第50話 最終章 一つの物語の終わり そして……11
だけど、その後、
「まあ、こうやって、わしがクルトに教えられるのはこれが最後になりそうだが……」
◇◇◇
僕は驚いた。死なずに済むと言われたばかりなのに、何故、今回が最後なんだ?
代わりに口を開いたのはハンスさんだった。
「クルト君。君はもう死んだことになっているんだよ。その君がロスハイムギルドにいちゃまずいだろう」
! その通りだ。この後も僕が
「全く、八年もかかって、ようやくここまで育ってきた奴を手放さざるを得ないなんざ、わしだってやりきれねえんだよ」
「明日にゃ、
「すみません。
「
「あっ」
僕はようやくデリアの視線に気が付いた。
◇◇◇
「デッ、デデデ、デリアッ」
その時の僕はまるでデリアと付き合い始めたばかりのようだった。
「ぼっ、ぼぼぼ、僕とっ、出来たらっ、いやっ、違うっ! 僕と一緒に来てほしいっ!」
デリアはちょっとだけ驚いた顔をのぞかせたが、すぐに笑顔を見せてくれた。
「はい」
ハンスさんは苦笑した。
「クルト君。やっと自分でちゃんと言えるようになったね」
「全く手間がかかる奴だ」
◇◇◇
僕たちは他のギルドメンバーが起き出す前に静かに
もともと冒険者である僕の部屋に余分なものはない。ザック一つと
デリアはもともと
「また、クルト君、豪快にしでかしてくれたねえ」
クラーラさんは呆れ顔だ。
「す、すみません」
「まあ、やっちまったことはしょうがない。だけど、私の娘同然のデリアちゃんを連れて行くんだ。しっかり守らないと承知しないよ」
「はい……」
さすがに申し訳ないという気持ちになる。
「まあ、そうがっかりしなさんな。これでまるっきり
「え?」
「そうだろ?
「ああ」
クラーラさんに問われた
「あの警備隊の奴は美食と淫蕩のやり過ぎだ。どう見ても体にガタが来ている。まあ、十年、長くても二十年は生きまいよ」
「でも、他の警備隊の人が……」
「
「そうですか……」
何か少しほっとしたような、警備隊がそれでいいのかという疑問と複雑な思いだった。
「まあ、わしの方もあと二十年生きられるか怪しいがな」
◇◇◇
夜はすぐにやって来た。そして、ここはロスハイムの城門のすぐ内側。門番は
並んで立つ僕とデリアの前に
「まあ、なんだ」
口火を切ったのは
「十年後の最強パーティーのリーダーをこんな形で失うのはやりきれなかったんだが、考えてみりゃ、これも女神ヴァーゲの思し召しかもしれん。クルトをもっとでかくするためのな」
「……」
頭が下がった。暴走しまくった僕にここまで気遣いしてもらえるとは。僕もいつか
「デリアちゃん。八年間、私たちの娘になってくれてありがとうね」
これはクラーラさんだ。
「ごめんなさい。クラーラさん、長いことお世話になってきたのに、こんな形で家を出ることになってしまって」
デリアはクラーラさんにすまなそうに頭を下げる。いや、デリアは悪くない。この事態を引き起こしたのは僕だ。
「何言ってんだい。娘はいつか巣立つものさ。実の娘のシモーネも巣立って行った。そして、今度はデリアちゃんってことだよ。おまけに
笑顔を見せるクラーラさんにデリアも涙を浮かべながら、笑顔を見せる。
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