第48話 最終章 一つの物語の終わり そして……9
僕はゆっくり一歩を踏み出した。
「やめなっ! クルト君っ!」
ナターリエさんの声は大きくなる。
「まだ、動こうってんのなら、私はクルト君に『
それでも、僕は次の一歩を踏み出し、
◇◇◇
「クルト君っ!」
いきなり僕に抱きついて来たのはデリアだった。駄目だっ! デリアッ! 今の僕に抱きついてはっ!
「うっ、うぐっ」
見ろっ、僕にかかっている
「分かったようだね。クルト君」
ナターリエさんの厳しい声が響く。
「デリアちゃんの体はクルト君のそれほど頑丈じゃない。このままだと死んでしまうよ」
くっ、その通りだ。
「自分の彼女が大事なら今すぐ
僕は黙って自分の
「クルト君……ありがとう……」
デリアはそれだけ言って、気を失った。
◇◇◇
「ハンス。クルトに手かせをかけろ。そして、デリアと一緒に自分の部屋に入れたままにしろ。カールとヨハンはクルトが部屋から出ないように見張れ。何かあったら、すぐにわしかハンスに知らせるんだ」
「さあ、クルト君、行くよ」
ハンスさんが僕に声をかけ、僕はゆっくり歩き出す。
「いっ、痛ってえよおーっ、おいっ! 何とかしろっ!」
ようやく我に返ったらしい警備隊の者の声がする。
「ちっ」
それを聞いた
「カトリナ。パウラ。『
警備隊の者の怒号を背後に聞きながら、僕は手かせをされたまま、自分の部屋に入れられた。ハンスさんが外から施錠する。扉の前にはカール君とヨハン君がいるらしいが、僕にとってはどうでも良かった。
◇◇◇
うす暗い部屋の中で、僕は手かせをされたまま、椅子に腰かけていた。
ベッドではデリアが軽い寝息をたて眠っている。
ようやく僕の頭は思考が出来るようになってきたようだ。
全く僕は何をやっているんだ。
確かに警備隊の者のやったことは許しがたい。接収したファーレンハイト商会の財産のうち、金貨十四枚を
僕が、この僕があの場で
そして、よりによって一番大事なデリアまで傷つけちまった。くそっ。
僕はゆっくりと立ち上がり、眠っているデリアのところに向かった。そして、言った。
「ごめん」
デリアはまだ眠っている。
◇◇◇
翌朝早い時間、僕の部屋の古い扉は鈍い音を立てて、ゆっくりと開き、その音で僕は目を覚ました。いつの間にか眠ってしまったらしい。
肩に毛布がかかっている。ベッドの上に座っているデリアと目が合った。
笑顔を見せてくれた。僕にはもったいないような
「起きたか。クルト」
部屋に入って来た
「はい」
僕は短く返事をする。
「頭は冷えたか?」
「はい。申し訳ありませんでした」
「今回のことは
「はい……」
それはその通りだ。
「まずは
「えっ? でも、その金貨十四枚は
ここで
「
「カトリナちゃんがいるからでしょう?」
デリアも微笑みながら言う。え? そうなのか。
「実の姉には隠し事は出来ねえなあ。まあ、そんなとこだ。坊っちゃん育ちのあいつには冒険者生活はきついだろうが、クルトという先例もある。いや、カトリナがよく面倒見てる分、クルトの時より数段恵まれてるよ」
「……」
正直、
「さて……」
「
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