第32話 第4章 少女冒険者 嵐の前の恋と戦いと7
「どうやら『
「『
「あちゃあ。ここんところ手入れしてなかったからなあ。まあ、使用には支障なかろうが」
「さて」
「一人はわしが防ぐ。残りの二人はすまないが、カトリナとデリアがクルトたちが戻って来るまで防いでくれ。パウラは随時様子を見て『
私たちは大きく頷く。近接戦闘は得意ではないが、そんなことは言っていられない。
◇◇◇
ドカッ
その音はそう聞こえた。
カトリアちゃんと「武術」の訓練をしている時、私の杖が衝撃で発する音は「ガツン」だ。たとえそれが「木の杖」から「鉄の杖」に代わっても。
だが、その野盗が振ってくる
ドカッ
ドカツ
ドカツ
正直、受け止めるだけで精いっぱいだ。この野盗たち、今まで戦ってきた中で間違いなく一番強い。
ドカッ
ドカツ
ドカツ
腕の痺れが取れる前に次の攻撃を受ける。気が遠くなりそうになる。杖を取り落としそうになる。だが、駄目だ。これだけ相手が強いとなると、私よりレベルが高くとも体の小さいカトリナちゃん、ブランクのある
これでは私が倒されると、数が三対二になり、残った二人もあっという間にやられてしまうだろう。倒される訳にはいかない。クルト君が助けに来てくれるまで……
ドカッ
ドカツ
ドカツ
まだまだっ! クルト君が来てくれるまでは…… クルト君が来てくれるまでは……
ドカッ
ドカツ
ドカツ
きっ、きついっ! クルト君、早く来てっ! 早くっ!
ドカッ
ドカツ
ドカツ
気が…… 気が…… 遠くなる…… クルト君っ! クルト君っ!
◇◇◇
…… ……
…… ……
…… ……
いけない…… 私…… 気を失って……
!
次の瞬間、私が見たのは全身
「ごめん。デリア。遅くなっちゃって」
「クッ、クルト君ッ! そんなことより
「デリアッ!」
私の言葉を
!
「デリアッ! クルトの他にヨハンとカールも駆けつけてくれたっ! だが、三人とも傷だらけだっ! カトリナとパウラと一緒にありったけの『
「はいっ!」
私は大きな声で返事をすると、カトリナちゃんとパウラちゃんと向き合い、三人で大きく頷き合う。
「行っくよーっ!」
「はいっ!」
「はいっ!」
「
「
「
三人とも頑張れっ! 頑張れっ!
「
「
「
頑張れっ! 頑張れっ! 苦しいけど頑張れっ!
「
「
「
うーん。
「残念ですが、押されています。何か策を講じないと」
カトリナちゃんが真剣な顔で言う。
◇◇◇
私は少しだけ考えた後に言った。
「カトリナちゃん、『
「一つだけは……」
「野盗にだけ浴びせることは出来る?」
「範囲を絞れば…… でも、効くかどうか…… 相手は『
「やろうよっ!」
私はカトリナちゃんの手を握る。
「クルト君たちも格上相手に頑張っているんだよ。私たちは『
「……」
「私は『
「…… やりましょう」
カトリナちゃんは頷いた。私たちは野盗たちに向き合うと、集中を始めた。
いつもよりいつもより集中して、狭い範囲を強くイメージして、あそこに、あそこに「
「
「
◇◇◇
私の放った「
直撃された相手は動きを止める。押されていたクルト君とカール君は一息つく。やったか?
だが、相手はゆっくりとまた動き出す。くそっ! 駄目だったか。クルト君とカール君は
ずっ、ずずっ、ずずーっ
相手の二人はそのまま倒れ込む。クルト君とカール君はすかさず止めを刺す。そこで、初めて安堵の表情を見せる。
私とカトリナちゃんは思わず顔を見合わせる。喜びがこみ上げてきて、カトリナちゃんに飛び付く。
「やったあーっ、カトリナちゃんの『
「デリアちゃんだって、すごいですよお」
◇◇◇
ヨハン君と戦っていた野盗は、他の二人がやられたとみるや、
沈黙が支配する中、クルト君がポツリと口を開いた。
「勝ったん……だよね?」
「ええ、勝った……んですよね?」
「勝ったんですよっ!」
「勝ったんですよっ! 勝ったんですよっ!」
パーティーに大歓声が上がる。
だけど、後で、
「こいつら、このまま順調に成長して行けば、十年後にはハンスとナターリエのパーティー以上に強力になる」とあの時思ったと教えてくれた。
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