mission14

「まずいな。そろそろここも限界か」

 天井を見上げて、お兄さんが言った。

 今にも崩れ落ちそうだ。

「一体誰が爆弾なんか……」

 咳き込みながら、先輩は立ち上がりつぶやいた。

 これ、やっぱり爆弾のせいだったんだね。

「ん? 俺だが?」

「……は?」

 お兄さんが何か問題でも? とでも言いたげな目で見てきた。

「なぜ爆弾なんて仕掛けた!? つーか誰だ、お前!」

 うんうん。と、あたしは頷く。

 敵ではないことはわかっているけども。

「ボスから目的を果たすなら好きにやっていいと言われたからな」

「だからって何で爆発!?」

 ボスって……ミリアルのことかな?

 この人、キャシーさんが言っていたスパイの人だろうか。

「きっとお前のボスはそんなつもりで言ったんじゃないだろうよ! 結局敵を取り逃がすわ、無駄に事件を起こしただけじゃねぇか」

 こんな大爆発、きっと話題になるだろうね。

「まぁ、そうカリカリするな。レディには笑顔が一番だ」

「んなっ……!?」

 わかってて言っているのか、わかっていないのか……実にキザっぽい。

「ミリアルがこんなバカを寄越したのか……!? 信じられない……どんな神経をしているんだ……」

 ブツブツと不満をもらす先輩。

「ねぇ、そんなことより早くここから出ないといけないんじゃないの」

 このままだとあたしたちも巻き添えだ。

「そうだな。早いとこ出よう」

 そう言ってお兄さんは、割れかけていた窓に向かって発砲した。

「ガラスには気をつけろ」

 先に窓から外に出たお兄さんを無視し、先輩が後に続く。

 差し出された手も無視だ。

「ホラ」

 その空しく空いた手は、あたしに向けられる。

「ありがとう」

 可哀想だったので、お言葉に甘えることにした。

 よく見ると、お兄さんの目は綺麗なエメラルドグリーンの色をしていた。

「そういや、目的は果たしたってさっき言ってたよね? 宝石を奪った犯人は捕まえられなかったし、盗られた宝石も……」

「いや、宝石に関してはすでに回収済みだ」

「え?」

 何だって?

「俺がこの屋敷にあった分を回収した。心配するな。ボスへ俺から渡すつもりだ」

 いつの間に……

「そうなると俺たちは犯人を捕まえるどころか、宝石を回収することもできなかったというわけだ」

 先輩……やめて……

 自分で自分の傷をえぐるな……

「あまり気にするな。思った以上に、手強い敵がいたのは、ボスもきっと計算外だっただろう。俺も正直驚いている。君たちのフォローをするとは思ってもみなかったからな」

 スパイって言ってたもんね。

「さて。俺は別ルートから帰るので、ここでお別れだ。いずれまた会おう!」

 手を挙げ、どこかへ向かって走って行くお兄さんを見送りながら、あたしも手を振った。

 よくわかんないけど、悪い人じゃないな。

「先輩。あたしたちも行こう」

 爆発のせいで、火が強まっている。

 このままだと危ない。

 あたしたちは急いでその場を離れたのだった。

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