第49話 最終章 一つの物語の終わり そして……10
「はい……」
堕落し切った今の警備隊のみが相手なら、このギルドはものともしないだろう。だが、警備隊は王軍とつながりがある。警備隊に本格的に立ち向かうということは、この国に対して反乱を起こしたということと同義だ。そうなれば……
このギルドは王軍によって皆殺しにされるだろう。
そんなことは受け入れられる訳がない。そうならないためにはどんな形でも責任を取ろう。そう思った僕に
「警備隊は
◇◇◇
僕は黙って頷いた。
「それはクルト君に死ねということですか?」
黙っている僕の代わりに口を開いたのはデリアだった。
「いや待て」
「おかしいじゃないですかっ!
「うぐっ、そっ、その通りだ。デリアッ!」
「ならっ、どうしてクルト君が死ななきゃならないんですっ? 大体、今回のことは
そこへもう一人の声がした。
「デリアちゃん。君の言うことは正しい。だけど、
◇◇◇
「ハンスさん」
デリアは部屋に入って来たハンスさんに気付き、つかんだ胸倉を放した。
「ふぃー、わしの方が殺されるかと思ったぜ。で、ハンス。頼んでたものは用意できたのか?」
ハンスさんは大きく溜息を吐いてから答えた。
「素材は嫌になるほどありましたよ。クルト君と同じくらいの年格好の
え? それって?
「若え奴がそんだけ野盗になっちまってる現状は嘆かわしいが、クルトの偽首は何とかなりそうってことでいいんだな?」
「ええ。ご要望とあらば五つくらいは用意できそうですよ」
「ということだよ。デリア」
デリアは顔を真っ赤にしている。
「ごっ、ごめんなさいっ。私、クルト君が殺されちゃうかと思ったら、我を失って……」
「本当におまえら二人は似た者同士だわ」
僕の偽首を用意する? デリアは納得しているみたいだけど……でも、僕は……
◇◇◇
「ちょっと待ってください。みなさん」
僕の言葉に他の三人は振り向く。
「僕だって死にたくはない。僕の偽首を用意してくれたのはとてもありがたいことです。でも、もしそれが偽首だと
デリアが立ち上がる。
「クルト君っ! 何を言うのっ! せっかくみなさんがクルト君の命を助けようとしているのにっ!」
「待てっ! デリアッ!」
「わしは以前よりおまえさん方二人に言っときたかったことがある。こんな機会になるとは思わなかったが、これから言うっ! ようく聞けっ!」
「……」
僕とデリアは沈黙する。
「いいかっ? わしら庶民が生き延びていくにはいろいろな要素が必要だ。おまえさん方二人が山のように持っているクソ真面目さと正義感も信用を得るためには必要だ」
「はい……」
「だが、生き延びるためには駆け引きや強かさも必要なんだ。今回のことで言えば、何で警備隊がクルトの首に固執するかと言えば、自分を殺そうとしたクルトが怖くて怖くてしょうがねえんだよ」
「!」
「だから、
「でも……」
僕は腑に落ちなかった。
「こっちはそう思っていても、
「おうっ、そこが今回の肝だ。クルトの偽首を警備隊に届けるのはわしの仕事だが、その時にナターリエを随行させる。秘書という名目でな。何でだか分かるか?」
「あ……」
デリアの方が気付いた。
「
「さすがデリアは
「……」
こう言うのを聞かされると、本当に僕はまだまだだと思う。それに助かった。僕だって命は惜しい。それに僕が死んだら、デリアはどうなってしまうのだろう。悲しみのあまりの後追いなんて絶対されたくない。
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