mission17
その後、お医者さんがやって来て診察が始まったので、あたしはミリアルの家を出た。
こうなった以上、あたしが買い物に行かなきゃいけなくなったからだ。
イオンは戻ってきてから情報収集だと言って、姿を見せなくなった。
よくあることだ。
買い出しに行かないと二人がうるさいし、よりによって今日は特売日だ。
あたしは仕方なーく町へ行き、買い物をし、大量の荷物を抱えてとぼとぼと家へ向かって歩いていた。
「あれ? ソフィア?」
道中に、思わぬ人物と出会う。
「あ! ルイ!!」
「どうしたの。すごい荷物だね」
有り難いことに、ルイは荷物を持ってくれた。
しかも一番重いやつ。
「昨日も今日も山に来なかったね」
「うん……ちょっとね……」
仕事だったから、なんて言えるわけがない。
「何かあった?」
「え!? えーと……その……練習試合があって! 遠くへ行っていたんだ! 今日帰ってきたんだよ!」
何かの大会で勝つために修行しているという設定を思い出し、とっさの嘘をついた。
「そうだったんだ。どうだった?」
「へっ? あー……んー……歯が立たなかった……かな……」
あながち間違っていない。
「駄目だった?」
「うん……ダメだった……もっと修行しなくちゃいけないね」
思い出して、何だかあたしはうつむき加減になってしまった。
「悩んでいるのはそれだけじゃあない?」
鋭い。
どうしてわかったんだろう。
そうだ。あたしは単に、敵を逃がしただけで落ち込んでいるわけではなかったのだ。
「先輩……あたしには、越えなければいけない先輩がいるのだけれど……」
そういやルイに先輩のことを話すのは初めてだ。
「その先輩とあたしの考え方が違うっていうか……あたしは間違ったことを言ったつもりはないのに、わかってもらえないというか……」
上手く説明できない。
ともかく、あたしはミルキー・ホワイトを殺そうとした先輩が許せなかった。
「……考え方は人それぞれじゃない? その先輩が何と思おうが……」
「違う! そういうことじゃないんだ! あのときの先輩は間違っていた! 考え方を改めてほしいんだ!」
せめて、あたしが言いたいことを理解してほしい。
「……ふーん……ソフィアにとって、先輩って何? どんな存在?」
「え?」
「どうしてそこまで必死になるの?」
どうして……
どうしてだろう。
あたしにとって、先輩は……
「まぁ、いいや。何でも」
答えを導き出す前に、ルイの方から話を打ち切った。
「ソフィアは、先輩が好きなんだね」
「……」
好き?
好きって何なんだろう。
「あれ? 違った?」
違わなくない。
好きだ。
でも……
「大切な人……ではある……」
「そっかぁ」
何でだろう。
好きって言える自信がない。
いつもなら……いつもならもっと……
「ソフィア、そんな暗い顔しないで。困らせるようなことを言った俺が悪かったよ。ごめんね」
「いや、ルイは……悪くないよ……」
それでもあたしは、うつむき加減のままだった。
「ねぇ、ソフィア。明日は山へ行こう。気分転換した方がいいよ」
「……うん」
家の前であたしはルイと約束を交わした。
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