第45話 最終章 一つの物語の終わり そして……6
ナターリエさんが
やがて、背後に数えきれない程の「
ナターリエさんがゆっくりとミスリル製の杖を振り降ろすと「
遅れてはならない。僕とカール君とヨハン君も
その時、一陣の風が吹いた。そして、どおっと音がした。
話には何度も聞いていた。でも、実際に見るのは初めてだ。
ハンスさんの必殺技、
「馬鹿野郎っ!」
不意に後方から声がする。
「見境なく
警備隊の連中だ。前に出て戦おうともしないくせに何を言ってるんだ。
「気にしなくていいよ」
ハンスさんはあくまでクールで穏やかに言う。
「下手に手加減したら、こっちが命を落とすことになる。その時は誰も補償なんかしてくれないんだ」
だけど、その目つきは厳しく鋭かった。
◇◇◇
僕らも負けてはいられない。強力な魔法をかけてからの「水平疾風斬り」がハンスさんとナターリエさんのコンビネーションなら、僕らにもコンビネーションがある。
僕が
うん。敵は確かに強い。だが、かつてカール君とヨハン君、カトリナにパウラ、そして、デリアとノルデイッヒを往復した時ほどの脅威は感じない。
これなら行ける。多少手間と時間はかかるかもしれないけど、大きな損害なくこの戦闘も勝てそうだ。そう僕が思った次の瞬間……
ズドッ ズドッ ズドッ
僕たち三人の足元に次々矢が刺さる。油断した。危ないところだった。
ふと見ると、敵の後方に
ゴオオオオオ
敵の
敵の
「馬鹿野郎っ! 見境なく
警備隊の鬱陶しい声は大きな雷鳴にかき消された。何だか気分がいいぞ。これはナターリエさんの
◇◇◇
敵の遠距離攻撃を味方の遠距離攻撃が完全に沈黙させた。更に味方の遠距離攻撃が敵の直接攻撃要員をも攻撃している。こちらは本当に戦いやすい。
そのせいか戦況はこちら側の優勢が明らかになってきた。敵の中には武器を捨てて逃走する者も出て来た。潰走するまで時間の問題だろう。
「何やってんだっ! おまえらっ! 敵を逃がしてどうするんだっ! 捕虜にしろっ! こっちでお宝のありかを尋問するからなっ!」
ああっ、もうっ、
僕の心の声が届いたのか、ナターリエさんはミスリル製の杖を振り上げた。
「おいっ、おまえっ」
自らに対する警備隊からの直接のご指名にナターリエさんは静かにミスリル製の杖を下げた。
「何でしょう?」
「おまえ、相当力量のありそうな
「はあ、使えますが」
「なら、敵方の兵に『
せこ
僕は思った。そして、ナターリエさんは思い切りミスリル製の杖を振り上げた。
「わーっ、待てっ! 待てっ!」
「何でしょう?」
ナターリエさんはまたも静かにミスリル製の杖を下げた。
「おまえ、今、『
その時のナターリエさんは警備隊に見えないように「ちいっ、ばれたか」という顔をした。
そして、軽くミスリル製の杖を振ると、たちどころに十人の敵が崩れて、立ち上がれなくなった。
「よーしっ、立てなくなった奴らは
勝手なもんだ。敵を倒せば経験値が増えるからやるけど、一人も逃すなってのは無理だよ。ある程度やっつければ組織的な抵抗は出来なくなるから。
そこから先はほぼ掃討戦だった。
それでも果敢に立ち向かって来る敵もいたから、僕たち
でも、ほとんどの敵は散り散りばらばらに逃走していくから、それを倒すのは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます