mission18
夜、ミリアルから先輩を今晩だけ預かるという電話があった
……そこまで重傷だったかな?
イオンもいないし、あたし一人じゃあないか。
ご飯を作ってくれる人がいない。
……仕方ない。
たまには自分で作るか……
特に作り置きもないし、作るしかあるまい。
あたしに何が作れるだろうか。
カレーくらいならいけるかな。
残っても、明日食べればいい。
あたしは四苦八苦しながら、調理をスタートした。
「できたー!」
完成までにとてつもない時間を費やしてしまったが、あたしにしては結構いい出来映えだ。
「いただきまーす!」と、手を合わせてから、あたしは夕食にありついた。
……うん。味もまぁ普通だ。
まずくはない。
けれど。
「……さみしいな……」
誰もいない。
あたし、一人だけ。
せっかく頑張ったのに、褒めてくれる人もいない。
「ただいまぁ……って、何事!?」
帰ってこないと思っていたイオンが突然帰宅し、カレーを食べているあたしを見て驚いた声を上げた。
「おかえり。早かったんだね」
「あんた、何て物を置いて食事しているのよ!?」
さみしさを紛らわすため、あたしは自分の向かいの席に着ぐるみを置いて食べていた。
時折話しかけたりもした。
当然、返答はないけど。
ちなみにこの着ぐるみはあたしの手作りで、タイプ1に分類されるネコ丸1号という名がある。
――そう。あたしは料理こそ苦手だが、裁縫や工作は得意なのである。
最近はこうして着ぐるみ作りにはまっている。
「一人でご飯を食べるのが何だか虚しくて」
「……あら? そういえばリン様がいないわね……」
一瞬、あたしは本当のことを言うかどうか迷った。
「先輩、ミリアルの家で派手に怪我しちゃって、そのままミリアルん家で安静にしているよ」
「……何ですって?」
案の定、イオンの目がつり上がった。
面倒くさいなぁ、もう。
「それよりさ、イオンはお腹すいてないの? あたしが作ったカレー食べない? 我ながら上手くいったと思うんだ!」
「珍しいわね……いただこうかしら」
よし!
気をそらせた!
あたしはいそいそとネコ丸1号を片付け、カレーをお皿に盛り付けた。
「どう!?」
そしてカレーライスを口に含んだイオンに感想を求めた。
「……うん。ソフィアにしてはやるじゃない。美味しいわ」
「本当ー!?」
やったー!
と、あたしは万歳をする。
先輩に食べてもらえなかったのは残念だけど、イオンに「美味しい」と言わせたのなら上出来だ。
「――それで」
カレーを食べながら、改まった口調になるイオン。
「リン様が怪我をしたというのは、どういうことかしら?」
「……えーと……」
全く気をそらせていなかった。
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