第3話 確信

 摩訶不思議で奇妙な雰囲気な彼女と出会い、話をしようと拒否権なく話が進んでしまい仕方なく着いていったところは普通のカフェだった。私は近所をふらりと歩くことしかしていなかったので市街にはこんなカフェもあるのかとなんとなく眺めた。

店に入ると感じ良さそうな店員さんに挨拶をされ、二人だと伝えるとお好きな席へどうぞと声をかけられた。女が

「あの席がいいわね」

というので特にこだわりの無い私は承諾して外の景色がよく見える、日の当たる席へ腰をかけた。店内はこの季節に合わせてかほんの少しだけ肌寒く温度設定がされていたため太陽の光が射すここは非常に居心地が良かった。

「これ、メニュー。アタシが払うから好きに頼んで。」

渡されるまま私はそれに目を通した。しばらく悩んだ後、決まったことを伝えようとすると

「決まったわね。それでじゃあ・・・」

と店員を呼んで注文をした。声をかけるタイミングが分かっていたかのようなタイミングのよさに不気味さを感じ続けながら私も続いて注文をした。ドリンクが先に届いた。彼女はバタフライピーを、私はコーヒーを。

「あら、子供のくせに随分オトナなものを飲むのね。無理をしなくてもよかったのに。」

「いえ、私は普通にコーヒーが好きなだけですので。・・・それで、こんなところに連れ出して私に何かご用でしょうか。面識はありましたでしょうか。」

「ふふ、まあ初対面、ということにしておきましょうか。それでは自己紹介から致しましょう。」

いまいち会話が噛み合っていないような気もするがいちいち突っかかるとそれはそれで面倒なのでペースは彼女に譲った。

「アタシの名前はヤムヤ・ギウ。ギウとでも、呼びやすいように呼んでくださいな。歳は〜・・・いくつだったかしら、あまりに興味がなくて覚えていないわ。小さな骨董品屋を営んでいるの。」

出会ったことのない人種に出会でくわしたためなんて表現するのが正しいのか分からないけれど、どこか掴みづらくて唯一無二なオーラを持ちながら骨董品屋をやっていると聞くと妙に信憑性があった。歳を覚えていないというのは普通に考えれば意味のわからないことだが対して興味もないので聞くことをやめた。

「私は田中和子です。今は高校3年生です。」

「へえ。そんな嘘が通用するとでも思ったの。偽名にしてももう少し捻ってもよかったんじゃない。」

「・・・これは本名です。テンプレっぽい名前だとよく言われますが。」

「大丈夫、個人情報だからって悪用したりしないから。アナタのほんとうのおなまえは。」

そう告げながらこちらを視線をよこすその瞳にぞわりとした。出会ったときから感じていた違和感にようやく気づいた。この紅く吸い込まれるような瞳は全てを見透かしているようだった。いや、ではなく見透かしているのだ。きっと私の内面をよんでいるのだ。まるで超能力者のようだ。手汗が止まらない。焦燥感に駆られて、どうすることもできなくてホットのコーヒーをグイッと飲み干した。

「貴方、何者なんですか。」

恐怖と焦りがピークに達している中、じわりと滲む手汗を感じながら手をグッと握るとやっとの思いで声が出た。声がふるった。温かいものを飲んだせいで口の中がすこしばかりヒリヒリする。

「だから骨董品屋だと言っているじゃない。そんなにケイカイしなくて大丈夫なのに。」

「信用できません。それに歳を覚えていないだなんて、明らかに怪しいじゃないですか。」

彼女は困ったように悩むそぶりを見せた。そして薄ら笑いを浮かべてこう言った。


「ねえお嬢さん。なにものかになりたくない?」

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