エピローグ
「続いてのニュースです」
どこか機械的な声をしたアナウンサーが、原稿を読み始めた。
「お笑いコンビ、《三年B組》のハードパンチ牛島さんが、先日、心臓麻痺で亡くなっていたことが分かりました。フジテレビ系列、《D―1グランプリ》の企画内、ネタばらしでの出来事であったといいます。D―1グランプリ制作委員会は昨日、コメントを発表しており、『ご高齢である牛島さんに、過激なドッキリをかけるなど、安全面での配慮が至らなかったと猛省しております。つきましては、D―1グランプリを打ち切りとさせていただき、後日、会見を開きたいと考えております』とのことです」
しかめっ面の司会者が、批判的な口調で唾を飛ばした。
「《三年B組》なんかさ、ご高齢で有名なコンビじゃない?」
コメンテーターたちが、うんうんと頷く。
「なのに何の配慮もしないでドッキリかけてさ、『死んじゃったので番組打ち切って謝罪します』って、なんだか流れ作業みたいに感じちゃったんだよね、僕は」
司会者の言葉に、コメンテーターの一人が反応する。
「そもそもドッキリって、常に被害者が発生するんですよね。例えば落とし穴なんかは、実際に死人が出ているくらい、危険な行為なんです。いくら落とし穴ではないとはいえ、高齢者にドッキリをかけるのはあまりよろしくないでしょう。心臓麻痺を起こすほどのドッキリって……一体どんなことをしたのか。会見では誠意を持って説明するべきでしょうね」
何やら満足げな顔で、コメンテーターが締めくくった。
「はい、なんにせよ、今後の番組の対応が注目されるところですね。これまで多くの笑いを私たちに届けてくれた牛島翔吾さん、ご冥福をお祈りいたします」
アナウンサーはそう言うと、原稿をはらりとめくり、次のページに目を落とした。
「続いてのニュ──」
突然スタッフがざわつきだし、アナウンサーの元に、新たな原稿が届けられた。
一瞬、アナウンサーの眉がピクッと動く。
「えー、ここで、緊急速報です。お笑いコンビ、《三年B組》の山田啓治さんが、過去に何十件にも渡る殺人を犯していたことが判明し──」
もうええわ。 鼻唄工房 @matutakeru
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