中瀬美月の日記 6
「まさか、そんなの冗談でしょ?」
ゾンビ化を防ぐワクチンだなんて、そんな。
医学部でもないのに。
ゾンビに噛まれても平気って事?
「俺も詳しい理屈は分かんないけどさ、それを使えれば大学の外にも行けるんじゃないの?」
確かに。ゾンビに噛まれても平気な体になれば、ここで「ただ生きているだけ」の生活からは逃れられるかもしれない。
それに、倉橋君がゾンビに噛まれても平気な体質だと言うのが本当ならば、彼と一緒に行動するのは心強い。
この大学で細々と暮らして一生を終えるなんて、嫌だ。こんな場所に長く居過ぎると、腐ってしまう。
「倉橋君、外の世界では、まだどこかに生き残った人達が隠れて住んでいるかもしれないよね。
そんな人達に、ゾンビワクチンを届けられたとしたら...。
ゾンビの出現で壊滅した社会を復活させる事もできるんじゃないの?」
なんて素晴らしい考えなのだろう。
「そうだね、中瀬さん。山下さんも同じことを言う事があるよ」
あの珍獣も同じ事を?
「中瀬さんは、ここを出たいって気持ち、あるの?」
「出たいよ!水、思いっきり使いたい。気兼ねせずに体を洗いたいし」
あ、つい言ってしまった。これじゃ、私が如何にも不潔にしてるみたいじゃないか。
だけど、それは、ここで暮らす全員に云える事だ。もちろん、倉橋君にも。
「だから、あの、それだけじゃなくって、ここを出られれば、色んな物を調達できるわけだし、ね」
取り合えず、こう付け足した。
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