disguise《変装》

disguise1

 その日は、突如としてやってきた。

「えっ? 後輩!?」

 先輩があたしのおば……いや、六代目様に呼び出されて、本家へ行ったかと思いきや、 一人の女の子を連れて帰ってきた。

「……まぁ……どう捉えるかは自由だが、新人は新人だ。ホラ、自己紹介をしろ」

「は、ハイ! アビーと申します! よろしくお願いします!」

 ひどく緊張した様子で、アビーは敬礼をした。

「あたしはソフィア! よろしくね! こっちは情報屋のイオンだよ」

「よろしく」

 聞けば、アビーはあたしと同い年だった。

 でも、彼女はあたしの後輩だ。

 でもでも!

 同い年の女の子と友だちになれるかもしれないんだ――!

 ――完全にあたしは浮き足立っていた。

「ねぇねぇねぇ! アビーと外に行ってきていい!? この町を案内したい!」

「えらい食い気味だな……。構わないが、ちゃんと夕食までに帰ってこいよ」

「当然! 行こう、アビー!」

 あたしは戸惑う彼女の手を引いて、家を飛び出した。

「あ、あの!  どこへ行くんですか!? え、えっと……」

「ソフィアでいいよ!」

「だ、ダメっすよ! 先輩なのに!」

「気にしない! 確かにあたしの方が先輩かもしれないけど、あたしとあんた、同じ年齢なんでしょう? あたし、女の子の友だち欲しかったんだぁ!」

「友だち……」

 あたしは立ち止まり、アビーの方を振り返った。

「そう! 友だち! ――なってくれる?」

 すると、彼女の顔が一気に明るくなった。

「もちろん!」

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