記入者に関する情報と環境について その39

保管してあるゾンビワクチンを取り出してみたとき、異変に気付いた。

減っている。

いくつかの容器に小分けしてあるのだが、何本か無くなっている。

通し番号が振ってあるし、使った番号は実験ノートに記録してあるので、減っているのは間違いない。


なぜだ。山下君が使ったのか?

いや、それは考えにくい。

彼が無断で使う事は、あり得ないからだ。

このワクチンがどれだけ貴重なのか、彼は十分に理解しているはず。


では、誰だ?

この研究室に出入りした事のある人間...。

私の知る限り、ひとりしか居ない。

有田紗智。


彼女には、鍵の隠し場所も見せてしまった気がする。誰も居ない時に、こっそり入る事も可能だろう。

しかし、本当に彼女が犯人だとして、動機は?

そういえば先日、ゾンビワクチンの存在を皆に公表すべきだと彼女は言っていたな。

しかし、ワクチンを盗んだところで使い方を教えていないので、どうしようもないだろう。何をするつもりだ?


...いや、無暗に人を疑っては、いけない。

念のため、後で山下君にも聞いておこう。

何か知っているかもしれない。

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