mission8

 あたしたちを乗せた車は、とある山奥の大きなホテルに到着した。

 これまたきっと高級ホテルなのだろう。

 キャシーさんについて、ロビーにある茶店へ行くと、気の弱そうな男の人が待っていた。

 何だか顔色が悪い。

「遠路はるばるご足労いただきましてありがとうございます。専務のエルマー・ブレインと申します」

「どうも。スマイルの秘書をしております、キャサリン・クロッシュです。彼らは今回の件に手を貸していただく協力者です。くれぐれも失礼のないように」

 キャシーさん怖……

 専務さんすっかり萎縮しちゃっているよ。

 あたしたちなんかに気を遣わなくていいのに。

「犯人についてお聞かせいただけますか」

「はい……。資料をお持ちしました」

 机の上に若い男の履歴書やら、社員証が置かれる。

「……ずいんぶんと良い経歴を持っているようだけど」

 履歴書を見ながら、キャシーさんが言う。

「これ……全て詐称されたもので……」

 何だ、駄目じゃん!

「この出身大学にも確認を取ったので、間違いないかと。この世界にこのような人間は存在しません」

 名前、年齢、身長、体重……

 何もかもが嘘。

「やけに手が込んでいるな……」

 先輩の言う通りである。

 そこまでして宝石が欲しかったのだろうか。

「じゃあ、あなたは犯人の顔を知らないということですね」

 役立たず! とでも言われた気分だ。

 エルマーさんは首を亀のように引っ込めた。

「どうせそんなとこだろうと、うちのスパイを送り込んであるから安心してちょうだい」

 キャシーさんはあたしたちに向かって、そう言った。

「とは言っても、得られた写真はたった一枚。しかも防犯カメラの映像。どこの誰なのか特定には至っていない」

 と言って渡された写真はとても荒く、人の顔を識別できるようなものではなかった。

 男なのはわかるけど。

「まぁ、あなたたちにはこんなもの必要ないわね。それに、居場所はわかっているわけだし」

 そうだ。あとは乗り込むだけでいい。

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