mission10
何だかよくわからないけど、侵入に成功した。
入ってしばらくは廊下が続いていたが、見事に誰とも出くわさない。
時折物陰に身を隠すが、あまり意味はなさそうだ。
使用人もいないなんて変だな……
一応、部屋も確認したが、誰もいないし何もなかった。
こんな所に本当に隠れているの?
宝石もあるの?
だんだんと、疑念が膨らみ始めた。
まさかはめられた……なんてことないよね。
そう思いつつも、慎重に慎重に前へと進む。
広い屋敷だ。
お金持ちってすぐに大きい家を建てようとするよね。
あたしにはよくわかんないや。
するとそのとき、コト……と、何かの物音が聞こえてきた。
あたしがたてた物音じゃないからね!
誰に向かってかわからないがそう心の中で叫びながら、すぐさま身を隠せるところを探した。
……ない。
焦るあたし。
けれども、物音の原因はすぐにわかった。
ある部屋の扉が少し開いており、その隙間から光が漏れていた。
誰かいるのか?
こっそり近寄り、わずかな隙間から覗くと、メイドさんが一人キッチンで作業をしていた。
使用人……いたのか……
……って、悠長なことを言っている場合じゃない。
あのメイドさんがキッチンから出てきたらかなりまずい。
やっぱり廊下をこんな堂々と歩くのは駄目だ。
できることなら天井裏とかの方がいい。
少し焦り気味だったあたしは、近くの部屋へ何も考えずに入った。
誰もいなかったことが不幸中の幸いだ。
しかも入ったその部屋は使用人用のようで、クローゼットにはさっき見かけた人が着ていたメイド服一式があった。
……そうだ。
あたしもこれを着ればいいじゃないか?
そうすれば廊下を歩いていてもおかしくない。
すぐさまあたしは今着ている服の上からメイド服を身につけ、たまたま置いてあったバケツとモップを持って部屋を出た。
これがいいのかどうかはわからないけど、あのまま出て行くよりかはいいだろう。
……それにしても、あのメイドさん以外の人がいないな。
返ってこの状態が目立つのではないかと心配になってきた。
先輩はどこにいるんだろう。
イオンもあれ以降何も言ってこない。
妙な胸騒ぎだけがする。
一抹の不安を抱えながら進んでいくと、長かった廊下に終わりが見えた。
何やら開けた場所に出た。
そして、円を描くように沢山の扉が並んでいた。
なんだコレ……まるでコンサートホールのようじゃないか。
ただのバカでかい家ではないのか。
どうせ誰もいないだろう。と、あたしはゆっくり扉の一つを開けた。
きっとパーティーなんかに使われる部屋なのだろう。
とてつもなく広い。
「――ようこそ、我が別荘へ」
部屋の中央に椅子とテーブルを置き、一人優雅にお茶を飲む白髪の女の子がそこにいた。
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