第31話 第4章 少女冒険者 嵐の前の恋と戦いと6
かくて、私たちの出番のないまま、ノルデイッヒへの中継地点である例の廃屋に到着した。
廃屋にはコボルドが何匹かいたが、こちらの気配を察するや、大慌てで逃げ出した。
パーティーは罠や潜伏している敵がいないか確認した上で、廃屋に入った。
◇◇◇
男の子たち三人は何やら意気投合している。と言うかヨハン君とカール君は憧れていたクルト君の前で実戦を行えたので、そのことについて、いろいろ問いかけているようだ。
こういう時のクルト君は本当に懇切丁寧で気持ちの入った対応をする。まあ、それはヨハン君とカール君に限った話ではなく、誰にでもそうだ。もちろん、私にも。
だが、私は気付いてしまった。その光景を見つめるパウラちゃんの熱い視線に……
そして、パウラちゃんは、私とカトリナちゃんの方を振り向くと、こう切り出した。
「なんかこう、ああいう若い男の子たちが仲良くしているのを見ると、血が
私は
「えーと、それはどういう……」
言いかけた私をカトリナちゃんは
「パウラちゃん。そういうのが好きなのですね」
パウラちゃんは、はにかんで頷く。むむむ。
「でも、クルト君はここにいるデリアちゃんの彼氏だから、ほどほどにして下さいね」
「はっ、はい。私が妄想の世界で楽しんでいるだけですから……」
この世には私の知らない
◇◇◇
「盛り上がっているところ悪いが、明日は今日より数段厳しい戦いが予想される。交代で休んでもらえないか」
「はいっ!」
交代の見張り番、私はクルト君とペアにしてもらった。
私は聞いてみた。
「今日はヨハン君とカール君と随分長く仲良く話してたけど、二人のこと好きなの?」
クルト君は驚いた表情を見せた。この角度からの質問は予想だにしなかったのだろう。
でも真摯に答えてくれた。クルト君のそういうところも私は好きだ。
「あの二人に限らず、戦術や戦闘技術について話すことが、僕は好きなんだ」
「あの二人、人間的には好きなの?」
クルト君はしばらく考えてから、答えてくれた。
「うん。真面目で素直で一生懸命だし、人間的にも好きだね」
「じゃじゃ、クルト君が一番好きなのは?」
クルト君はあっという間に真っ赤な顔になった。だけど、声を絞り出してくれた。
「ぼっ、僕が、いっ、一番、すっ、好きなのは…… デッ、デリッ……」
あ、トリップした!
私は一呼吸置いてから、クルト君の背中を叩く。
少なくともパウラちゃんが妄想している世界に行ってしまう心配はなさそうだ。
◇◇◇
明朝は快晴だった。
視界は極めて良好。味方にも、そして、敵にもだ。
早足で、そして、疲れ過ぎないように行軍する。
カトリナちゃんが私に右手のひらを見せる。お先にどうぞってことだ。なら、遠慮なく……
「
草むらが火に包まれ、潜伏していた野盗たちはたまらず飛び出す。
それを合図に
「
カトリナちゃんの「
この「
さすがはカトリナちゃん、エグい。
野盗たちは混乱したまま、火の中で焼死し、今回は昨日とは逆に
クルト君と他の二人は茫然とこちらを見ている。ふふん。凄いでしょ。
◇◇◇
だが、状況が厳しいことには変わりがない。更に行くと、今度は何と街道上の対向側から三人の野盗が襲撃してきた。
それにしても、野盗が堂々と街道上を歩いてくるのは珍しい。余程、己の戦闘力に自信をもっているか、それとも……
私とカトリナちゃんは顔を見合わせる。やはりだ……
「
私は街道脇の木立の中に、「
潜伏していた野盗たちが飛び出す。街道上を堂々と歩いて来た野盗たちは囮だ。
「
カトリナちゃんの追撃「
◇◇◇
! 私たちは驚いた。木立の中に潜伏していた敵のうちに何人かは確かに炎の中で混乱し、焼け死んで行った。
だが、三人の敵は黒焦げになりながらも、こちらに向かって来るではないか。
「くっ、なら、これならどうですかっ? 『
カトリナちゃんが向かってくる三人の敵に、次の「
敵の足が止まる。やったか?
だが、それは一瞬だった。敵はすぐに前進を再開した。
◇◇◇
「嫌ーっ! 何なんですか? あれは?」
パウラちゃんが悲鳴のような声を上げる。
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