mission15

 途中、イオンと合流し、迎えに来てくれたキャシーさんの車に乗り込んだところでようやく落ち着いた。

 なので。

「イオン! どうしてあたしに何も指示してくれなかったのさ!?」

 文句を言ってやった。

 建物に入った途端、パタリとイオンからの応答がなくなった。

 そんなことを気にしている暇もなんてなかったけど、もう少しサポートしてくれればあの状況も変わったのではないかと、今になって思う。

 そういや先輩とも全く無線機で話していない。

「出してたわよ! けれど、返事しなかったのはそっちでしょう!?」

「ハァ!?」

 何を言っているんだ。

 全くあんたの声なんて聞いていないぞ。

「やめろ。イオン、お前もわかってて挑発に乗るな。機会の故障だろう」

 ようやくカツラを取った先輩が、あたしたちの間に入ってきた。

「故障、ですって? 三人そろって?」

 三人そろって?

 ということは、先輩も……?

「故障するような物を、この私が持たせるわけないでしょう! 現にホラ! 今使えているじゃない!」

 イオンがわっ! と、叫んだので、耳がキーンときた。

「ちょっ……叫ばないでよ!」

 不満を言うが、あれ……?

 確かに今、耳元のこの機械から声が聞こえたような……?

「どういうこと……?」

「こっちが聞きたいわよ」

 電波が悪かったとか?

 うーん、そんな初歩的なミス、イオンがするわけないよね。

「何でも機械に頼ることが間違えてるんだよ……」

 先輩……そういう問題じゃないよ。

 電子機器触るの苦手だからって……

「それよりもあなたたち、手ぶらってどういうことよ」

 イオンの目が怖い。

「……いやぁ……」

「何とぼけようとしているのよ、ソフィア! さてはあんた、また足を引っ張ったわね!?」

 なぜあたし!?

「待ってよ! まず手ぶらじゃないから! ミリアルのとこのスパイのお兄さんが、宝石を回収してくれたんだ。――グリーンの目をしたお兄さんがね! ねぇ、キャシーさん! 知っているよね!?」

あたしは慌てて、運転をしているキャシーさんに尋ねた。

「グリーン……彼のことね。ええ、確かにいるわ」

 ホッ。良かった。

「だから何なのよ! 宝石よりも盗んだ犯人を捕まえる方が大事でしょ!? どこのどいつよ!? 情報は!?」

 今にも噛みついてきそうな勢いだ。

 どうしてあたしだけ~!

「ミルキー・ホワイトがどうやら関与しているみたいだよ。あの場にいた。で、あたしたちと戦ったのは、あまり年の変わらない男の子で……そいつが変装して宝石をくすねていたっぽい。名前は、キッドって呼ばれていた。何者かはわからないけど、強かった。先輩でも歯が立たなかった。まんまとやられて、あたしが助けたんだけど……」

「おい。何サラッと俺が足引っ張ったみたいに言ってるんだ。一回助けたからって調子に乗るなよ」

「ぐえっ!」

 後頭部座席から首を絞められ、あたしはもがく。

 死ぬ!

 死ぬよ、先輩!

「だが歯が立たなかったのは事実。完全に油断した。さっさとあの女を殺っておけばよかった」

 まだそんなことを言っているのか、この人は。

 あたしは先輩をにらみつけた。

「そのキッドってやつのことを聞かせてちょうだい」

 イオンに促され、あたしが説明をした。

「あいつ……あたしを見て同類だって言った。あたしは否定したけど……きっと沢山人を殺してきている。盗みもしていると思う。銃を前にしても、全く恐れていなかった。ずっと楽しんでいるような感じだった」

 そんなやつと、同類だなんて――。

「調べる必要があるわね」

 イオンの冷静な声。

 先輩とイオンが話を始めるが、あたしは睡魔に襲われ、眠ってしまった。 

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