」

 アビーの目は本気だった。

「自分は嘘をつく人間が嫌いッス。隠し事をするやつは裏切る。今回のことでよくわかりました」

「……」

 あたしは何も言えなかった。

「軍を潰され、自分は何とか生き延びましたが、瀕死状態で。たまたまそうじ屋の人に拾われ、介抱されてそのまま一員となった感じッス。あんまりよくそうじ屋のことはわからないので、色々と教えてほしいッス!」

「じ、実はあたしも組織のことはよくわかってないから、多分知らなくても何とかやっていけると思うよ~」

「そうなんスか?」

 アビーは首を傾げている。

「ソフィアはなぜそうじ屋に?」

「え!? えーと……わ、わかんない。アビーと一緒だよ。気がついたらあたしも訓練してた」

 アハハ。と笑うが、誤魔化せているだろうか。

「家族は?」

「……両親は死んだよ。もうこの世にいない」

「す、すみません……辛いことを聞いてしまって」

「気にしないで! あたしは平気だから!」

「自分は親の顔すらわからないので、生きているのかも不明ッス。……似たような境遇ッスかね」

「そうだね……」

 あたしは頷いておいた。

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