mission9

 日が落ちてから、あたしたちは動き出した。

 エルマーさんの運転で、ホワイトの別荘近くまで連れて行ってもらい、あたし、先輩、イオンは途中で降りた。

 道中、イオンに別荘の見取り図を渡される。

「何でこんなことまでイオンが知ってんの」

 だって、人の家だよ?

「昔、忍び込んで作ったのよ。あれから改装とかされてなきゃ、この通りよ」

 ……なぜホワイトの別荘に忍び込む必要があったんだ……?

「いい? 目的は今あの家にある宝石を取り返すことと、犯人の捕獲。見つけた場合は絶対に報告するのよ。問題が発生したときも」

 イオンからイヤリング型の小型無線機を受け取り、あたしと先輩はそれぞれ右耳に付けた。

「ソフィア」

 動き出す前に、先輩に呼び止められる。

「前回のようなヘマはしないように。毎度俺がお前を助けられるとは限らない」

「……はぁーい……」

 やはり、あれはヘマと見なされたいたか。

 ここから三人別行動。

 イオンは別荘の外からあたしたちに指示を出す。

 あたしと先輩はお互い別ルートで忍び込む。

 二人と別れてあたしはまず木の上に登った。

 別荘の全貌が見えてくる。

 バカでかい、庭付きの立派な屋敷。

 見張りは……いる。

 黒いスーツにサングラスという典型的なSPみたいな人たちが……五名。

 あたしが見えているだけでそれだけ。

 武器を持っているかは不明。

 他に目視確認できるセキュリティはなさそう。

 せいぜい防犯カメラくらいか。

 うーん……警備が薄い。

 なぜだろう。

 屋敷に人がいる気配がない。

 電気もついていないし……

 もしや。無駄足なのでは?

『無駄足なわけないでしょう。さっさと中に入りなさい。そのくらいの人数なら容易いことでしょ』

 耳元でイオンの声がした。

 勝手にあたしの考えていることを言い当てないでほしい。

「へいへい」

 口を尖らせて、あたしはもう一度辺りを見渡した。

 庭の植木が一部、塀をはみ出ており、敷地外の木も葉の部分が庭に侵入したりと、何やら屋敷と庭の境界線が曖昧なところがある。

 あたしは音を立てずに木から木へと飛び移っていき、葉っぱで身を隠しながら侵入に成功した。

 次は建物内に入らなければいけない。

 窓は全て閉じられている。

 ピッキングは難しそうだ。

 普通に扉からはいるしかなさそうだ……と、建物の周りを探っていると、裏口を発見。

 きっと使用人が出入りするところだろう。

 けれどもそこには、見張りが一人いた。

 あいつを倒すか、どこかに行かせるか、騙すか……

 三通りの方法に悩む。

 そもそもあの扉、鍵は開いているのか?

 そこが問題だ。

 しばらく様子をうかがっていると、見張りの人と同じようにスーツにサングラスをした人が近づいてきた。

 見張りの人が扉の前から離れ、やって来た人は何も言わずに扉を開けて中に入っていった。

 なぁんだ。

 開いてるじゃん!

 しかも超雑な警備!

 なんて思っていると、ガサガサ! という音がどこかでした。

 え!? あたし!?

 違うよね!?

 見張りの人と同様、あたしもキョロキョロしてしまった。

 動物でもいたのだろうか……なんて思っていると、またガサガサ!という音がしたので、見張りの人は音がする方へと動き出した。

 え、いいの?

 そんな簡単に持ち場を離れちゃって。

 でも忍び込むなら今がチャンス!

 あたしは極力音を立てないように木から下りて、扉目がけて走った。

 扉はやっぱり鍵がかかっていない。

 サッと、あたしは中に入ったのだった。

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